3 日本製鉄(5401・東証プライム)

 2012年に住友金属と合併して誕生した鉄鋼大手企業です。粗鋼生産は国内で4割強のシェアを占めるほか、世界でも第4位の位置づけとなっています。自動車用鋼板、高級シームレス鋼管、電磁鋼板など高級鋼板に強みを持っています。

 国内に6製鉄所を構えるほか、海外でも15カ国、52社の製造拠点があります。エネルギーロスを低減させる電磁鋼板や自動車の軽量化につながる超ハイテン鋼板など、カーボンニュートラル貢献製品に注力しています。

 2023年3月期は本業のもうけを示す事業利益は9,164億円で前期比2.3%減となっています。在庫評価差の影響が657億円程度マイナスに効いたことで、実力ベースでは440億円の増益となり、過去最高水準となっているようです。鋼材の出荷数量は減少しましたが、円安効果などによるマージン改善、コスト改善が下支えしました。年間配当金は前期比20円増の180円としています。

 一方、2024年3月期事業利益は6,500億円で29.1%減の見通しとしています。原材料価格高騰の反動による在庫評価損益の一段の悪化を見込んでおり、1,500億円のマイナス影響を想定しているようです。これによって、年間配当金も前期比40円減の140円を計画しています。

 2024年3月期は在庫評価損益を除いた実力ベースでは8,000億円以上(同ベースの前期は7,340億円)の事業利益を計画しています。業績の基本的な基調としては拡大方向と捉えることができます。

 また、2024年3月期の配当金140円は最低線とコメントしており、一段の減配の公算は低いと言えるでしょう。配当利回りの水準は今後も株価の下支えとなることが想定されます。足踏みが続いている中国の景気回復が本格化すれば、株価の上振れ要因につながると捉えたいところです。

4 石油資源開発(1662・東証プライム)

 原油や天然ガスなどの開発、採掘、生産、販売を行う資源開発会社です。現在、国内10カ所(北海道・秋田県・山形県・新潟県)の油ガス田で原油・天然ガスを生産しています。海外では5カ所でプロジェクトを遂行中、また、シンガポールを拠点としたLNG(液化天然ガス)の調達なども行っています。

 原油価格の影響度としては、原油1バレルの価格が1ドル下がるごとに3.5億円の純利益マイナス要因、為替の影響度としては、1ドルにつき1円の円高ドル安に動くごとに3.4億円の純利益マイナス要因となるようです。

 2023年3月期経常利益は831億円で前期比90.3%増となっています。原油価格上昇による国産原油の販売価格上昇、輸入LNG価格上昇に伴う国産天然ガスの販売価格上昇などが背景となったほか、前期に発生した一過性のコスト増要因剥落も寄与しました。

 連結配当性向導入に伴い、年間配当金は前期比320円増の370円としています。一方、2024年3月期経常利益は455億円で前期比45.3%減の見通しとしています。原油・天然ガス販売価格の下落がストレートに響くとみています。年間配当金も前期比170円減配の200円を計画しています。 

 2030年度までの中期計画では、現在主力のE&P分野(上流分野)とインフラ分野の利益ウエートを半々にする計画で、市況変動などに耐えうる事業構造への移行を目指す方針です。

 資本政策としては、配当性向30%を継続して投資をより重視する方針ですが、ネットキャッシュの水準が極めて豊富である中、東証のPBR1倍割れ改善要請もあり、一段の株主還元強化に迫られる可能性などもありそうです。

5 デンカ(4061・東証プライム)

 インフルエンザワクチンや新型コロナウイルスの検査試薬などを扱うライフイノベーション部門、リチウムイオンバッテリー向け導電助剤や放熱材料・基板、機能性フィルムなどを扱う電子・先端プロダクツ部門、機能性エラストマーやインフラ強靭(きょうじん)化に必要な特殊混和材などを扱うエラストマー・インフラ・ソーシャルソリューション部門、スチレン系機能樹脂や食品包装用シートなどを扱うポリマーソリューション部門を展開する化学会社です。

 中でも、クロロプレンゴムでは世界シェア40%と推定されています。

 2023年3月期営業利益は323億円で前期比19.4%減になりました。検査キットやワクチンなどの販売数量増、原燃料価格上昇に対応する価格改定効果などはありましたが、増産体制構築や販売体制強化による費用増、販売物流コストの上昇などが響きました。セメント事業撤退に伴う特別損失も発生し、年間配当金は前期比45円減配の100円としています。

 一方、2024年3月期営業利益330億円で2.1%増の見通しです。スマホ・TV・PC・家電向けに電材関連や機能樹脂の下期からの需要回復を見込むほか、クロロプレンゴムも自動車用途での需要回復を想定しています。年間配当金は前期比20円増の120円を計画しています。

 2月には米子会社が司法省から環境関連訴訟を提起されており、5月には樹脂製品の一部において品質不正問題が発覚したほか、さらに、6月には国内で配管破裂事故が発生しています。コンプライアンスに対する懸念を背景に株価は長期的な低迷状態にありますが、ここにきて割安感も台頭し、株価も底打ちの兆しが見られ始めています。

 同社が注目されるのは、クロロプレンゴムをはじめ、球状アルミナ、インフルエンザワクチン・診断キットなど、国内・世界でトップシェアの製品を数多く保有していることです。こうした状況下で、1倍を大きく割り込んでいるPBR水準には割安感が強いと言えます。