みなさんは株主優待のために何かの株を買おうとした時、直前で本当に買って大丈夫かと不安を感じた経験はありませんか? 優待目的であっても、保有している間に株価下落が続けば、結局高い買い物になってしまいます。

 そこで本稿では経済情勢や業績動向もふまえ、人気の8月優待の中で、業績についても妥協なしで選んだ、今後も安定した成長が見込めそうな3銘柄を紹介します。

業績良好の8月優待おすすめ3銘柄

1.コメダホールディングス(3543)─ 8月優待人気ランキング6位

銘柄名 コメダHD コード 3543
株価(円) 2,738 権利発生株数 100
優待取得最低金額(円) 273,800 配当利回り 1.90%
優待内容 100株以上で1,000円分の自社電子マネー。一部対象外店舗あり。300株以上かつ2月末時点で3年以上継続保有なら1,000円増。
注:7/28の終値より。以降も同じ。

「コメダ珈琲」を主力として全国にチェーン展開し、知名度が高くブランド力も非常に強い企業です。優待内容は、自社店舗で使える電子マネー。くつろぎを重視した店舗で、お得にリッチな時間を過ごせます。

 半年前に私が書いた2月優待のおすすめ特集でも紹介しましたが、引き続き株価も業績も良好、かつ優待も魅力的な銘柄であり続けているため、今回も筆頭として再び紹介させていただきます。

注1:Market SpeedⅡ「個別銘柄」の「業績」タブより筆者作成。以降も同じ。
注2:FY2024とFY2025の予想値はIFISコンセンサス。以降も同じ。

 光熱費や原材料高の影響で利益率は押し下げられていますが、もともと利益率が良い経営であること、また付加価値の高いサービス提供に継続して取り組み続けている結果、原材料高で苦しむ他の飲食業と比べ、高い利益率を誇っています。

「もともと利益率が良い経営」というのは、普通のカフェには無い、ワンランク上の「くつろぎ空間」を付加価値として提供していることに起因します。スターバックス社がコーヒーのおいしさではなく、「サードプレイス」と呼ばれる、洒脱(しゃだつ)なくつろぎ空間を自社の最大の商品として自負している話は有名ですが、コメダ珈琲もこれと同じです。

 もちろん新メニューの開発にも余念はありませんが、コメダ珈琲を利用する最大の魅力は、駅前の騒がしいカフェでは味わえない、ゆったりとした時間を過ごすことにあります。このため価格競争でしのぎを削りすぎることなく、利益率にもゆとりを残し、物価高が進む最近でもコスト高をうまくこなす経営を可能にさせているのです。

 ここまで危なげなく業績を伸ばし続けているコメダHDですが、強いて懸念材料を挙げるとすれば、現在の新規出店ペースがいつまで続くか、という点があります。

 つい先日、7月19日に新橋に記念の1,000店舗目が出店されましたが、飲食業の売上成長は、新規出店の順調な拡大が大前提です。どんな人気店でも、1日にお店に入れられるお客さまの数には、物理的な限りがあるからです。

 参考までに、7月27日時点でスターバックスの国内店舗数は1,811店舗(会社HPより)、ドトールコーヒーは1,068店舗(会社HPより、6月末時点)です。私の肌感覚だと、ドトールなら都内の駅前ではどこでも見かける気がしますが、それでも1,000店舗程度。

 加えて、狭いテナントにもコンパクトにお店を入れやすいドトールなど通常のカフェと比べ、コメダ珈琲は「くつろぎ」重視のため、出店可能な場所の融通はききづらいと考えられます。そのため、1,000店舗を超えた現在から出店ペースに鈍化の兆しが見えないかは、注意してウオッチする必要があります。

2.USEN-NEXT HOLDINGS(9418)─ 8月優待人気ランキング32位

銘柄名 USEN-NEXT HD コード 9418
株価(円) 3,250 権利発生株数 100
優待取得最低金額(円) 325,000 配当利回り 0.46%
優待内容 100株以上で、90日間の自社コンテンツ配信サービス料無料+1,000円分のポイント付与(1回)。1,000株以上で、それぞれ1年間、1,800円分(毎月)

 動画配信サービスとして広く親しまれる「U-NEXT」の経営会社です。優待内容は、U-NEXTの毎月のサブスク料金の無料サービスと、ポイント付与。U-NEXTは7/27現在で2,189円/月(税込)の定額見放題サービスのほか、新作映画などを有料コンテンツとして配信していますが、その有料コンテンツの購入にポイントを充てられます。

 世界屈指の動画配信サービスである「NETFLIX」とともに、コロナ禍で爆発的に利用者が増えましたが、急激に勢いがしぼんだNETFLIXと比べ、その後も手堅い成長を続けています。

 売上も利益も利益率も、基本的に右肩上がり。国内作品に関してはNETFLIXよりも豊富なラインアップという価値を武器に、月額にしてNETFLIXの倍の利用料でありながら、コロナ後もユーザー数を伸ばし続けています。

 しかしU-NEXTによる配信事業は、USEN-NEXT HDの売上の3割程度を占めるにすぎません。7月の3Q決算発表の内容では、販促費がかさみ、利益率は横ばい。円安も進んだため、海外からのコンテンツ輸入費も、行く末の不安材料です。

 これを補うのが、実店舗向けに音楽配信やDX業務推進サービスを提供する「店舗サービス事業」と、中小事業者向けに通信回線やネットワーク、電力まで提供する「通信事業」「エネルギー事業」です。実はこの三つで、売上の半分以上(!)を構成しています。

 一般に知られる動画配信事業とは何の関係もないように思えますが、実はこの組み合わせには重要なシナジー効果があります。

 コロナの感染症法上の位置づけが緩められ、配信事業が往時ほどの伸びを見込めなくなった時にあって、これら実店舗への来客数の増加が利益につながる事業が、配信事業を補完する役割を担っているのです。実際、これら事業の増益が、7月の3Q決算発表が好内容だった主因です。

 今後もこうした有効なシナジーを生む関連企業をM&A(買収・合併)で獲得していく姿勢を示しており、事業の安定性がかなり高いのがUSEN-NEXT HDの特徴でしょう。

3.ハイデイ日高(7611)─ 8月優待人気ランキング38位

銘柄名 ハイデイ日高 コード 7611
株価(円) 2,523 権利発生株数 100
優待取得最低金額(円) 252,300 配当利回り 0.95%
優待内容 (1)優待券(500円)または(2)おこめ券。100株以上で(1)2枚または(2)1枚、500株以上で(1)10枚または(2)3枚、1,000株以上で(1)20枚または(2)5枚。

 中華食堂「日高屋」の経営会社です。優待内容は、グループ店舗で使える優待食事券、もしくはおこめ券。日高屋も首都圏の大きな駅前繁華街では必ずと言って良いほど営業しており、使い時には困らないでしょう。身近な優待銘柄として人気ではありますが、そもそも株式会社としても優良な銘柄の一つです。

 2022年期は、コロナ禍で営業時間が短縮され、思うように売上を上げられないまま最終赤字に陥っていました。しかし2023年期からは、徐々に営業時間の延長、商品価格の改定などを進めた結果、黒字に転換。

「中華そば」など主力商品の価格は据え置いたまま、行動制限の緩和に合わせて期間限定メニューなども追加したことで、2023年5月の売上は、月次として過去最高を更新するまでに復活しました。

 行動制限の緩和を機に一気に売上や利益が回復した背景には、店舗運営の効率化などの経営努力もありますが、何より「日高屋」の強みでも弱みでもある、駅前一等地という立地が大きく関係しています。

 仕事終わりのサラリーマンが主な顧客層であるため、コロナの打撃をもろに受けたと同時に、それさえ緩和されれば、乾いたスポンジに水を吸わせるように回復も早かったのです。

 とはいえコロナを機に、持続的な成長をできるよう、筋肉質にビジネスモデルも変革しています。飲食店の売上が店舗数に依存するというのはコメダHDの項目で述べた通りですが、ハイデイ日高は2023年期ごろから、コロナで閉店した郊外やロードサイドの空き物件にも「日高屋」をオープンさせる例が増えています。

 実は今までは「よく見る」印象の割に店舗数は多くなく、今年の7月の1Q決算発表の時点で、直営店舗は438店舗。これは首都圏の主要な駅前で一件ずつ営業しているボリューム感で、有名うどんチェーンのように、住宅地や道路沿いといったところで「日高屋」を目にすることは、まず無かったと思います。

 これも駅前繁華街という立地に狙いを絞り込んでいたためで、これにこだわっていては、いずれ成長の限界がきていました。

 コロナを機にこの慣例が取り払われ、ハイデイ日高は店舗拡大路線へ、新たな局面を迎えています。これが奏功するかどうかが今後の成長の分かれ目ですが、売上成長の余地を残せたという点で、優待狙いの長期保有の妙味も出てきた銘柄だと思います。

 いかがでしたでしょうか。8月は、2月・3月・9月と共に、株主優待の季節です。その中でも長期保有をしたい銘柄については、優待内容だけでなく、しっかり業績まで見てお選びすることをおすすめします!