エヌビディアの決算とパウエルFRB議長の講演(ジャクソンホール)

 昨日8月23日に市場が注目していたエヌビディアの決算が発表された。8~10月売上高は約160億ドルで、市場予想を35億ドル上回った。250億ドルの自社株買い承認した。

 この驚くべき決算を受けて、エヌビディアの株価は時間外で約7%上昇し、506ドルの史上最高値を更新(*時間外取引なので下のチャートには反映されていない)、時価総額は明日には1兆2,000億ドルを超える勢いだ。

 ナスダック総合指数は年初から36%上昇しているが、エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズというナスダックの上位5銘柄が今回の上昇相場の3分の2を占めている。すでにAI関連株はPER(株価収益率)50倍というドットコムバブル以来の水準まで買われている。

 AIの分野の勝者は勝ったものが独り勝ちになる。だから、AI関連株といっても負け組には投資失敗という後始末が待っている。イーロン・マスクは、「全ての人とその犬がGPUを買っているようにみえる」と述べたが、銘柄の選別に注意すべきであろう。

エヌビディア(日足)

マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

エヌビディア(週足)

マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 8月25日にはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長のジャクソンホール会合(カンザスシティー連邦準備銀行主催の年次シンポジウム)講演がある。今年のシンポジウムのテーマである「世界経済の構造転換」は、全てのリスク要因を網羅している。

 米国は32兆ドルもの借金を抱え、制御不能な支出を繰り返している。住宅の価格が上がり過ぎて、住宅購入申し込みが28年ぶりの低水準になっている。住宅バブルと金利上昇で誰も住宅を購入できなくなったためである。貧富の差がどんどん拡大している中で、パウエルFRB議長は金融資産バブルに対してどういうかじ取りをするのだろうか?

 また、世界の主要経済がさらにデカップリングすることで、破壊的な変化が起こる可能性がある。中国やロシアはBRICS諸国がG7のライバルになるよう促すだろう。

米国政府債務、債務上限以降1.2兆ドル急増し32.7兆ドルに

出所:WOLFSTREET

米国の債務対GDP比と将来予測

米国の債務対GDP比は2050年までに200%に上昇すると予測されている。金利コストは政府にとって大きな負担となる。
出所:Game of Trades

CBOの米国の公的債務予測

CBO(米国議会予算局)の予測によると、米国の公的債務は2033年まで毎日52億ドルという驚異的なペースで増加すると予想されている。このままでは10年以内に米国の公的債務は50兆ドルを超えるだろう。
出所:バンク・オブ・アメリカ

米国10年国債金利(週足)

米国10年物国債金利が4.34%に上昇、2007年以来の高水準
マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 米国財務省は、巨額の財政赤字を補填(ほてん)するため、また政府の当座預金に現金を補充するために、膨大な量の国債を売却しなければならない。国債入札は毎月規模を拡大しており、投資家を誘い込むためにより高い利回りを要求している。

 米資産運用会社グランサム・マヨ・バン・オッタールー(GMO)の共同創業者ジェレミー・グランサムは、「金利上昇による影響がいずれ経済に打撃を与え、リセッション(景気後退)を回避できるとの米金融当局の期待に冷や水を浴びせることになる」と述べている。

 AIブームの一方で、世界の利回りが15年ぶりの高水準に達し、中国のシャドーバンキング問題が深刻化する中、市場は危機感を募らせている。

 今後の相場の行方や日銀の金融政策は、来年の米大統領選挙と密接に絡んでくる。大きな危機の到来は来年の米大統領選挙後になるのではないだろうか? 2024年以降は、世界金融危機(リーマンショック)後の国家管理相場の「後始末」の時期が到来しそうだ。

「金融インフレの時代には資産価格が、ほぼ際限なく、つまりシステム全体が破綻するまで上昇するが、過去の超インフレ期に株価がどう動いたか、1919~1923年のワイマール共和国や1978~1988年のメキシコをみればわかるように、金融インフレに積極的に関与するシステムは、つまるところ破綻する」

(マーク・ファーバー)