レバレッジと高金利は相いれない、そのうち誰が裸で泳いでいるのかが分かるだろう
「上げ潮はすべての船を浮かばせる。潮が引いて初めて、誰が裸で泳いでいたかわかるのだ」
ウォーレン・バフェット氏の有名な投資格言の一つである。
力強い経済と低金利は金融における不均衡を覆い隠す。一方で不均衡が明るみに出るのは、経済成長が鈍化し金利が上昇する局面だ。
しかし、金利上昇が実際に経済にダメージを与えるのには一定の時間を要する。このため、金利が上がっているのになぜか経済が強い、経済はソフトランディングへ向かうだろうという楽観論がはびこる。
過去、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを行うたびに危機が発生してきた。 FRBが金利を5.50%引き上げる中、全ての債券利回りの同様の上昇に続く金融危機が、事実上避けられない。危機は個々の銀行や企業、あるいは国や地域を巻き込むこともあった。その他の危機はシステミックなもので、産業、経済セクター、金融市場全体に波及する。
こうした危機が時計仕掛けのように必然的に発生する理由はレバレッジにある。レバレッジと高金利は相いれないのだ!
米国のGDP(国内総生産)に対する債務残高は、40年前にポール・ボルカーFRB議長が2桁の金利でインフレを抑えていた頃よりも大幅に増えている。負債総額は2008年の2倍だ。当時の金融危機においては銀行システム全体が破綻寸前に追い込まれた。
米国のGDPに対する債務残高の割合
つまり、金融システムには裸で泳いでいる人たちがたくさんいるということだ。
以下の図にあるように、上場企業の約5社に1社がゾンビ企業になっている。ゾンビ企業は負債返済額が利益を上回っている状態にある。
すべてのゾンビ企業が金利上昇によって破綻を迎えるわけではない。中には、負債を返済するのに十分なスピードで収益や利益を伸ばす企業もあるかもしれない。また、債権者を満足させるだけの現金を持っている企業もあるかもしれない。
しかし、米国企業の5分の1にあたる企業は、負債を増やすことでしか存続できない状態にある。そしてその割合は上昇する傾向を示している。
営業利益で利払いを賄うことができない企業の割合
経営破綻を申請する企業の数が増加している
上のグラフはそのような危機が始まりつつあることを警告している。
経営破綻を申請する企業の数が急速に増えている。銀行、ヘッジファンド、その他の機関投資家も、レバレッジを効かせているため、危機候補の筆頭に挙げられている。
ゾンビ企業が直面するリスクは、持続的な金利上昇と収益の低迷である。機関投資家については、資産価格が下落する一方で金利が高止まりした場合、リスクが生じる。
潮は引き始めている。それに伴い、経済活動は減速し、資産価格も追随する可能性が高い。レバレッジと高金利はなんらかの危機をもたらすだろう。