この半世紀で起きたコモディティ市場の変化

 以下は、筆者が考える、この半世紀で起きた、コモディティ(国際商品)相場の見方の変化です。

 30~50年前はおおむね「エルニーニョ現象発生 ≒ 価格急騰」と言えたわけですが、現在は、エルニーニョ現象が起きていなくても、急騰し得ます。2000年ごろ以降、市場構造を揺るがした出来事とは、「コモディティ(国際商品)銘柄の金融商品化(ETF[上場投資信託]などで)」、そして「欧米などによる大規模な金融緩和(危機時)」です。

 これらにより、大量の投機マネーが投資対象の垣根を超え、縦横無尽に行き交う環境が出来上がりました。こうした大きな変化は、コモディティ(国際商品)市場に「独自材料の(相対的な)影響度低下」という、土台をほんのわずかにずらす、目立たなく、かつ甚大な変化をもたらしました。

 有事でも金(ゴールド)価格が上がらない場合がある、OPEC(石油輸出国機構)が減産をしても原油価格が上がらない場合がある、エルニーニョ現象が発生しても穀物価格が上がらない場合がある...。2000年以前の相場環境に詳しい人にとって、釈然としない相場展開がこの20年余り、続いているのは、こうした背景があったためだと、筆者は考えています。

図:コモディティ(国際商品)相場の見方の変化

出所:筆者作成

「スーパーエルニーニョ」は、もしかしたら、穀物・農産物価格を大暴騰させるかもしれません。しかし、何も起こせないかもしれません。「なぜこれだけのエルニーニョ現象なのに、暴騰しないのだ!?」と、過去の常識で説明できなくなった相場と対峙(たいじ)し、心が揺れるかもしれません。しかし、それが「今どきの相場」なのです。

 少なくとも次の三つ、(1)周辺材料(株や通貨などとの関係)、(2) 独自材料(従来の変動要因)、(3)これまでにない新しい材料(環境・人権関連など)を俯瞰(ふかん:全体を一望)することが欠かせません。

「有事だけ」「減産だけ」「エルニーニョ現象だけ」が、コモディティ相場を動かす材料ではありません。「過去の常識にとらわれない柔軟な発想が、正しい分析を手繰り寄せる」。筆者はこの言葉に従い、情報配信を行っています。

 こうした考え方に基づけば、「エルニーニョ現象にとらわれない価格上昇シナリオ」を描くことができるようになります。

[参考]コモディティ関連の具体的な銘柄

投資信託

iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド
ダイワ/「RICI(R)」コモディティ・ファンド
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
eMAXISプラス コモディティインデックス
SMTAMコモディティ・オープン

ETF

iPathピュア・ベータ・ブロード・コモディティETN (BCM)
インベスコDB コモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド (DBC)
iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN (DJP)
iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト (GSG)