3 蝶理(8014・東証プライム)

 創業160余年の老舗の繊維商社で、現在は東レの子会社となっています。繊維素材などの川上から車両資材やアパレルなどの川下にまで幅広く展開する繊維事業、ウレタンなどの基礎化学品、ディスプレイ用ガラス基板原料などの化学品事業が二本柱となります。

 リチウムイオン電池向け材料では、チリ・リチウム化合物製造プロジェクトに参画しています。1961年に日中友好商社第1号の指定を受けるなど中国事業に強み、強力なサプライチェーン(供給網)を構築しています。

 2023年3月期営業利益は126億円で前期比35.7%増となっています。原材料上昇に対する価格転嫁が進んだほか、国内衣料品市場の需要回復で繊維事業が大幅増益となり、貿易取引の拡大で化学品事業も伸長しています。

 年間配当金は前期比21円増の105円です。2024年3月期営業利益は142億円で12.2%増の見通しです。売上の着実な増加を見込むほか、機械事業における貸倒引当金計上の一巡なども想定されます。年間配当金は前期比11円増の116円を計画しています。

 2022年3月期に営業利益は前期の約2.5倍となり急回復しました。貸倒引当金計上が一巡したほか、化学品市況の回復、ならびに、繊維事業のM&A(合併と買収)効果なども寄与しました。今回発表した新中期経営計画では、2026年3月期経常利益160億円(2023年3月期は124億円)を計画しています。

 海外現地法人の収益水準拡大、さらなるM&A効果などが主なけん引役になるとみているようです。なお、上場企業の東レの子会社となっていることで、今後も親子上場解消への思惑は続くとみられます。

4 ジャックス(8584・東証プライム)

 三菱UFJフィナンシャル・グループの大手信販会社です。いち早くキャッシングの上限金利を利息制限法内の18%以下に引き下げるなど堅実経営。

 ショッピングクレジットやオートローンなどのクレジット事業、クレジットカードや決済・家賃保証サービスなどのカード・ペイメント事業、住宅ローンなどのファイナンス事業、東南アジア4カ国で展開する海外事業を行っています。投資用マンション向け住宅ローン保証が成長、業界トップシェアとなっています。

 2023年3月期営業利益は316億円で前期比18.5%増となっています。オートローン、住宅ローン、海外事業などがけん引して営業収益が増加し、貸倒関連費用の減少も寄与しました。年間配当金は前期比30円増の190円としています。

 2024年3月期営業利益は335億円で5.7%増の見通しです。主にオートローン事業の利益拡大を想定しているようです。また、海外事業もインドネシア中心に順調な拡大を見込んでいます。年間配当金は前期比10円増の200円を計画しています。

 2022年3月期にかけて収益は大きく拡大、同期の営業増益率は63.8%増となっています。住宅ローン事業やファイナンス事業の売上成長、海外事業における貸倒引当金の減少が主因です。足元では経済活動が一段と正常化の方向に向かっており、カードショッピングやキャッシング、決済需要の増加が見込まれます。

 2022年には、中国の電気自動車メーカー日本法人BYD Auto Japanと業務提携契約締結で合意しており、BYD社の国内EV販売の展開力なども今後の注目材料となります。

5 愛三工業(7283・東証プライム)

 トヨタ自動車系の自動車部品メーカーで、トヨタグループ向けが6割強を占めています。燃料ポンプモジュールが主力で、吸排気系製品や排出ガス制御系製品なども手掛けています。所在地別業績では、中国や東南アジア向けが収益源となっています。

 2022年9月、デンソーから燃料ポンプなどのフューエルポンプモジュール事業を譲受しています。クリーンエネルギー向け製品としては、水素供給ユニット、FCV(燃料電池自動車)用エアバルブ、電動ウォーターポンプなどを手掛けています。

 2023年3月期営業利益は136億円で前期比39.0%増となっています。自動車生産回復による販売数量増加、為替の円安効果などが寄与しました。年間配当金は前期比6円増の35円としています。2024年3月期営業利益は140億円で2.7%増の見通しです。

 燃料ポンプモジュールの事業譲受が通期寄与するほか、原価低減努力や生産性の向上など収益改善策の効果を見込んでいます。年間配当金は前期比5円増の40円を計画しています。

 営業利益は2022年3月期が前期の約2倍、2023年3月期が39.0%増と、急速に高まってきています。固定費の圧縮を進めた中での需要回復による増収効果が強く反映される状況となっています。

 足元0.5倍台にとどまるPBR水準の是正に向けて、今後は、電池ケースやカバー、DC-DCコンバータ(電圧変換器)など電動化製品への取り組みの加速化が必要となります。トヨタグループとの連携などによる取り組みの進捗(しんちょく)が期待材料となってくるでしょう。