足元で収益成長強まる高配当利回り銘柄5選(日本特殊陶業、いすゞ自動車、蝶理、ジャックス、愛三工業)

 決算発表が一巡したばかりのタイミングであり、当面は足元の業績動向への関心が強まりやすいとみられることから、今回は、収益の成長性が高まっている高配当利回り銘柄をスクリーニングしています。

 過去5年間での成長率が高い銘柄の中で、今期が増益予想かつ、過去最高益更新見通しの銘柄をピックアップしています。グロース要素もある高配当利回り銘柄と位置付けられるでしょう。最近は配当計画に配当性向を基準とする企業が多くなっており、収益成長が高いということはその分、増配余地が大きいと期待できます。妙味が強い配当利回り株投資と判断できます。

(表)利益成長率高く過去最高益の高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り
(%)
5月19日終値
(円)
時価総額
(億円)
成長率
(%)
5334 日本特殊陶業 5.07 2,623.0 5,355 10.46
7202 いすゞ自動車 4.69 1,706.0 13,263 8.02
8014 蝶理 4.37 2,657.0 672 12.03
8584 ジャックス 4.31 4,645.0 1,629 8.40
7283 愛三工業 4.04 990.0 624 11.22
(注)成長率は営業利益の過去5年間年平均増加率(今期予想含む)

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが4.0%以上(5月19日終値)
  2. 時価総額が500億円以上
  3. 過去5年間の営業利益平均年成長率が8%以上
  4. 2023年3月期、2024年3月期見通しともに営業増益
  5. 過去最高益更新見込み
  6. 3月期本決算

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 日本特殊陶業(5334・東証プライム)

 世界最大級のセラミックス企業グループと位置付けられる森村グループの一員。自動車部品では、スパークプラグで世界シェア45%、センサで同40%のシェアを占めています。ほか、半導体用のセラミック製品なども手掛けていますが、自動車部品が利益の大半を占めます。

 海外売上高比率が8割超ありますが、相対的に中国依存度は低く、北米や欧州構成比が高くなっています。スパークプラグは補修用のウエートが高いため、比較的収益水準は安定しています。

 2023年3月期営業利益は892億円で前期比18.2%増となりました。半導体不足解消に伴い、プラグやセンサなど主力の自動車関連事業が伸長したほか、半導体製造装置用部品としてセラミックの収益増加も貢献しました。年間配当金は前期比64円増の166円としています。

 また、2024年3月期営業利益は965億円で8.2%増の見通しとしています。自動車生産の回復による新車組付け用製品の売上増加、製品価格改定効果などを見込んでいるようです。配当性向40%の基本方針に沿って、年間配当金は133円を計画しています。

 2022年3月期営業利益が前期比59.3%増、2023年3月期が18.2%増と、ここ2年間で収益が大きく拡大する形になっています。半導体製造装置向けセラミックの収益拡大が背景となります。

 2024年3月期は半導体市況悪化の影響が想定されますが、一方で、主力の自動車関連分野の市場環境が一段と好転するため、利益の拡大傾向は継続する見通しです。PBR水準も1倍を割り込んでおり、自社株買いや増配などの株主還元強化も期待できるでしょう。

2 いすゞ自動車(7202・東証プライム)

 国内トラック大手の一角で、普通トラックのシェアは3割強の水準とみられています。タイを中心とした新興国の構成比が高く、タイや中東、アフリカにおいても高いシェアを誇っています。また、ピックアップトラックも手掛け、タイで集中生産を行っています。

 150カ国以上で事業展開を行っており、年間販売台数は77万台に上ります。2020年10月に、ボルボ・グループと戦略的提携を締結し、2021年にはボルボ傘下のUDトラックスを連結子会社化しています。

 2023年3月期営業利益は2,535億円で前期比35.4%増となっています。国内ではトラックの販売シェア上昇がみられました。海外でも主力のタイが、部品不足の改善などによって販売を拡大させています。為替の円安効果も寄与しました。

 年間配当金は前期比13円増の79円となります。2024年3月期営業利益は2,600億円で2.6%増の見通しです。インフレの影響によるアジアでの販売減少を見込む一方、半導体不足の改善によって国内および北米向けの増加を見込んでいます。年間配当金は前期比1円増の80円を計画しています。

 新型コロナウイルス禍で一時業績は低迷しましたが、2022年3月期営業利益は前期比95.5%増と急回復、2023年3月期も同35.4%増と高い利益成長が継続しています。海外販売の拡大が大きく貢献する形となっています。

 カーボンニュートラルと物流DXを加速するため、2030年までに総額1兆円規模のイノベーション投資を実行し、企業価値の向上につなげる方針です。また、ROE(自己資本利益率)12.5%の達成に向けて、自社株買い実施などの期待も持てます。