4月雇用統計の予想 

 BLS(米労働省労働統計局)は、5月5日に4月の雇用統計を発表します。市場予想によると、NFP(非農業部門雇用者数)の増加は+17.8万人。3月の+23.6万人、3カ月平均の+35.5万人よりも伸びは鈍化しそうです。20.0万人割れとなれば、2021年1月以来の低水準となります。

3月雇用統計のレビュー

 BLSが4月7日に発表した3月の雇用統計は、NFPが23.6万人増えて、予想(24.0万人)とほぼ一致しました。ヘルスケアやレジャー部門をはじめとした広範囲の業種で雇用が旺盛で、引き続き堅調な結果となりました。

 失業率は、過去50年間で最も低い水準の3.5%で、米国の雇用市場では働きたい人がほぼ全員仕事に就くことができる「完全雇用」に達しているといわれます。

 平均労働賃金は、前月比+0.3%、前年比+4.2%でした。平均労働賃金の前年比は、2022年3月の5.6%をピークとして緩やかな下降傾向が続いています。

労働力不足、解消に向かう

 3月は、19歳以上の米国人口のうち働く意欲がある人の割合を示す「労働参加率」が62.6%と、前月より0.1ポイント上昇しました。

 0.1%の労働参加率の上昇は、労働力供給が約40.0万人増えることを意味します。雇用統計のNFPより多くの人が働く意思を持っていることを示しています。労働力の供給不足問題が解消に向かうことで、賃金上昇率が緩やかになりディスインフレ(物価上昇率低下)が進む期待があります。

 また3月のJOLTS(雇用動態調査)求人件数は、63.2万件減の990万件に急減しています。2021年5月以来約2年ぶりの低水準で、市場予想の1,040万件を大きく下回りました。JOLTS求人件数は、米国の労働市場の需給状況を示す指標で、減少は労働市場の需給状況の緩和を示しています。

 ただJOLTS求人件数の減少は、転職者の減少を反映したもので、仕事の減少を意味しているわけではありません。新型コロナ流行後、一時的に失業した米国人労働者の多くは以前の職場に戻らず、高給料や好待遇を求めて転職していきました。これが求人数の増加となっていたのです。転職ブームが落ち着くことで、賃金上昇も鈍化に向かうことが期待されます。

労働不足解消、だけじゃないんで!NFPは「マイナス」へ

 雇用統計は市場関係者ばかりではなく、FRB(米連邦準備制度理事会)も注目する重要な指標ですが、予想と結果のズレが大きいことでも有名です。2023年の雇用統計の「予想」と「結果」を比べてみると、

1月のNFPは、予想+19.0万人に対して、結果は+51.7万人、
2月のNFPは、予想+20.0万人に対して、結果は+31.1万人、
3月のNFPは、予想+24.0万人に対して、結果は+23.6万人となっています。

 これだけ大きな誤差が発生する原因としては、政府予算の縮小でデータ収集量が少なくなっていることや、新型コロナ後の経済の急激な構造変化で従来の季節調整が機能しなくなったことがあります。

 誤差の大きさとは別に、一般的に経済活動が鈍るとされる1月や2月の雇用者は予想を大きく上回る30万人以上も増加したことはサプライズでした。この数字は、パウエルFRB議長がインフレ抑制のために適正と考える約10万人をはるかに上回っています。

 しかし冬場の増加の大反動は、これから春にやってくるとの予想が増えています。2016年は、1-2月の平均+21.0万人が、4-5月は平均+7.0万人に急減しているのですが、今年も同じようなパターンを描くというのです。

 雇用者数は4月から6月に10万人台まで減り、さらに、夏以降はマイナスに落ち込む可能性があります。そうなった場合、FOMC(米連邦公開市場委員会)は9月の会合で「利下げ」に踏み切ることになりそうです。

[参考] ヒストリカル・データ