「相手を知る」重要性を知る
次に、今まで以上に物事を相対化できるようになる、ことについて述べます。相対化(そうたいか)とは、自分以外の存在や考え方を認識し、比較したり議論したりすることで、周辺の環境や当該事象を深く認識したり、(結果的に)自分自身を深く理解したりすることです。
コモディティの市場動向を考える際、多くの場面で自分以外の存在や考え方と相対(あいたい)します。
例えば、以下は脱炭素を推進する西側の主要国と非西側の産油国が相対した場面です。この場合、多くの日本人は西側の主要国側に位置し、非西側の産油国と相対していることになります。
図:「脱炭素下(禍)」の産油国の心境(筆者イメージ)
地球温暖化を和らげる策として、西側諸国が中心となって進めている「脱炭素」について、思惑が真っ向から対立していることが分かります。「脱炭素」は、西側にとって正義ですが、非西側の産油国にとっては、立場を危うくする存在です。
われわれは、われわれ西側諸国の向こう側に、「脱炭素」を禍(わざわい)と考えている(かもしれない)非西側の産油国がいることを、認識しなければなりません。「脱炭素」は当事者が互いに相対化しながら、理解し合う必要があるテーマなのです。
コモディティ自体が世界全体をまたにかけたテーマであるため、コモディティ市場の分析においては、自分以外の誰かは必ず登場します。
その存在を無視して分析することは、不可能です。無視できないからこそ、相対化のスキルが必要なのです。同市場の分析に関わることで、そのスキルを磨くことができます。
相対化は、人生において必要不可欠なスキルです。先述の俯瞰にもつながりますが、日常生活において、相手がいることだけでなく、相手が置かれている環境、相手が考えていること、を考える必要があります。分からなければ、聴かなければなりません。
良かれと思って進めてきたことが、実は相手を窮地に追いやっていた、などという痛ましい事態にならないためにも、相対化は必要な行為です。相手を知ることで、自分を深く知ることができます。その意味でも、相対化は必要なスキルなのです。