2024年の新NISAスタートにらみ、成長力ある高配当利回り銘柄(川崎汽船、シチズン時計、ジャックス、日本特殊陶業、大同特殊鋼)

 FRBやECB(欧州中央銀行)理事会の利上げ打ち止めタイミングが接近していると考えられ、目先はグロース株が優位の状況になっていくと考えられます。ただし一方で、2024年の株式市場のテーマの一つに新NISA制度のスタートも挙げられます。2023年後半に向けては、市場の関心も高まっていく方向に向かうと考えられます。

 NISA投資においては配当金も非課税となるため、高配当利回り銘柄が投資対象になりやすいと判断されます。とりわけ、グロース株への注目度が高まりそうな状況下、配当性向を配当金の目安とする企業が増えていることで、収益成長は配当金の増加につながりやすいことから、利益成長力の高い高配当利回り銘柄に注目したいタイミングです。

 下表は、新型コロナウイルス感染拡大前(2020年3月期決算)との比較で、営業利益が大きく拡大している高配当利回り銘柄となります。今後も安定して高い収益成長が期待できそうな銘柄と位置付けられ、それに伴って配当金の水準も高まっていくとみられます。長期安定投資が基本となるNISA投資における有望な投資対象といえるでしょう。

(表)コロナ前比較で営業利益が大幅に拡大した高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り
(%)
8月18日終値
(円)
時価総額
(億円)
今年度予想
営業利益
(百万円)
4年間
変化率
(倍)
9107 川崎汽船 4.16 4,809.0 13,669 89,000 13.01
7762 シチズン時計 4.68 854.0 2,100 25,000 4.07
8584 ジャックス 4.11 4,865.0 1,706 33,500 2.30
5334 日本特殊陶業 4.11 3,237.0 6,609 96,500 1.99
5471 大同特殊鋼 4.02 5,727.0 2,488 47,000 1.90
注:4年間変化率は今期予想含めた4年間での営業利益の増加率

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが4.0%以上(8月18日終値)
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 今期予想含めた4年間での営業利益変化率が1.5倍以上
  4. 前期実績・今期見通しともに営業増益

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 川崎汽船(9107・東証プライム)

 国内海運大手3社の一角です。2023年6月30日現在の運航船腹数は430隻、ドライバルク船、自動車船、LNG(液化天然ガス)船などが隻数上位となっています。

 もともとはコンテナ船のウエートが相対的に高い状況でしたが、2017年に海運大手3社がおのおののコンテナ船事業と海外におけるコンテナターミナル事業をスピンオフし、それを統合した新会社「Ocean Network Express(ONE)」を設立しています。統合会社は持分法適用会社になっており、足元での収益急拡大のけん引役になっています。

 2024年3月期第1四半期の経常利益は491億円で前年同期比81.6%の大幅減益となりました。急騰してきたコンテナ市況のピークアウトによってONE社の収益が減少し、持分法投資損益が減少しました。2024年3月期通期予想は従来の1,300億円から1,350億円に上方修正していますが、コンテナ市況の調整が続くことで、前期比80.5%の大幅減益見通しです。

 一方、通期営業利益は850億円から890億円に上方修正し、前期比12.9%増となる見通しです。自動車船事業が想定以上に堅調に推移する見通しです。年間配当金は200円を計画し、前期比では実質400円の減配となります。

 コンテナ船市況は2020年からの急騰前の水準にまですでに調整しています。今後一段の収益悪化要因にはつながらない見通しであり、現状の4.2%の配当利回り水準には十分に利回り妙味があると考えられます。

 また、現在、自己株式の取得を実施中ですが、今後も機動的な還元策を実施していく方針です。還元総額は2022年度の2,000億円に対して、2023年度以降は2,500億円以上を計画しているようです。今後もバリュー(割安)株の代表銘柄の一つとして高く位置付けられる見通しです。

2 シチズン時計(7762・東証プライム)

「CITIZEN」ブランドの腕時計大手企業です。部品から完成品まで自社で一貫製造し、世界シェア3割を占める時計事業を主力に、工作機械事業、デバイス事業なども手掛けています。工作機械では、CNC自動旋盤で世界トップクラスのシェアを誇っています。

 デバイスではLED(発光ダイオード)分野が主軸製品で、水晶デバイスなども扱っています。売上高の約7割が海外売上となっています。現在の中期経営計画では、2025年3月期売上高3,200億円、営業利益率8.0%を目指しています。

 2024年3月期第1四半期営業利益は55.4億円で前年同期比0.9%減となっています。主力の時計事業は増収増益となりましたが、工作機械事業が国内、海外ともに伸び悩み、収益の足を引っ張る形となっています。2024年3月期通期では250億円、前期比5.4%増となる見通しです。

 工作機械事業に関しては下振れ余地もありそうですが、為替レートの前提は1ドル=130円と保守的であり、こちらは上振れ要因につながりそうです。年間配当金は40円を計画し、前期比6円の増配予想となっています。

 対ドルでは1円の円安で2.5億円、対ユーロでは1円の円安で2億円の営業利益増加要因となるようです。現在(8月21日現在)の円安状況を前提とすれば、トータルで78億円(ドル40億円・ユーロ38億円)の利益上振れ要因につながる計算です。

 また、国内時計事業はインバウンド需要への期待が高まる方向でしょう。中国から日本への団体旅行が解禁となったことで、買い控えが続いた中国人の日本製品買いが一気に膨らむ可能性は高いと考えられます。