株式投資で1億円

Hさん(男性・50代半ば・会社員)

 株式投資が好きで、投資キャリアの長いHさん。リーマン・ショックで株価が世界的に暴落したタイミングに、それまでの貯金を使って、割安株を大量買いしました。

 しかし、株式投資好きなHさんが投資のトレンドに乗って、流行(はや)りの銘柄を買うときは、なぜか損しがちでした。それでも株式投資で1億円の黒字を達成できたのは、ある銘柄のおかげでした。

 Hさんはある産業分野に明るく、世間一般には知られていないものの、長く業績成長を続けている1銘柄の売買を繰り返していました。これによって5,000万円ほどの利益(購入価格の7~8倍の値上がり)を得ていたのです。

 上場会社の管理部門に長く勤め、役員にもなったHさんですが、定年を待たずに退職。退職金2,000万円を受け取って、友人の会社に転職しました。そのとき、退職金の半分を債券に、残りの半分は、その1銘柄に投資。現時点のHさんの金融資産は1億円超です。

1億円達成の理由

解説:西崎努氏

 Hさんは家計の収支や資産の状況について把握することはもちろん、元々、自身でライフプランを作成するくらい、計画的に人生を歩んでいる人でした。そして、分からないことはIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)などプロのアドバイスを得て、常にライフプランをブラッシュアップさせています。

 Hさんは「1銘柄」以外に、十数銘柄の株式を保有していて全体としては黒字です。十数銘柄の株式は値動きを楽しむ目的で買っているところがあり、投資金額そのものも抑え、全体の金融資産に対する割合はそれほど高くはありません。

 金融資産の多くを株で保有しているHさんですが、50代半ばになったため、老後を視野に入れて、資産に占める「1銘柄」の割合を減らして、債券などの安定資産に移行させようとしています。しかし、株式を売って現金化しても、株式投資好きの血が騒ぎ、再びあの「1銘柄」を買い増ししてしまうそうです。

 老後を視野に入れた資産運用という観点からは軌道修正が必要なのですが、「1銘柄で大きな利益を出した」という成功体験があるため、なかなかやめられないようです。過去の成功体験が資産運用に影響を及ぼす例は珍しくなく、気をつけなければならないことと言えます。

 最後にHさんが資産1億円を達成した秘訣をまとめると、「ライフプランを作成し、人生の節目に応じて常に見直していた」「自分が詳しい業界の銘柄を売買していた」ことが挙げられます。