為替DI:4月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。

「ドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券がドル/円相場の先行きについて個人投資家にアンケート調査を実施したところ、4月は「円高/ドル安」との見方が大幅に増え、全体の66%を占めました。前回3月は29%。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 4月は円安が多数派となりました。円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から74ポイント減少して▲32。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

SNS時代の金融危機

 クレディ・スイスが引き起こした「今、そこにある金融危機」は、スイスFINMA(金融市場監督機構)指導のもとUBSが救済合併することによって回避されたかに見えます。しかし本当の危機はこれからでしょう。

 クレディ・スイスは、スイスのGDP(国内総生産)の7割以上の資産を持つ欧州最大級の金融コングロマリットでした。

 しかし、近年の同社は悪いニュースばかりで、米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントや英投資会社グリーンシル・キャピタルとの取引失敗では、80億ドル(約1兆1,000億円)以上もの巨額損失を被っています。損失の合計額は同社の年間収益の2.5倍以上に相当し、信用力に大きな打撃を与えました。

 米国でシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が破綻した時、両行と密接な取引関係にあったクレディ・スイスの経営不安のうわさがSNSなどを通じて瞬く間に広がり、同社の株価は暴落しました。説明会見を開いた時にはもう手遅れの状態でした。

 クレディ・スイスが発行した「AT1債」約160億スイスフラン(約2.2兆円)分は「紙くず」になってしまいました。AT1債とは、金融危機の後に登場した新しいタイプの社債の一種で、高い利回りを得られる半面、発行銀行が破綻した場合の弁済順位が低いハイリスク・ハイリターンの商品。

 クレディ・スイスのAT1債は、銀行が破綻して公的支援が実施された場合に価値がゼロになるという条件がついていました。低金利で資金運用に苦しむ日本の地方銀行や投資家もこのAT1債を購入しています。リーマンショックの時も特定の債券の焦げ付きから金融不安が一気に広がったように、今年の秋に世界的な危機が勃発するリスクはむしろ高まっています。

 クレディ・スイスの経営破綻は、欧州の銀行セクター全体というよりも、同社のビジネスモデルの失敗だったいわれます。とはいえ、クレディ・スイスはグローバルにビジネスを展開しているため、金融市場全体に深刻な影響が広がるリスクがあります。

 現在の金融不安と15年前との大きな違いは、情報がネットを通じて瞬く間に世界中に拡散することです。しかも悪いニュースほど速く増幅されて伝わります。BOE(イングランド銀行)は、SNS時代における銀行問題の対応にスピードアップが必要だと警告しています。

 先月のシリコンバレー銀行の破綻は、FRBの利上げの影響がはっきりと経済に表れた最初のケースだといえます。1年間で4.00%も利上げした副作用が予想を超える強さで、FRBは利上げをやめるしかないとの予想も増えています。

 米投資銀行のベア・スターンズが破綻したのは、今から15年前の2008年3月のことでした。ベア・スターンズ事件は、リーマンショックに連なるGFC(世界金融危機=Global Financial Crisis)の幕開けとなりました。

 中央銀行は、インフレ対策を続行するべきなのか、それとも銀行救済のために利上げを中止した方が良いでしょうか。FRBもECB(欧州中央銀行)も、インフレの強さと,金融システムの脆弱(ぜいじゃく)さという問題で板挟みになっています。(日本銀行はインフレ対策に無関心ですが、長期間の緩和政策のせいで、金融危機の対策も用意できていません。)

 米国経済は過熱状態が続いています。インフレ率はFRBの目標値の3倍で高止まっているし、労働市場ではわずか2カ月で80万人の新規雇用が生み出されています。欧州も経済データは堅調で、インフレ率も高水準で推移しています。

 一方で金融部門の問題も心配です。クレディ・スイスの経営破綻による世界金融危機はいったん回避されたようですが、まだ安心はできません。次の危機が発生するリスクはこれまでになく高まっています。

 しかし,マクロ的見地からすれば、中央銀行はさらに利上げする必要があります。FRBの仕事はポートフォリオ運用に失敗した銀行に逃げ道を用意することではありません。たとえマーケットから一時的に不興を買ったとしても、中央銀行は幅広く経済を見渡す使命があります。

ユーロ/円

 楽天証券がユーロ/円相場の先行きについて個人投資家にアンケート調査を実施したところ、4月は「円高/ユーロ安」との見方が全体の65%を占めました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 4月は円高(ユーロ安)が多数派となりました。円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から68ポイント減少して▲30。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

豪ドル/円

豪ドル/円相場の4月は「円高/豪ドル安」との見方が全体の61%を占めました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 4月は円高(豪ドル安)が多数派となりました。円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から63ポイント減少して▲23。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「国内株式」と「外国株式」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり、13個です。(複数選択可)

図:「国内株式」「外国株式」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2023年3月の調査では、「国内株式」を選択した人の割合は62.93%、「外国株式」は40.67%でした。2022年2月のウクライナ危機勃発以降、「国内株式」は反発、「外国株式」は反落しています。

「国内株式」が反発している理由は三つあると、考えられます。(1)米国株の動向が不安定化していること、(2)国内の独自材料を受けて株価が反発する期待が浮上していること、(3)もともと50%という「国内株式」にとっての最低ラインにあったこと、です。

(1)米国株の動向が不安定化している時に、「国内株式」が反発しやすくなるのは、国内株式が不安定化している米国株の受け皿(代替)になると目されるためです。(2)国内の独自材料を受けて株価が反発する期待が浮上している時に、「国内株式」が反発しやすくなるのは、外国人観光客の増加・景気回復期待などを背景に国内の株式市場に期待が膨らむためです。

(3)もともと50%という「国内株式」にとっての最低ラインにあったことで、「国内株式」が反発しやすくなるのは、当該アンケートの回答者の傾向として「国内株式」を選択する人の割合が「50%」を割りにくい傾向がある(50%付近まで低下すると逆に反発しやすくなる傾向がある)ためです。

 現在の状態は「米国株ブーム」によって「外国株式」にもたらされていたアドバンテージの一部が、はげ落ちつつあることを示唆しています。

 今後、「国内株式」がさらに反発するか、それとも「外国株式」が反発するか、注目していきたいと思います。大きなポイントは「米国株の動向」だと、考えます。

表:今後、投資してみたい金融商品 2023年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2023年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成