木を見て森を見ず・森を見て木を見ず

 有名なことわざに「木を見て森を見ず」というものがあります。これは、「木」(ささいな事柄)を気にしすぎる結果、「森」(全体)をとらえることができないという意味です。

 細かいことにこだわりすぎずに、物事の本質をしっかり見るようにしよう、という意図が込められています。

 実は相場格言にも「木を見て森を見ず・森を見て木を見ず」というものがあります。

 これは、個別銘柄のことばかり気にしすぎてマーケット全体を見失ってはいけない、逆にマーケット全体だけを見て、個別銘柄の動向を無視してはいけない、という意味です。

 このように、株式投資においては、「木」(個別銘柄)も見て「森」(マーケット全体)も見ることが重要です。なぜなら、両者の値動きから、足元で取るべき投資戦略が見えてくるからです。

マーケット環境は大きく分けて3種類

 マーケット環境は、大きく分けると以下の3種類に分類できます。なお、説明の都合上、マーケット全体は以下、日経平均株価に置き換えて説明します。
 

1.個別銘柄も日経平均株価も同じ動きをしている

 日経平均株価が上昇トレンドで順調に上昇しており、個別銘柄の多くも同様に上昇トレンドである場合です。または日経平均株価も個別銘柄の多くも下降トレンドで株価が下落している場合です。

 両者が同じ動きをしているときは、木を見ても森を見ても同じなので、株価のトレンドに従って行動していれば問題ありません。
 

2.個別銘柄が強く、日経平均株価の方が弱い

 日経平均株価は下降トレンドだが、個別銘柄の多くは上昇トレンドに転じているような場合です。

 日経平均株価に先んじて個別銘柄が底打ち反転していたり、日経平均株価の主要業種とは異なる銘柄群(例えば内需系の小型成長株など)に資金が流入している可能性を示唆(しさ)しています。
 

3.個別銘柄が弱く、日経平均株価の方が強い

 日経平均株価は上昇トレンドだが、個別銘柄の多くは伸び悩んで下降トレンドに転じているような場合です。

 日経平均株価に採用されている銘柄や、主要業種は買われているが、それ以外の個別銘柄には資金が入っていないときに生じます。
 

個別銘柄が日経平均株価より強いときは底打ちの兆し?

(2)のケースは直近でいえば、10月下旬の日本株マーケットが当てはまるといえます。

 日経平均株価は10月24日に長い下ヒゲを付け、一瞬反発しましたが再び下落し、10月30日に10月24日の安値をわずかに割り込んだ後、反発し底打ちとなりました。

 日経平均株価は10月24日と10月30日に、ほぼ同レベルまで下がったのですが、東証プライム銘柄の年初来安値更新銘柄数を見ると、10月24日は199銘柄だったのが、10月30日は68銘柄と、かなり少なくなっています。

 そして年初来高値更新銘柄数は、10月24日の7銘柄に対し、10月30日は47銘柄と、大きく増加していることが分かります。(出所:新高値 新安値 30営業日

 このように、日経平均株価は10月30日の下落でダメ押しをしたものの、個別銘柄の多くは10月24日の下落で底打ちをしていたことが、年初来高値更新銘柄や年初来安値更新銘柄を観察すると気付くことができるのです。
 

日経平均株価だけが異様に強いときは守り気味が吉

(3)のケースでよくあるのが日経平均株価は強いのに、個別銘柄はサッパリ、という状況です。

 日経平均株価は3月16日の2万6,632円92銭から6月19日の3万3,772円89銭まで、3カ月で7,000円幅の大きな上昇となりましたが、この間多くの個別銘柄は軟調な動きでした。

 特に5月に至っては、日が進むにつれ年初来安値更新銘柄が増加する有様で、5月31日には年初来安値更新銘柄数が164にまで達しました。

 こんなときに、日経平均株価が順調に上昇しているからといって、値下がりを続けている個別銘柄を我慢して持ち続けていると、大きな損失につながってしまいます。

 また、これ以外にもよく出現するのが、日経平均株価は順調に上がり続けているのに、個別銘柄は頭打ちになり下落に転じてしまうケースです。

 このケースも、日経平均株価は強いから自分の持ち株も上がるはず、と思っていると痛い目に遭いかねません。

 このように、日経平均株価は強いものの個別銘柄が弱いときは、守り優先とし、ポジションを縮小するなどして無理をしない方が無難でしょう。
 

木を見るためにはどうすればよいのか?

 では、「木」を見るためにはどうすればよいのでしょうか?

 上で挙げた年初来高値更新銘柄数や年初来安値更新銘柄数のほか、ご自身で投資候補銘柄のウオッチリストを作り、その銘柄の株価チャートを日々確認することをお勧めします。

 これにより、日経平均株価に比べて明らかに個別銘柄が強い、弱いということも分かりますし、どのような業種が買われているのかを気づくこともできます。

 日経平均株価と個別銘柄の値動きの違いをしっかりと確認し、くれぐれも「日経平均株価が上がっているから自分の持ち株も上がる!」などと勘違いしないようにしましょう。
 

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