エルニーニョ現象の発生過程を確認

 規模が大きくなるかどうかは、さまざまな条件(該当水域の熱量など)が関わっていますが、そもそも、エルニーニョ現象はどのような過程を経て発生するのでしょうか。以下は、太平洋の赤道付近、やや東側を示した図です。

図:エルニーニョ現象(通常)と発生時の影響

出所:気象庁の資料をもとに筆者作成

 エルニーニョは、赤で示した海域の海面水温が上昇する現象です。逆に低下する現象がラニーニャです。通常のエルニーニョ現象の際に生じる影響は、春(3~5月)高温、夏(6~8月)低温・多雨、秋(9~11月)低温、冬(12~2月)多雨とされています(日本の場合 気象庁の資料より)。

 以下は、エルニーニョ現象の発生過程をイメージしたものです。赤道付近で東から西に吹いている「貿易風」が弱まると(1)、東南アジア付近に押しとどめられていた温かい海水が太平洋の東側に流れ込み(2)、太平洋の赤道付近の東側の海域の海面水温が上昇してエルニーニョ現象が発生します(3)。

図:エルニーニョ現象の発生過程(主因)

出所:気象庁の資料をもとに筆者作成

「貿易風」の強さを推し測る手掛かりに、「南方振動係数」があります。フランス領ポリネシアに属する「タヒチ」とオーストラリア北部の「ダーウィン」の地上気圧の差を指数化したものです。値がプラス(マイナス)の場合、貿易風が強い(弱い)ことを示します。以下は、南方振動係数と先述のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差です。

図:南方振動係数と先述のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差

出所:気象庁のデータをもとに筆者作成

 グラフ内の期間の相関係数※は、およそ-0.8です。二つの値は逆に動く(片方が上がる(下がる)時、片方が下がる(上がる))傾向があります。足元、南方振動係数が低下しています(グラフ内の赤矢印)。これは東のタヒチ側の気圧が相対的に低下、西側のダーウィン側の気圧が同上昇し、貿易風が弱まっていることを示唆しています。

※相関係数:二つの数値の関係が似通っているかどうかの目安の一つ。+1から-1の間で決定し、+1に近づけば近づくほど同じように動く傾向があり、-1に近づけば近づくほど逆に動く傾向があることを示す。0は全く関わりがないことを意味する。

 貿易風の弱まりは、先ほどの図「エルニーニョ現象の発生過程(主因)」で示したとおり、温かい海水が太平洋の東側に流入するきっかけをつくるため、エルニーニョ現象の主因になり得ます。

 今後、さらに南方振動係数が低下すれば(貿易風が弱まれば)、エルニーニョ現象はさらに目立つと考えられます。同指数は、エルニーニョ現象の動向を考える際のヒントになり得ると考えます。