7:「利益予想の変化」と株価の反応をできるだけ多く観察する
また、株価は、将来の利益を現在価値で評価したものだと考えたらいいが、投資家が持つ「将来の利益」の予想に最も影響を与える情報は、会社ないし、証券アナリストが予想する利益(今期または来期の利益)の変化だ。この場合、利益の実績値に対して予想利益を見るのではなく、例えば今期決算(典型的には次の3月期)の「これまでの予想利益」と「新しく発表された予想利益」の差が、情報としてインパクトのある部分だ。この予想利益の差に対して、株価がどう反応するかを出来るだけたくさん見ておこう。
株価はあくまでも「予想」に対して形成される。過去を分析するには、実績値に置き換わった情報ではなく、「古い予想」が必要だ。「東洋経済会社四季報」のような予想利益の数字が載っている資料は、ある程度(最低2年分は)手元に置いておく方がいい。CD-ROM版だと、4期分のデータが入っているので便利だ。
株式投資にあっても、具体例をたくさん見ておかなければ、物事の理解自体が進まない。手始めに、「PER」と「予想利益の変化」を手掛かりとして、自分が考えるための素材になる経験・データを増やすといい。
言っても無駄だとは思うが、やってみて儲かったからあなたが「上手い」というわけでもないし、損したから「下手だ」というわけでもない。結果について解釈する際には、それが「単なる運」によるものである可能性を常に念頭に置いて、冷静に判断材料を増やすのがいい。
後は、読者の幸運を祈る。
株式投資の世界へ、ようこそ!
【コメント】
2度目の再掲載となる。残念ながら多数派ではないだろうが、2024年から始まる新NISAの成長投資枠で個別株投資にチャレンジしようと考えている読者がおられよう。但し、個人が個別株投資で「趣味」と「効率的な資産形成」を両立することは、簡単ではない。しかし、だからこそ奥の深い趣味ともなり得るとも言える。個別株投資を効率的な資産形成と両立させるために重要なのは、銘柄の選び方でも、売買タイミングの判断でもない。一番に大事なのは、有効な分散投資を行うことだ。世間の株式投資入門書は、殆ど全てがこのポイントを外したクズ本である。一方、個人投資家に無難な分散投資ポートフォリオを持つように案内することは簡単ではなかった。拙稿は、これを何とか達成しようとして書いたものなので、内容は古いが、考え方を知って頂くには好都合だろう。個人の個別株投資の詳しい方法については「マンガでわかる 世界でただひとつの株式投資入門」(山崎元著、飛永宏之画、講談社)に書いた。尚、楽天証券では、4月から約500銘柄を対象に1株単位で売買を可能にするサービスが始まっている(対象銘柄は順次拡大中)。個人の「まともな株式運用」のための環境が整いつつある。(2023年5月23日 山崎元)