5月1日:ファースト・リパブリック・バンク破綻、米銀で過去2番目の規模

 信用不安で預金流出が止まらず、株価が急落していたファースト・リパブリック・バンクが5月1日、経営破綻しました。米銀で過去2番目の規模の破綻です。JPモルガン・チェースが同行の預金と資産の買収を発表したため、動揺の拡大は抑えられましたが、米国の銀行不安が簡単には終わらないことがわかりました。

 3月10日にシリコンバレー銀行、3月12日にシグネチャー銀行の破綻で高まった米地方銀行の信用不安は、米金融当局が預金の全額保護を発表したために、一時収束しつつありました。

 ところが、ファースト・リパブリック・バンクの破綻によって、再び銀行不安が高まりました。5月2日から4日にかけて、次の破綻候補を探す動きが株式市場に広がりました。財務の弱い地方銀行をねらって空売りをしかけて株価を急落させる動きが広がり、パック・ウエスト、ファースト・ホライゾン、ウエスタン・アライアンスなどの株価が急落しました。

 ただし、空売り残高が急増する中、金融当局が空売りの実態を調査するとの思惑が広がると、5月5日は一転して地方銀行株が急反発しました。空売り勢の一部に買い戻しが広がりました。

 地方銀行株の急反発で安心感が広がり、5月1日から4日にかけて下落していたダウ工業株30種平均、ナスダックは5日に急反発しました。

 ただし、これで米銀の信用不安が収束すると考えるのは早計です。低金利下で放漫経営におちいっていた地方銀行の財務悪化は根が深く、簡単には解決しません。

 米地方銀行の財務悪化が生じている要因は二つあります。

 一つはFRB(米連邦準備制度理事会)による急激な利上げ。これで、保有債券に巨額の含み損が発生しています。

 もう一つは、米オフィス市況の下落です。金余りで貸出先が不足していた米地方銀行は、オフィスローンの残高を軒並み拡大させていたため、オフィス市況の下落で、不良債権が増加しつつあります。

 米国では在宅勤務の普及で都市部の空洞化が進み、オフィス需給が悪化しています。リオープンが進んでも、その傾向に変化はありません。例えばニューヨークで、オフィス街のミッドタウンはリオープンで米景気が活況を取り戻しても閑散としたままです。いずれ、オフィスの解約が進む可能性もあります。

 バフェット氏も、こうした米国の現状に懸念を抱いていると考えられます。