なぜ新興国通貨の投資で損してしまうのか

 新興国という名前の通り、先進国に比べて、政治や経済はもちろん、金融市場もまだ不安定であることは、どなたでもイメージできるでしょう。にもかかわらず、高い金利や魅力的な言葉に惑わされ、リスクを理解しないまま投資。そして、大きな含み損を抱えることになった人と、私はよくお会いしますが、損を抱えることになった事例から、ぜひ学んでいただきたいと思います。 

新興国通貨の投資で損をするワケ1:円高で為替差損が発生

 一番よくある理由は、為替の評価損です。過去の為替の値動きを見ながらも、高い金利を受け取っていれば大丈夫と考えてしまうのです。

 例えば、トルコリラは新興国通貨の中でも金利が高く、10%以上の金利収入(トルコリラベース)が期待できます。しかし、実際に過去10年程度の為替推移を見ると、2010年年初は1トルコリラ=60円台だった為替が、2021年1月現在では14円台まで円高となっています。これでは、高い金利を受け取ったとしても、為替で大きな損失となっていることが分かります。

新興国通貨の投資で損をするワケ2:為替手数料の負担が多大

 銀行や証券会社で、円を新興国通貨へ交換するときの為替手数料は、「○%」ではなく「○円」となっています。

 つまり、「1円」の手数料であっても、米ドルなら約0.8%(米ドル=103円計算)の手数料ですが、トルコリラなら約7.0%(トルコリラ=14円計算)の手数料となります。

 そして、この手数料は片道交換分だけなので、また円に戻す場合は手数料がかかります。ただし、FXの場合、為替手数料に該当する「スプレッド」が100分の1程度の低コストで取引も可能です。

 このように、コスト面もしっかり確認していないと、無意識のうちに損をしているかもしれないのです。

新興国通貨の投資で損をするワケ3:株式投資と為替を同じように考えている

 株式投資であれば、企業が成長することに期待して長期投資することもできますし、そもそも資本主義の理屈で言えば、株式市場は年々成長することが期待できます。

 しかし、国同士の取引で使われる通貨は相対比較のため、影響する要素が株式投資とは異なります。

 株式投資とは全く性質の異なる金融商品にもかかわらず、「いま評価損でも、長期間保有していれば、いつか価格は戻る」と考えてしまう人がいます。要注意です。