再燃する「反日感情」と懸念される経済活動への影響

 日本政府による処理水放出開始、中国政府による猛烈な反発を受けて、中国国内では再び「反日感情」が再燃しているように見受けられます。ここ数日、日本メディアをにぎわしているように、中国で日本人に対する嫌がらせの電話が相次ぎ、確認できているだけでも、山東省青島市にある日本人学校に石が投げ込まれ、江蘇省蘇州市にある日本人学校に複数の卵が投げ込まれています。北京市の日本人学校にも無言電話があったといいます。

 北京にある日本大使館は在留邦人に対し、外出時に不必要に大きな声で日本語を話さないようにするなどの慎重な行動を呼び掛けていますが、同館がこのような警告を出すこと自体、異常事態だと思います。

 私は2003年から2012年まで北京で生活をしていましたが、特に2005年、2010年、2012年は、歴史や領土に関わる問題を引き金に、北京や上海といった大都市を中心に「反日デモ」が吹き荒れました。私自身、目の前で日本の飲食店や日本車がデモ隊に攻撃されるといった場面を見てきました。自らが日本人であること、日本語を話すことで、道端で殴られるんじゃないか、差別的な扱いを受けるのではないかといった恐怖を感じたのを覚えています。

 今現在中国で生活している日本人、および日本関連の事業に関わっている中国人は、同じような恐怖を感じているのだと察します。中国における日本料理店では、お店で出している刺身が日本産ではないことを必死にアピールするといった現象が散見されます。

 言うまでもなく、「反日感情」の再燃は日中経済関係に不可避的に影響を与えるに違いありません。水産物(品)だけでなく、他の業界、商品にまで「日貨排斥」運動が波及する可能性は十分にあります。日本企業で働くこと、日本語を勉強すること、団体旅行が解禁された後になっても、日本に旅行に行くことをやめる中国人はゴマンと出てくると思います。

 と同時に、中国でビジネスを展開する日本企業が中国政府、企業、世論、地域コミュニティから嫌がらせを受けたり、場合によっては、昨今「反スパイ法」の観点から懸念される邦人拘束リスクが上昇したり、といった事態も十分考えられます。

 中国における「反日感情・運動」は日本経済と切っても切り離せない関係にあるのです。