3 ENEOSホールディングス(5020・東証プライム)

 石油元売りの国内トップ企業で、国内シェアは約5割となっています。また、世界9カ国で石油や天然ガスの探鉱・開発・生産を展開しているほか、銅(鉱山権益量年間約20万トン)などの金属事業も手掛けています。

 原油相場の水準によって在庫の評価損益の変動が大きく、株価は原油相場との連動性が強い傾向があります。配当利回り水準が高いだけでなく、PER(株価収益率)やPBRでみても株価の割安感が強いといえる銘柄です。

 2023年3月期第3四半期累計営業利益は2,497億円で前年同期比52.9%減となっています。油価下落によるマージンの悪化などエネルギー事業が大幅減益となったほか、在庫評価益の減少も1,784億円影響しました。

 第3四半期決算発表時には通期予想を下方修正、営業利益は5,600億円から前期比59.3%減の3,200億円に引き下げています。2,400億円減額のうち、1,200億円は在庫の影響によるものです。なお、年間配当金は前期比横ばいの22円を引き続き計画しています。

 2022年度を最終年度とする中期計画では、還元方針として、配当は年間22円を下回らない水準とすること、3カ年トータルでの総還元性向は在庫影響を除いた当期利益の50%以上とすることとしています。

 2023年度からスタートする新中計において、還元方針がどのように変化するのか注目されるところです。現状のコンセンサスでは、当面は22円配当が据え置かれるとの見方が強いようです。なお、中長期で期待される事業分野としては「水素」が挙げられるでしょう。

4 アイシン(7259・東証プライム)

 トヨタ自動車系列の自動車部品大手企業です。トランスミッションやエンジン周り部品などのパワートレイン領域、ブレーキやステアリングなどの走行安全領域、ドアやシートなど車体領域、カーナビやセンサーなど情報・電子に至るまで幅広く扱っています。

 海外開発拠点は21社、先端研究機関は国内外で8拠点あります。2019年には、電動化の普及に向けた駆動モジュール開発・販売へ向けデンソーと合弁会社を設立しています。2021年4月にアイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュが合併しています。

 2023年3月期第3四半期累計営業利益は270億円で前年同期比80.5%減となっています。自動車生産台数の減少に加えて、原材料価格や輸送費の高騰などが響いています。第3四半期決算時には通期予想を下方修正、営業利益は従来の1,900億円から前期比50.6%減の900億円に引き下げています。ここまでの販売状況を反映したものとみられます。

 年間配当金は、上半期末70円に対して期末は未定としています。市場コンセンサスでは160円(期末90円)程度とみられているようです。

 会社側では連結配当性向30%レベルを目安としているようです。2023年3月期は同水準を上回る可能性もありますが、2024年3月期は業績回復が見込めるため、今後の減配リスクなどは小さいでしょう。自動車関連業界に関しては、生産の正常化に伴って2024年3月期の業績安心感が相対的に強いと判断され、買い安心感は強いと言えます。

 今後、電気自動車(EV)での活躍期待が高まるに従い、デンソー(PBR1.3倍)とのPBR格差も縮小していく余地があるでしょう。EV 向けにモーターやギアなど部品をひとまとめにしたコア部品「e-Axle」やガソリン車の燃費に当たる電力消費率を高められる「回生協調ブレーキ」などといった電動車関連製品の新規拡販進展に注目したいところです。

5 椿本チエイン(6371・東証プライム)

 産業用スチールチェーンと自動車エンジン用タイミングチェーンで世界シェアトップとなっています。シェアは前者で15%、後者で37%程度とみられています。世界最小、最大チェーンを扱っているほか、引っ張り強さ世界一のチェーンなど、同分野では高い技術力を誇っています。

 チェーンのほか、搬送・保管システムを扱うマテハン事業も手掛けています。電気自動車が持つ大容量バッテリーと、建物や電力網を、双方向につなぐV2X対応充放電装置なども、新規ビジネスとして扱っています。

 2023年3月期第3四半期累計営業利益は137億円で前年同期比6.0%増となっています。産業用、自動車用チェーンの販売が伸びましたが、エネルギーや原材料価格の上昇が響いたほか、マテハン事業における採算悪化や先行投資負担も影響しました。

 第3四半期決算発表時に通期予想は下方修正、営業利益は200億円から前期比1.9%減の175億円に下方修正しています。マテハン事業の下方修正幅が大きくなっています。一方、年間配当金は前期比10円増の130円計画を据え置いています。

 株主還元として配当性向30%を基準とするとしています。2024年3月期は、とりわけ自動車関連分野の拡大が期待できることで、業績の伸長、それに伴う増配の可能性もあるでしょう。

 自動車の電動化加速により、自動車用チェーン事業の先行きが懸念されるため、PBRは0.6倍台と低位に放置されています。電動化に伴う新規分野での新製品創出、拡販などが進めば、割安水準の是正につながっていくものと考えられます。