米国高配当株3:トリニティ・インダストリーズ(TRN)

 1933年に設立されたテキサス州ダラスを拠点とする、鉄道車両リース事業、製造・保守・修理事業を展開する北米随一の鉄道車両製品・サービスプロバイダーです。

 北米における鉄道輸送製品・サービスの業界の32%を占めるトップメーカーであり、リースでは北米でトップ5の企業でもあります。

 2022年12月31日現在、子会社のリース車両は10万8,440両で、利用率は97.9%となっており、工業用荷主や鉄道会社にリースされ、1年から10年までの毎月の固定賃借料を定めて契約されておりトリニティ・インダストリーズの安定した収益の土台となっています。

 時価総額は19.5億ドルで、日本円で約2,900億円となっています(1USD=147円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「鉄道車両製造事業(Rail Products Group)」で、続いて「車両リースおよび管理サービス事業(Railcar Leasing and Management Services Group)」となります。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「鉄道車両製造事業」では、北米有数の鉄道車両メーカーとして米国とメキシコに拠点を持つ完全子会社を通じ、Tank Cars、Covered Hoppers、Autoracks、Flat & Intermodal、Gondolasなどのさまざまな製品を顧客へ提供しています。

 また、「車両リースおよび管理サービス事業」では鉄道車両リースと車両管理サービスを提供しています。

競合他社

 競合他社として、植生管理、インフラ保守、その他の用途のための機器の設計、製造、販売、およびサービスの提供を行うアラモ・グループ(ALG)、商用車や防衛車両向けの推進ソリューションの設計・製造を行い、また、中型および大型の完全自動変速機の生産も行うアリソン・トランスミッション・ホールディングス(ALSN)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移していますが、配当は今年に入って増配しています。業績は前年同期比を上回っているものの、市場予想に到達しなかったこともあり年初の水準を下回って推移しています。

 会社側は、下半期には利益率の大幅な改善が見込まれますが、メキシコペソ高、支払利息の増加、効率性とサプライ・チェーンの回復が予想より遅いことなどにより一部相殺されるものの、前年比では大幅な成長を計画しており、通年のEPS(一株当たり利益)は1.35~1.45ドルを見込んでいると発表しています。

 2023年は現状の水準での株価推移の可能性があるものの、業績の大幅な悪化による極端な株価下落が無いと予想するならば、4%台の配当利回りを取りに行くのも良いのではないでしょうか。

業績動向

 2023年8月1日開示の四半期決算では、1株利益は市場予想を下回ったものの、売上は市場予想を上回りました。

 決算を受けて株価は上昇したものの、その後アナリストによる成長性への見通し懸念などの材料から9月に入って株価は下落しました。

 しかし、決算内容自体は良く、会社側も業績は良好な事業環境と事業における好傾向を反映しており、それはリース料率の上昇と安定した鉄道車両の納入が収益を押し上げたもので、この好状況は下半期も続くと予想していると発表しています。

 次回2023年10月19日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 会社側は下半期には利益率の大幅な改善を見込んでいますが、メキシコペソ高、支払利息の増加、効率性とサプライチェーンの回復が予想より遅いことなどにより、一部相殺されるとしており、この点には注意が必要です。 

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.04ドル
配当利回り:4.27%
株価:24.35ドル(約3,600円)

 この銘柄、権利落ち日は10月12日(権利実施は10月31日)です。

 配当利回りは915日時点で4.27%、株価は24.35ドルでおよそ3,600円から購入できます(1USD=147円計算)。

 2020年からの最高値は35.32ドル、最安値は14.75ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株4:アッヴィ(ABBV)

 アッヴィは、2013年にすでに125年の歴史があるアボットラボラトリーズ社の分社化により誕生した、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。会社名「Abbvie」の由来は、ABBはAbbot社とのつながりを示すとともに、同社からつながる最先端の科学を意味し、Vieはラテン語で生命を意味し人々の生活向上のため前進することを示しています。

 2013年1月2日、ニューヨーク証券取引所のオープニングベルを鳴らし、新しいバイオ医薬品会社としての最初の公式の日を迎えたアッヴィは、1株当たり34.40ドルの初値をつけ、現在は4倍近くまで株価は上昇しています。

 時価総額は2,600億ドルで、日本円で約38兆円となっています(1USD=147円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は「グローバルビジネス事業(single global business)」の単独事業です。

 その中で売上の中心は「免疫・炎症領域製品(Immunology)」で、続いて「精神・神経疾患領域製品(Neuroscience)」、「造血器腫瘍領域製品(Hematologic Oncology)」、「審美治療製品(Aesthetics)」、「アイケア製品(Eye Care)」、「その他製品(Other Key Products)」となります。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「免疫・炎症領域製品」では、TNF(腫瘍壊死因子)-αの働きを抑え関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎などに効果を発揮するヒュミラや、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬などに効果を発揮し疾患の原因である炎症反応を引き起こす主要な物質の一つである、IL-23(インターロイキン23)の働きを阻害することで症状を改善するスキリージなどの製品を取り扱い、「精神・神経疾患領域製品」ではVraylarやUbrelvy(いずれも日本で未承認・未発売)、ボトックス・セラピューティック(日本ではグラクソ・スミスクラインによる承認承継・販売)などの製品を取り扱っています。

競合他社

 競合他社として、アイルランドに本拠を置く世界的なバイオテクノロジー企業であるホライゾン・セラピューティクス(HZNP)、研究開発型のバイオ医薬品会社であるファイザー(PFE)、グローバルなヘルスケア会社であるヴィアトリス(VTRS)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移しており、配当は今年に入って増配しています。

 アッヴィは、アボットラボラトリーズ時代も含めて25年以上連続で増配している企業を対象とするS&P500配当貴族指数の一社でもあります。業績は好調なのですが、前年同月比では見劣りする結果であることもあり株価は年初の水準から少し下落しています。

 ただ、7月26日に世界トップクラスの生物医学研究と最先端の創薬・開発能力を組み合わせることで新薬の創製を加速させるCalibr社と、戦略的提携の拡大を発表した辺りから株価は回復し始めており、この提携拡大をきっかけとして今後の業績回復と株価上昇が期待されます。

業績動向

 2023年7月27日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

「精神・神経疾患領域製品」が好調だったものの、売上の中心である「免疫・炎症領域製品」が落ち込んだことなどで前年同期の業績を下回る結果となりました。

 会社側は、第2四半期の業績は引き続き好業績となり予想を上回る結果となりましたが、これはヒュミラ以外のビジネスで一桁台後半の売上高成長率を達成したことが主な要因であり、当社の長期見通しとも一致しており、今後もパイプラインを前進させ、多様なポートフォリオの良好なパフォーマンスを背景に、通年のガイダンスを再び引き上げているとの発表をしており、ヒュミラの特許切れを他の製品で補いつつあることから今後も堅調な業績が期待されます。

 次回は2023年11月3日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 さまざまな新薬が予定されているものの臨床試験の結果によっては日の目を見ずに終える薬もあり、さらにその新薬の期待値が高く、株価がそれをすでに織り込んでいた際には株価急落の可能性があり注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:5.92ドル
配当利回り:3.85%
株価:153.64ドル(約2万2,600円)

 この銘柄、権利落ち日は10月12日(権利実施は11月15日)です。

 配当利回りは915日時点で3.85%、株価は153.64ドルでおよそ2万2,600円から購入できます(1USD=147円計算)。

 2020年3月からの最高値は174.96ドル、最安値は64.50ドルとなっています(終値ベース)。

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