必要な「利回り」=納得ずくのリスクテイク

 前回の続きの話をする。3,000万円を35年の積立で作ろうとする場合、利回りをゼロで考えると毎月7万1,400円が必要だったのが、利回り年4%を前提におくと毎月3万3,000円へと半減する。

 ただし資産運用の世界に「固定利回り」など存在しない以上、これはある意味「皮算用」とでもいうべきことでしかない。それでもこうしたことを考えるのは、人に説明できるくらいにスッキリとした理解を持ち、「預貯金じゃダメなんだ、裏にあるリスクを受け入れて『利回り』を上げるしかない」と自分を納得させることに繋がるからなのだ。という話をした。

 日興アセットはこのことを「納得ずくのリスクテイク」という言い方でずっと発信してきた。もう10年以上前から言っているかな。「覚悟」だとか「納得ずく」だとか仰々しいことばかり言ってると怖くなって投資に対して消極的になってしまう人がいるかもしれない。

 でも君らにも何度でも言っておきたい。別に脅したいわけじゃなくて、「納得ずく」になれた人は俄然、成功の確度が高まるのだ。そして、その覚悟がないがゆえに失敗する人がたくさんいるからなのだ。

 さてさて、怖い話はこれくらいにして、この前はEXCELで3,000万円の35年の4%というワンケースしか見せなかったから、今日は一覧表を見せておこうか。

※1ヵ月複利で運用を行なう計算。表示される結果は何らかの商品の運用成果などを約束するものではありません。また、手数料・税金等は考慮していません。

「期間」を20年に固定して、「元本」と「利回り」の組み合わせによって「目標金額」はいくらになるんだろうか?の一覧表だ。

 5%の列をずーっと下がってみると。毎月1万円の積立だと20年後に413万円、3万円だと1,238万円、5万円だと2,000万円を超える。つまり目標金額が2,000万円の人にとって、「月5万円×20年×5%=2,000万円」というのがひとつの分かりやすい皮算用になる。

「5%か。ってことはそこそこ高いリスクを受け入れないといけないな。どういう投資信託ならそれを20年の平均としてゲットできるだろうか...」という思考を経て、具体的な投信選びに進むことができるはずだ。

 当連載の開始当初の話で、「将来に備えるお金は夫婦2人平等にオープンに」なんて話をした。2人それぞれが月5万円を20年、5%が期待できるもので積み立てていけば、20年後の君たちは家計で4,000万円を持てているかもしれないってことだ。

「合わせ技」もある

 2人はきっとまだ積立でしか考えられないと思うけど、前に「元本」には積立以外に、一度にお金を投じる「一括投資」があるという話をしたのを覚えているかな。今少しまとまったお金を預貯金などに持っている人が将来のための資産作りを考えようとする時、積立と一括の「合わせ技」という考え方をしてもいいという話をしておこうかな。2人にはまだ関係ないかもしれないけど、一応聞いといて。

 こういうこと。

※一括投資は1年複利、積立投資は1ヵ月複利で運用を行なう計算。表示される結果は何らかの商品の運用成果などを約束するものではありません。また、手数料・税金等は考慮していません。

 見方が難しいかもしれない。以下、説明です。

 まず期間を20年に、そして目標金額は3,000万円に固定しています。今まではそれを今月からの積立でゼロから作ろうとしてきたわけだけど、この人は「将来の3,000万円大作戦」に対して、今手元にある300万円を投じてもいいと思っているわけだ。今300万円を投じた上で、君らと同じように今月から毎月の積立も始めるという合わせ技なのだ。

 分かりやすくするために、同じ投資信託を買うってことにしている。つまり同じ「皮算用利回り」を適用している。

 3%の列を見ると「一括投資分の結果」というところに542万円とある。これは今投じた300万円が20年後には542万円になっているという意味。242万円も増えてくれて嬉しい。だが、まだ目標の3,000万円にはほど遠い。2,758万円も足りない。でももうこの人は20年分、歳をとってしまった。

 この状況では困るので、足りない分は今からの積立で補っていくしかない。ということで、その2,758万円を目標金額にした「必要積立額」を計算した結果が、黄色い枠内にある7.5万円ってわけだ。

 理解できただろうか。この人は今300万円を投じると同時に、同じ投資信託で今月から7.5万円の積立をスタートし、その両方を20年間ずっと続ける。そうすると20年後に3,000万円を手にしていることになる――という皮算用の一例だ。

 やや下品な言葉かもしれないけど「タネ銭(金)」っていう言い方があってね。この人は300万円のタネ銭を持っているから、それがないであろう君らより有利な作戦が立てられるってこと。

 けれど昨今、「積立ブーム」みたいになってて、業界の僕からするとすごく嬉しいことなんだが、一方で少しまとまったお金の方は依然として預貯金に眠らせたままって人も多いらしいとも聞いている。

 もちろん使うアテがあるお金やイザという時のための、俗に「生活防衛資金」と呼ばれるようなお金は絶対にこの「合わせ技」に使っちゃいけないんだけど、「投資信託には積立しかない」、「クレジットカードの引き落としでポイントをゲットしながらコツコツやるのが王道だ」みたいな固定観念が広まっているとしたら、それは少し違うよっていう話なのだ。

考える順番

 ポイントが悪いわけじゃないけど、元々リスクを取る理由は何なのか、その考える順番を大事にした方がいいんだろうと思う。自分にとっての目標金額の3,000万円とか5,000万円を達成するためには「利回り」の部分がゼロではダメだから、つまり「元本」が異様に大きくなってしまって無理だから、本当は嫌だけど自分のために納得ずくでリスクを取っていこう、っていう考え方の順番がいいと思うんだよね。

 投信積立をクレジットカードの引き落としでやる場合の上限って月5万円らしいんだけど、「だから5万円やってます」っていうのって違うと思うんだよね。「とにかく積立していれば儲かるらしい。しかもポイントが付くからポイ活にもなる」っていう始め方では多分ダメだと思うわけ。

 ダメって意味は、いつかやってくる「含み損」の時に心が折れてしまい、後から見ると絶対に売ってはいけない時に全部売ってしまったり、止めるどころか増額すらしたい下落時の積立なのに「積立停止」してしまったりすることになると思うってこと。

 すみません。説教臭くなったので話を戻します。

 さっきの合わせ技の皮算用ができるこの人なんだけど、もしこの人が「毎月7万5,000円なんて絶対ムリ」と言うなら、どうしようか。仕方ない。この人が取れる選択肢は「皮算用レベル」を上げることだよね。つまり3%でなく5%を前提にすると必要積立額は月5.3万円に下がるし、7%前提にすれば3.5万円でOKってことになる。

※一括投資は1年複利、積立投資は1ヵ月複利で運用を行なう計算。表示される結果は何らかの商品の運用成果などを約束するものではありません。また、手数料・税金等は考慮していません。

 あるいは20年じゃなくて30年にするか。老後資金って意味で言えば「もっと長く働くか!」ってことだ。この人が40歳だとすると60歳で3,000万円を作ってリタイアしたかったんだけど、それは難しい作戦であることが皮算用の結果分かったから、70歳まで働こうと。そしたら運用期間を30年にできるので、もっと楽な積立額で済むことになるよね。

 ここでの「考える順番」もとても大事だと思う。お金を増やす方程式を思い出して欲しい。目標金額を達成するための「変数」は「元本」と「期間」と「利回り」の3つだ。「元本」を大きくするには限界があるし、無理をしてさっき言った生活防衛資金までを投じてはいけないし、いくら「本気の積立」をと言っても毎月カツカツになるような積立をしてしまっては、肝心の毎日が楽しくなくなるので極端に高額な金額設定にすることは控えたい。

 となるとより長く「期間」を設定することは十分アリな考え方だよね。つまり、長く働けるように今の仕事を頑張る、スキルを積む、そして健康を維持することを考える。次に「皮算用レベル」としての「利回り」をどの程度に設定するかを考える。こういう順番だと思う。

 さてさて、そうなると次の順番が「利回り」だ。次回、その「利回り」と投信選びの関係についての話をしようと思う。

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