2009年の秋にスタートした本連載「知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識」が、おかげさまで700回を突破しました。

 これも多くの個人投資家の方にご覧いただいたおかげです。誠にありがとうございます。

 今回から数回にかけ、拙著の代表作である「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」(ダイヤモンド社)「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」(同)から、筆者がファンダメンタル分析において、個人投資家の皆さまに伝えたい重要な内容を記します。

 今回は、PER(株価収益率)をファンダメンタル分析に活用する際の注意点についてです。

PERの落とし穴

 皆さんご存じだと思いますが、PERは株価が1株当たり当期純利益の何倍まで買われているかを表すもので、この数値が低いほど割安、高いほど割高とされています。

 計算式は、「株価/1株当たり予想当期純利益」で、単位は「倍」です。

 多くの個人投資家にとってPERはファンダメンタル分析の王道であり、銘柄選択をする際、PERが高い銘柄は避け、PERが低い銘柄を選択するように、と株式投資の教科書にも書かれています。

 ところが株式投資の教科書の多くには、ある重大な視点が抜け落ちていることをご存じでしょうか。それは、成長株と割安株の、どちらを投資対象として銘柄選択をしたいのか、という視点です。

 この点を無視して単にPERの高低だけで銘柄選択をしている個人投資家があまりにも多いというのが筆者の印象です。

知っておくべき常識:「成長株のPERは高い」

 株にはいくつかのカテゴリーがあります。代表的なものが「割安株」「成長株」です。実は、割安株と成長株では、PERの使い方が全くと言ってよいほど異なります。

 実はPERを使う時に気を付けないといけない点が二つあります。そのうちの一つが、「PERは、当期の予想1株当たり純利益が今後もずっと続くとして計算されている」という点です。

 成長株は、当期の利益より来期の利益、来期の利益より再来期の利益、というように、今よりも将来において利益が大きく伸びることが期待されている株です。

 しかしながら、PERの計算は、「当期の利益」が今後もずっと続くという仮定で行われていますから、必然的にPERは高くなります。

 それは、成長株が割高というのではなく、PERの計算式上、成長株のPERが高くなり、割高に見えてしまうだけなのです。

 そのため、多くの株式投資の教科書で書かれている「PERが低い=割安、PERが高い=割高」ということを意識しすぎると、総じてPERの高い成長株へ投資することが非常に難しくなる点はよく理解しておく必要があります。

PERが低くても、割安とは言えない理由

 もう1点、PERを使う時に気を付けないといけない点があります。それは、PERの分母は「当期の予想1株当たり純利益」を用いていることです。

 株式投資を長年している方はお分かりだと思いますが、企業が発表する当期の業績予想どおりに着地することは極めて少ないです。

 機関投資家や外国人投資家といったプロ投資家は、企業発表の業績予想をうのみにするのではなく、独自に企業業績の予想をした上で投資をしています。

 一方、私たち個人投資家が得られる情報は、企業発表の業績予想や会社四季報掲載の予想値くらいです。

 ですからよくあるケースとして、業績予想が良いのに株価が下落してPERが下がり、株価が割安に見えるといったことが生じます。

 でもこれは実際には株価が割安になったわけではなく、プロ投資家が企業発表の業績予想より実態が悪いと分析した結果株価が下がっただけであり、割安にはなっていません。

 しかしPERだけを意識しすぎると、このようなケースを「株が割安になった」と喜んで買い向かってしまい、その後企業側からも業績の下方修正が発表されて株価がさらに大きく下がってしまう、という憂き目にあってしまいます。

 これを防ぐには、PERからみて割安に見えても、株価が下がって下降トレンドとなっている間はその株を買うのは控え、様子見をする、というのが有効です。

 ですから、PERにプラスして、株価チャートをチェックして株価のトレンドが下降トレンドになっていないかを確認することをお勧めします。

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