10月4日にコモディティ投資を改めて考察
毎年10月4日は「投資の日」(104=トウシ)です。筆者は先週、年に一度のこの日に、レポートを書くなど、さまざまな形でコモディティ(金や原油、農産物などの国際商品)関連の情報を発信しつつ、時間を設けて改めて「コモディティ投資」とはどういう行為だろう、と考えてみました。
図:筆者が考えるコモディティ投資に関わることで得られること(一例)
日ごろから感じていたものの、考えれば考えるほど、コモディティ投資が単なる投資行為にとどまらない、人生を豊かにする可能性を秘めた行為であると、再認識させられました。
「人生100年時代」が提唱されたり、それに呼応するように新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まることとなったり(2024年より)して、(超)長期の資産形成がさけばれる時代だからこそ、コモディティ投資が活きるのではないかと考えています。
今まで以上に俯瞰(ふかん)的になれる、今まで以上に物事を相対化できるようになる、今まで以上に論理的になれる…。
難しく聞こえるかもしれませんが、これらは筆者が特にこの10年間でコモディティ市場を分析してきた中で、実際に大きくしてきたスキルです(まだまだ、まだまだ十分ではありませんが)。
そして、こうしたスキルが以前よりも大きくなったことで、仕事だけでなく、仕事以外の場面でのふるまいが充実してきたという実感を得ています。
コモディティ市場の分析をおこなっていなかったら、こうした充実感を味わうことはなかったと、断言できます。以下より、コモディティ投資に関わる意味を、筆者なりに述べます。
「コモディティ=先物」ではない
まずは、「コモディティ投資」について述べます。以下のとおり、コモディティ投資は、時間(短中期、中長期、超長期)、銘柄(金属、エネルギー、農産物)、場所(国内、海外)によって、分類できます。
しばしば、「コモディティ投資=先物取引」とされることがありますが、先物はコモディティ投資の一つの形態にすぎないため、正しい認識ではありません。先物だけでなく、現物や投資信託、ETF(上場投資信託)や関連株、CFDなどでもコモディティに投資をすることができるためです。
コモディティ投資に触れることは、こうしたさまざまな投資に触れることを意味します。留意したい点の一つに、国内・海外の区別、があります。基本的に、国内市場は海外市場に追随します。
例えば金(ゴールド)の場合、円建て金相場はドル建て金相場が下落(上昇)した場合、下落(上昇)する傾向があります。
しかし、ドル円相場が急変した場合は、その限りではありません。円安が急進した近年を振り返ると分かるとおり、ドル建て金相場はほとんど動かなくても、円建て金相場が史上最高値を何度も更新しました。急伸した円安が、円建て相場に上振れする力を与えているのです。
図:コモディティ投資のいろいろ
分析をしたり投資をしたりしているコモディティ銘柄が、円建てなのか、ドル建てなのかを明確にする必要があります。筆者はドル建てをメインで分析をしています。その分析にドル/円の変動を加味し、円建ての分析につなげています。
最上流に「コモディティ」あり
次に、今まで以上に俯瞰的になれる、ことについて述べます。特に近年の主要国の中央銀行の政策は、インフレ(物価高)の動向を意識したものになっています。このため、以下のイメージ図のとおり、コモディティの需給・価格の動向は、市場動向や雇用動向などの川下よりも、金融政策や景気動向、物価動向などの川中よりも、上流に位置しています。
ウクライナ危機が勃発したことで局地的あるいは玉突き的に、世界各地でさまざまなコモディティの供給懸念が発生しています。
こうした供給懸念がコモディティ価格を高止まりさせ、その高止まりにより高インフレが長引いており、それにより主要な中央銀行で利上げが続き、景気動向が不安定化している、そしてその不安定化した経済情勢の中で、各種市場が動いている、という構図です。
材料の頂点(最上流)は何かと問われれば、コモディティの需給・価格と答えることになるでしょう。ここに、「俯瞰(鳥の目になり、上空からたくさんの物事を一度に見下ろすこと)」の考え方があります。
コモディティの市場動向を考えることは、おのずと世の中を俯瞰することにつながっているのです。
コモディティの市場動向を考えているうちに、自然に俯瞰することの重要性とそれを実践する感覚が身に付くのです。俯瞰は前提をとらえたスマートな議論に欠かせないスキルです。人生を豊かにするスキルの一つだと言えるでしょう。
図:近年の世の中の全体像(筆者イメージ)
「相手を知る」重要性を知る
次に、今まで以上に物事を相対化できるようになる、ことについて述べます。相対化(そうたいか)とは、自分以外の存在や考え方を認識し、比較したり議論したりすることで、周辺の環境や当該事象を深く認識したり、(結果的に)自分自身を深く理解したりすることです。
コモディティの市場動向を考える際、多くの場面で自分以外の存在や考え方と相対(あいたい)します。
例えば、以下は脱炭素を推進する西側の主要国と非西側の産油国が相対した場面です。この場合、多くの日本人は西側の主要国側に位置し、非西側の産油国と相対していることになります。
図:「脱炭素下(禍)」の産油国の心境(筆者イメージ)
地球温暖化を和らげる策として、西側諸国が中心となって進めている「脱炭素」について、思惑が真っ向から対立していることが分かります。「脱炭素」は、西側にとって正義ですが、非西側の産油国にとっては、立場を危うくする存在です。
われわれは、われわれ西側諸国の向こう側に、「脱炭素」を禍(わざわい)と考えている(かもしれない)非西側の産油国がいることを、認識しなければなりません。「脱炭素」は当事者が互いに相対化しながら、理解し合う必要があるテーマなのです。
コモディティ自体が世界全体をまたにかけたテーマであるため、コモディティ市場の分析においては、自分以外の誰かは必ず登場します。
その存在を無視して分析することは、不可能です。無視できないからこそ、相対化のスキルが必要なのです。同市場の分析に関わることで、そのスキルを磨くことができます。
相対化は、人生において必要不可欠なスキルです。先述の俯瞰にもつながりますが、日常生活において、相手がいることだけでなく、相手が置かれている環境、相手が考えていること、を考える必要があります。分からなければ、聴かなければなりません。
良かれと思って進めてきたことが、実は相手を窮地に追いやっていた、などという痛ましい事態にならないためにも、相対化は必要な行為です。相手を知ることで、自分を深く知ることができます。その意味でも、相対化は必要なスキルなのです。
風が吹けば桶屋がもうかる
次に、今まで以上に論理的になれる、ことについて述べます。もっとも単純な論理式は「A=B(AならばB)」です。これを数珠状につないだ言葉が「風が吹けば桶屋がもうかる」です。
風が吹き→埃が舞って→埃が目に入った人が眼病を患い→目が不自由な人が増え→三味線を弾く人が増え→三味線の皮(猫の皮)の需要が増え→猫の数が減り→ネズミの数が増え→ネズミに多くの桶がかじられ→桶屋がもうかるという式です(諸説あり)。
図:市民に身近な品目の小売価格(東京23区)推移(税込) 単位:円
こうした論理式は、われわれ市民の身近にもあります。ウクライナ危機勃発を機に、農産物やエネルギーの価格が高止まりしています(急騰劇は終わったが、高い状態が続いている)。
高止まり→エサ代・輸送費・包装費上昇→鶏卵価格上昇、そして、高止まり→小麦粉価格・加工費・包装費・輸送費上昇→カップ麺価格上昇、また、高止まり→物価高→賃金上昇→人件費上昇→鶏卵・カップ麺価格なお上昇、などの式が実際に起きています。
輸送費や加工費に直接的に関わるエネルギー価格の動向や、食品の原材料価格に直接的に関わる農産物価格の動向は、コモディティ市場を分析することで考えを深めることができます。
コモディティ市場を分析することで、身近な品目の価格上昇が世界情勢と結びついていることを知るケースは多々あります。
表面的な事象だけを見ていては、つながりを知ることは到底できません。論理的思考に基づいたつながりを意識した思考は、人生を豊かにするために欠かせないスキルだと考えます。
コモディティ投資と関わるメリット
以下は、筆者が考えるコモディティ投資に関わることで得られること(一例)です。俯瞰することで「広く」考えられるようになり、相対化することで「深く」考えられるようになり、論理的に考えることでつなげるスキルが高まります。
これにより、生活時のモチベーションが上がる、他者に依存せず、自分で行動の動機を確立できる(投資活動に非常に重要)、主体的かつ創造的な人格が育まれる、これまでにない新しい価値を生み出すことができる、AI隆盛の時代でも、自分らしく生きることができる、などのメリットを享受できると考えます。
コモディティ投資(まずは価格を確認することから)を、人生のお供に加えてみてはいかがでしょうか。
図:コモディティ投資に関わることで得られること(一例)
[参考]コモディティ(全般)関連の具体的な銘柄
投資信託
iシェアーズ コモディティ インデックス・ファンド
ダイワ/「RICI(R)」コモディティ・ファンド
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
eMAXISプラス コモディティ インデックス
SMTAMコモディティ・オープン
ETF
インベスコDB コモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド (DBC)
iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN (DJP)
iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト (GSG)
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