「そもそもはじめから安い」の効用

 ここまで、追加分を含めて二つ、シミュレーションをしました。これらの結果から、積立投資に適した銘柄の特徴が浮かび上がってきます。「そもそもはじめから安いこと」、そして「長期視点で価格上昇が望めること」です。

出所:筆者作成

「そもそもはじめから安い」銘柄を選択することで、効率よく保有数量を増加させることができるでしょう(もともと高かった価格が大暴落するよりも保有数量を増加させることができる。追加シミュレーションより)。

 また、「長期視点で価格上昇が望める」銘柄を選択することで、積み立て開始から数十年間、積み上げた保有数量を効率的に収益化しやすくなるでしょう(最初のシミュレーションより)。

 裏を返せば、「すでに高い」かつ「長期視点で価格上昇が望めない」銘柄は、積立投資に適さないと言えます。こうした銘柄は、保有数量を効率的に増やすことができないだけでなく、最終的に収益化ができない恐れがあります。

 また、「すでに高い」ことがきっかけで、長期視点プロジェクトである積立投資を遂行する上で大きな障害になり得る、精神面での問題が生じる場合があります。

「すでに高い」ことは、すでに下落する余地が存在していることを意味します。こうした銘柄を選択した場合、数十年間、積立投資をしながら、絶えず、価格が大きく下がることへの不安と付き合わなければなりません。

 価格下落が保有数量を効率的に増やす好機だと、深いレベルで考えられるようになるまでは、精神的にしばしば、積み立てを続けることが厳しいと感じるかもしれません。

 さらに、「すでに高い」ことは、長期的に価格が下落し続け、最終的な価格反発を享受できない可能性が存在することを意味します。このような可能性を認識しつつも、長期視点で価格上昇が起きてほしいと、無理にでも自分に言い聞かせ、自分の心に期待を植え付けなければならない場面があるかもしれません。

 また、価格が小刻みに反落するたびに、不安になったり、期待が裏切られた気持ちになったりするかもしれません。

 長期視点の価格上昇が起きるかどうかは、実際のところ、その時になってみなければわかりません。ですが、少なくとも、「そもそもはじめから安い銘柄」を選択すれば、上記で示したような、さまざまな精神面での障害を回避できると、筆者は考えます。

 どの銘柄で積み立てをするかは、投資家の皆さま一人一人がご自身で判断できることです(人気があるから、著名人が推奨しているから、などの理由は、高値で推移する銘柄で積み立てをはじめる理由にはならないと、筆者は考えます)。