2:根拠なき自信による投資判断

 投資を始めたばかりの個人投資家にありがちなのは、不正確あるいは不十分な根拠や自信に基づいて、投資判断をしてしまうことです。行動経済学から、2つのワナが浮かび上がります。

 まず佐々木さんは、日経平均株価の推移だけを見て安い高いと判断してしまいましたが、これは参照点依存性のワナに陥っています。

[1]参照点依存性とは

 ある基準(参照点)に引きずられて、自分に都合がいいように、物事を評価・判断する傾向があることをいいます。日経平均は2020年3月に一時、1万6,000円まで下落し、ここを基準にすれば2万円は高いとも言えます。しかし、佐々木さんは、日経平均株価が2020年2月に下落する前の2万4,000円を基準に、現在の2万円がまだ安いと判断しています。このように自分にとって都合のいい基準を設けて、投資判断することは危険です。

 さらに佐々木さんは、日経平均なら安心だという根拠のない自信を持ってしまい、うまくいくと判断しています。これは自信過剰バイアスのワナに陥っているのです。

[2]自信過剰バイアスとは

 自信過剰バイアスは、投資や資産運用の領域では大きな損失を招く原因にもなると言われています。例えば、「この方法ならうまくいくだろう」「ここはリスクを取っても大丈夫」「自分のよく知っている情報だから安心だ」など、自分自身の判断に執着。他の情報を見ようとしない、または都合の悪い情報は信じないことです。

 投資判断には、常に客観的な視点が重要です。いくら情報を集めても、自分にとって都合の良い見方しかしないのであれば、判断の基準がぶれ、意味がありません。

 では、投資初心者がこういった悪手に陥らないためには、どうしたらいいのでしょうか。