アクティブETF解禁、PBR1倍割れ銘柄の価値向上に根強い期待

 アクティブ運用型ETF(上場投資信託)が2023年6月に東京証券取引所で解禁され、9月7日に先陣を切って6銘柄が新規上場しました。6銘柄の中で最も流動性が高まっているのが、PBR1倍割れ解消推進ETF(2080)となっています。

 これは、PBR1倍割れ企業をユニバース(投資商品の集合体)として分散投資を行うもので、議決権行使などを通じて割安な企業価値を放置している経営陣に経営の質の改善を促すというものです。PBR1倍割れ銘柄に対する株主価値向上策への期待は根強い状況にあると捉えられます。

 下表は、時価総額1,000億円以上の銘柄の中で、PBRが0.7倍を下回っている銘柄群となります。PBR水準是正に向けた各企業のもう一段の取り組み強化などが期待できる銘柄であると判断します。

(表)PBRが1倍を大きく割り込んでいる高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り(%) 9月11日終値
(円)
時価総額
(億円)
PBR(倍) 株価騰落率
(%)
5214 日本電気硝子 4.60 2,608.0 2,595 0.46 11.26
5411 JFEホールディングス 4.46 2,240.0 13,763 0.61 45.83
7278 エクセディ 4.43 2,707.0 1,315 0.56 67.51
1941 中電工 4.26 2,442.0 1,419 0.67 16.95
6178 日本郵政 4.15 1,204.5 45,383 0.41 8.56
8570 イオンフィナンシャルサービス 4.14 1,281.0 2,767 0.63 ▲8.50
7182 ゆうちょ銀行 4.03 1,242.0 46,569 0.47 10.11
注:株価騰落率は昨年末比
表で取り上げた7銘柄のうち、中電工は9月12日現在、PBR1倍割れ解消推進ETFの組み入れ銘柄となっていません

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが4.0%以上(9月11日終値)
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. PBRが0.7倍未満

 表内の銘柄のうち配当利回り上位5銘柄についてコメントします。

厳選・高配当銘柄(5銘柄:日本電気硝子、JFEHD、エクセディ、中電工、日本郵政)

1 日本電気硝子(5214・東証プライム)

 特殊ガラスメーカーで、ディスプレイ用ガラスや自動車補強材向けのガラスファイバなどで高い市場シェアを誇っています。韓国・台湾・中国メーカー向けが中心で輸出比率は9割弱と高水準です。医療用ガラスなどの生産体制を拡大させるなど収益の多角化を推進しています。全固体ナトリウムイオン二次電池の開発などにも注力しています。

 2023年12月期第2四半期営業損益は57億円の赤字で、前年同期比249億円の損益悪化となっています。家電や自動車など幅広い分野で需要回復が遅れているほか、原燃料価格の高騰などコスト負担増に対して、価格改定効果なども遅れているもようです。

 事業構造改革費用の計上で、純損益は157億円の赤字となっています。通期営業損益は50億円の赤字見通しで、従来予想100億円の黒字から、上半期決算時に下方修正しています。なお、年間配当金は前期比横ばいの120円を計画しています。

 ディスプレイ事業の構造改革を進めており、中国で生産能力を増強する一方、韓国では子会社の解散を決定するなどし、収益性の改善を図っています。この効果によって、2024年12月期には急速な収益改善が期待できるとみられます。

 また、先行き不透明感が残るガラスファイバ事業に関しても、今後思い切った構造改革が進められる可能性があり、株価へのポジティブな評価につながりそうです。なお、長期安定配当を志向しており、ここまで20年以上にわたって減配を行っていません。

2 JFEホールディングス(5411・東証プライム)

 2002年9月に川崎製鉄とNKKが経営統合して発足した持株会社です。粗鋼生産で国内第2位のJFEスチールを筆頭に、JFEエンジニアリング、JFE商事などを傘下に抱えます。京浜、千葉、倉敷、福山の4製鉄所を主力拠点としています。

 国内トップクラスの建造能力を持つジャパンマリンユナイテッドは持分法適用会社です。電動車のモーターに使用される高級電磁鋼板の供給体制拡大などに注力しています。

 2024年3月期第1四半期事業利益は848億円で前年同期比27.3%減となっていますが、棚卸資産の評価などが影響したものであり、この影響を除いた事業利益は758億円で前年同期の6億円から大幅に拡大しています。

 国内でのスプレッド(鋼材価格と原材料価格の差)改善などが主因となります。通期事業利益は2,900億円で前期比23.0%増、棚卸資産評価益を除いたベースでは2,800億円(前期1,628億円)で、主力の鉄鋼事業の収益拡大が続くと見込んでいます。年間配当金は前期比20円増の100円を計画しています。

 9月5日には、公募増資とCB(転換社債)を組み合わせて総額約2,100億円を調達すると発表しています。温暖化ガス排出の少ない電炉への転換や、EV(電気自動車)普及をにらんだ鋼材開発など、大規模な脱炭素関連の投資に振り向ける方針です。

 株式価値は希薄化することになりますが、ネガティブな影響はすでに株価には織り込まれたとみられ、今後は調達資金を生かした拡大戦略が期待される局面となります。また、同社など鉄鋼株にとっては、相対的に遅れている中国の景気回復なども今後の注目材料となるでしょう。