<マザーズ指数(左軸)とマザーズ売買代金(右軸)>

5月の中小型株ハイライト

バブル後高値更新の「激強」日経平均と、「普通」過ぎる中小型株

 5月は日経平均株価(だけ?)が絶好調。17日に3万円の大台を突破すると、ショートカバーも誘発しながら上げは加速。33年ぶりとなる高値水準を切り上げ、29日には3万1,560円まで到達しました。

 5月の上昇は、外国人投資家による大規模な日本株買いが背景にありました。その外国人が「なぜ日本株を買ったのか?」がよく議論されていました。ヒントとなるのが、外資系や大手証券会社のレポート。

 機関投資家にヒアリングした内容が書かれているのですが、共通項だったのが東証改革、そしてバフェット氏効果でした。5月下旬でいえば、エヌビディアの超絶決算を受け、日本でもアドバンテストや東京エレクトロンなど値がさハイテク株が強烈上昇。生成AIバブルも日経平均のカタリストとなりました。

 それでいえば、(流動性や時価総額の問題で)中小型株はそもそも外国人買いの枠ではない銘柄が多いこと、自社株買いや増配など株主還元強化に期待できる企業が少ないこと、半導体株がほぼ無いこと―などから蚊帳の外に置かれるのは仕方なかったのかもしれません。

 5月の月間騰落率は、日経平均の+7.0%に対し、東証マザーズ指数は+0.4%、東証スタンダード市場指数は+0.2%での着地でした。「本当に同じ日本株?」と首を傾げるようなパフォーマンス差に…。

日経平均の上昇が個人のセンチメントを冷やす?

 日経平均が大きく上昇する局面で、動きを助長するとされるのが、日経平均ダブルインバースETF(上場投資信託)(以下Dインバ)など日経平均の下落に賭けたベア型ポジションの存在です。株価が下がったら買う、上がったら売るの「逆張り」スタンスでお金を出し入れするのが日本の個人投資家。

 日経平均が上がると「売る」なのですが、日経平均をショートする形のDインバを買う投資家が日に日に増えていきます。Dインバの発行済み口数が26日、過去最高となる10億口を突破したことが話題となりました。

 日経平均レバレッジETFの空売り(信用売り残)も増え、可視化されているポジション的に個人投資家は「日経平均の下落を願っている」状態が確認できました。

 このポジションだけ見れば、本来は喜ばしいはずの日経平均上昇が含み損拡大につながり、センチメントを悪化させていたとも理解できます。日経平均ばかり上がった…この地合いが個人投資家主体の中小型株にネガティブとなったという論調に説得力を持つように思われます。

「強い決算」と認められた銘柄は?

 怒涛の外国人買いで大きく上昇する日経平均、大型株をよそに、市場全体としては月間横ばいに終わった中小型株指数。日経平均をアンダーパフォームする銘柄が続出したことで、「いろいろ考えて銘柄を選ぶより、何も考えず日経平均を買うのが勝ち」そんな5月相場でした。

 それでいえば、この時期は決算発表の集中シーズン。大量の決算短信を開いて決算チェックしたとか、決算説明資料を多く読み込んだとか、「そんな努力が無駄に終わる」なんて嘆き節も聞かれる始末。「日経平均を買ったもん勝ち」なんて地合いでしたが…。

東証スタンダード、グロースの5月上昇率上位(好決算で↑)

コード 市場 銘柄名 5月上昇率
8890 スタンダード レーサム 123%
4264 グロース セキュア 116%
2304 スタンダード CSSHD 81%
3652 グロース DMP 77%
9341 グロース GENOVA 65%
2334 グロース イオレ 63%
4258 グロース 網 屋 63%
4772 グロース ストリームメディア 62%
4335 スタンダード IPS 58%
4381 グロース ビープラッツ 56%

 そんな5月にも、大きく上昇した中小型株がありました。スタンダード市場、グロース市場の5月上昇率が高い銘柄で、決算のポジティブサプライズを手掛かりに動意付いた主な銘柄を挙げてみました。

 第1四半期の営業損益が前年同期の5.7倍となったセキュア(4264)や、今期ガイダンスの大幅増収増益で上場来高値をぶち抜いたGENOVA(9341)などが強い決算で人気化しました。