連休明けで4営業日だった先週の国内株市場ですが、週末21日(金)の日経平均株価終値は3万2,304円となりました。前週末終値(3万2,391円)からは87円安と、小幅ながらも週足ベースで下落に転じています。

 今週の株式市場は、日米企業の決算がラッシュとなるほか、日・米・欧の金融政策会合がそろって開催されるなど、7月相場の「ヤマ場」を迎えます。

 イベントが盛りだくさんの中、相場に新たな動きが出てくるかが焦点になりますが、まずはいつものように、足元の状況から確認していきます。

継続?打ち消し?今週の日経平均は「リターン・ムーブ」の動向がカギ

図1 日経平均(日足)とMACD (2023年7月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均を振り返ると、17日(月)の休場明けとなった18日(火)と19日(水)は株価の戻りをうかがう動き、そして、週末にかけての20日(木)と21日(金)は失速に転じる展開となり、ちょうど前回のレポートでも指摘していた、株価の戻りが25日移動平均線に抑えられる「リターン・ムーブ」のような格好となりました。

 リターン・ムーブとは、「株価」と「節目」の関係の変化を表しています。

 一般的に、株価が方向感をもって動き始めたとき、どこまで動きそうなのかの目標や、抵抗(レジスタンス)・支持(サポート)の目安として、移動平均線やキリの良い株価水準などの「節目」が意識されます。

 例えば、上の図1で25日移動平均線をこうした節目の一つとして捉えてみると、6月24日は株価のサポートだったのですが、先週の25日移動平均線はレジスタンスとして機能し、その役割がガラリと変化しています。

 普通に考えるのであれば、今週の株価が再び上昇に向かった場合、25日移動平均線がレジスタンスとして機能しやすく、株価の上値をトライする際のハードルになります。

 先週末21日(金)時点の25日移動平均線の値は3万2,877円ですが、同日の現物株取引終了後にオープンした日経225先物取引市場は、大阪取引所で3万2,700円、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で3万2,690円と上昇して終えており、この流れを受けて今週の現物株取引がスタートするのであれば、25日移動平均線をトライする可能性が高そうです。

 そのため、今週はこうしたリターン・ムーブの動きが継続するのか、それとも打ち消されるのかが注目されることになります。仮に株価が25日移動平均線を上抜けた場合には、6月19日や7月3日の直近高値が目安になりそうです。

 反対に、再び25日移動平均線で上値が抑えられた場合には、直近安値となった7月12日の3万2,000円水準が下値の目安になり、ここを下抜けると、下げが加速することも想定されます。

目先の日経平均の予想レンジは3万3,750~3万1,400円

 そこで、今週の日経平均の予想レンジについて、この25日移動平均線乖離(かいり)率をボリンジャーバンド化したもので、もう少し探ってみます。

図2 日経平均25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2023年7月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 先週末21日(金)時点の25日移動平均線乖離率はマイナス1.75%、ボリンジャーバンド内では、マイナス1σ(シグマ)あたりに位置しています。

 今週の株価が先ほどのリターン・ムーブを打ち消した場合、上の図2の0%ラインを超えることになりますが、足元のボリンジャーバンドは5本の線が全て下向きとなっているため、まずはバンドの中心線(MA)を目指すことになります。

 先週末時点の値は3万3,223円です。さらに、直近高値の6月19日(3万3,772円)と7月3日(3万3,762円)を目指すのであれば、となるため、当面の上値の目安は3万3,750円あたりが想定されそうです。

 反対に、リターン・ムーブが継続するのであれば、株価下落に伴って乖離率がマイナス方向に進んでいくことになります。マイナス2σまで乖離が進んだ場合、21日(金)の値では3万1,385円ですので、ざっくり3万1,400円あたりが下値の目安となりそうです。

 続いて、今週の注目イベントについても考えていきます。

今週の注目イベント[1]:日・米・欧の金融政策

 最初の注目イベントは日・米・欧の金融政策です。

 25日(火)~26日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)、27日(木)にECB(欧州中央銀行)理事会、27日(木)~28日(金)に日本銀行(日銀)金融政策決定会合が予定されていますが、とりわけ、日米の金融政策イベントが注目されます。

 とはいえ、FOMCについては、「0.25%の利上げが実施され、利上げはいったん打ち止め」という見方が優勢であるほか、日銀金融政策決定会合についても、先週末に「YCC(イールド・カーブ・コントロール)の修正が見送られる」と報じられ、先ほども紹介した日経225先物取引の上昇につながっているなど、足元の株式市場は日米の金融政策イベントの結果について、ほぼ織り込んでいる状況といえます。

 したがって、今週の金融政策イベントについては、イベント後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長や植田和男日銀総裁の記者会見などを通じて、織り込んでいる前提シナリオに変化が生じるかどうかを確認する格好で、株式市場が反応していくと思われます。

 想定通りであれば株式市場は好感し、金融引き締め色が強まるものとなった場合には、ネガティブ材料として受け止められると思われます。

今週の注目イベント[2]:米国の企業決算

 もう一つの注目イベントは、日米の企業決算です。日本よりも一足早く決算シーズンの本格化を迎えた米国株市場では、基本的に良好な決算については素直に好感するものの、すでに期待を先取りして株価が上昇していた銘柄については、決算の中身が良くても売りで反応するものも散見されているため、直近で株価が上昇していた銘柄には注意が必要かもしれません。

 となると、今週の米国決算では、マイクロソフトとメタ・プラットフォームズへの注目が高まりそうです。両社は先週に生成AIをめぐる業務提携発表などで株価が上昇し、高値を更新する動きを見せていました。決算を受けて材料出尽くしとなった場合には注意が必要です。

図3 米マイクロソフト(日足)とMACD (2023年7月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

図4 米メタ・プラットフォームズ(日足)とMACD (2023年7月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

今週の注目イベント[3]:国内の企業決算

 米国と同様に、国内でも企業決算が相次ぎます。今週は300銘柄以上の決算が予定されていますが、相場全体にも影響を与えそうな銘柄として、ファナックとアドバンテストが注目されそうです。

図5 ファナック(日足)とMACD (2023年7月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 ファナックは、設備投資関連銘柄でもあり、中国関連銘柄でもあり、景気敏感株でもあるなど、多くの要素を持っています。上の図5がファナックの日足チャートですが、足元の株価は75日移動平均線に上値が抑えられる格好でのもみ合いが続いています。

 また、チャートをざっくり捉えると、直近の三つの高値(6月7日・6月19日・7月3日)で、いわゆる「トリプル・トップ」を形成しているようにも見え、ネックラインにあたる株価水準は3月9日の戻り高値でもあり、チャートの形はあまり良いとはいえません。

 決算をきっかけにして持ち直せるかどうかが注目されますが、中国景気に対する見方は、「ゼロコロナ政策解除で大復活」だった年初から、現在は「不動産市場の低迷や、デフレが警戒される」といった具合に180度変化しているため、中国景気の状況が、ファナックに限らず、中国との関わりが深い企業の業績に影響が懸念されることになった場合には注意が必要です。

図6 アドバンテスト(日足)とMACD (2023年7月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 また、半導体検査装置大手のアドバンテストの決算にも注意しておく必要があります。

 上の図6を見ても分かるように、5月に入ってからのアドバンテストの株価は大きく上昇していますが、生成AI関連銘柄の筆頭格として期待を集めたことが背景にあります。先週の株価は米半導体関連株に合わせて下落基調となっていますが、それでも25日移動平均線あたりで下げ止まっています。

 しかしながら、4月に発表された前回決算後の株価の反応がさえず、業績期待が高まっていなかったことや、アドバンテスト株の日経平均の指数寄与度の大きさなどを踏まえると、決算を通じて、生成AI銘柄への期待感が修正されることになった場合には、日経平均も含めて株価が大きく下げてしまうことも考えられるため、警戒しておいた方が良いかもしれません。

中長期的な見方は前回と変わらず

 このように、目先の株式市場は上振れと下振れの両にらみの状況となりますが、中長期的な見方は前回とあまり変化はなく、引き続き日経平均の週足ボリンジャーバンドの「バンド・ウォーク」に変化が現れるかどうかがポイントになります。

図7 日経平均(週足)のボリンジャーバンド(2023年7月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 バンド・ウォークについては、前回のレポートでも紹介したように、トレンドが発生・継続している時に出現する形状です。

 チャートを過去にさかのぼると、株価がボリンジャーバンドのプラス1σを下抜けて、バンド・ウォークが解消された際、いずれも、マイナス2σまで株価が下落しています。

 そのため、バンド・ウォークを継続し、上昇基調を続けることができるのか、それとも、プラス1σを下抜けて、下値を探る動きになるのかを見極めていく動きがもうしばらく続くことになりそうです。