中国政府にとっての優先事項は、コロナ感染拡大防止よりも景気の回復

 習近平(シー・ジンピン)総書記率いる共産党指導部、李強(リー・チャン)首相率いる政府首脳部が、昨今の新型コロナ第2波の到来をどう認識しているかを把握する上で、参考になるのが、党や政府が定期的に開催する重要会議です。この問題が議題になっているか、その中で現状認識や対策がどう描写されているかに注目することが大切です。

 参考までに、李首相が主催する国務院常務会議の直近の議題を整理してみます。

日時 議題
4月7日 対外貿易の安定化と最適化の推進
4月14日 雇用安定に向けた政策の調整と最適化
5月5日 ハイテク製造業の推進/充電インフラ建設加速/新エネルギー車の農村普及
5月19日 全国統一大市場の構築/医療保障基金使用の常態化
国務院の発表を基に筆者作成

 この一覧表からも伺えるように、4月から5月にかけて、中央政府(内閣)である国務院が、新型コロナ第2波の到来への対処を政策の優先事項に据えた形跡は見られません。また、私が把握する限り、習氏や李氏が公の場で第2波の到来にどう備えるかに関して言及、説明した経緯もありません。国家の責任者として、当然現状は把握しているでしょうが、それを本人たちがどう言語化し、発信していくかは全く別問題です。

 習氏や李氏がこの問題について発言するということは、中国共産党、政府としてそれだけ深刻に捉え、現状を懸念しているという、言ってみれば1種の「弱み」を露呈してしまうことになります。そうはせずに、現状を実質「スルー」しているというのは、私たちが中国の現状を理解する上で極めて重要なシグナルになります。

 要するに、少なくとも現時点においては、党・政府指導部として特別に対処する必要はない、「ゼロコロナ」策を再び持ち出すこともしない、ということです。それよりも、足元の最重要課題は、4月の経済指標が軒並み市場予想を下回り、深刻な需要不足が悩ましい景気の回復と促進にどう向き合うか、です。先にあげた会議の議題にも、李首相のこうした立場が如実に体現されていると考えます。

 2022年4-6月期の実質GDP(国内総生産)は、上海市におけるロックダウンなどの影響を受け、前年同期比0.4%増と低迷しました。この反動で、2023年4-6月期はどのくらい回復できるか。足元の経済動向は、2023年の中国経済を占う重要な試金石となります。