長期的なスタグフレーションかデフレ不況のどちらかになるだろう

 イエレンは2017年6月に、「私の目の黒いうちは、金融危機は起こらない」と豪語した。筆者のメルマガでは、Jim Quinn(ジム・クイン)の『IS THE U.S. BANKING SYSTEM SAFE? – 15 YEARS LATER』というコラムを取り上げたが、彼は、「銀行のCEOや政府のトップが「大丈夫だ」と言うのを見たら、丘の上に逃げて欲しい。彼らは嘘をついている。彼らはこの事態を予見していなかったし、どのような結末を迎えるのか見当もついていない」と、述べている。

 ジム・クインの言うように、私たちは、次の世界金融危機の始まりにいるのであって、終わりではない。フォース・ターニング(第四の節目・危機の時代)は消え去ることはない。混乱と戦争のクレッシェンドへと発展していくのだ。この金融危機は、昨年から手招きされている軍事衝突の到来を告げるものだ。今こそ、腰を据えて、来るべき嵐に備える時である。

 レイ・ダリオは、シリコンバレー銀行の破綻は「炭鉱のカナリアだ」と述べ、「初期的な兆候を示しているこの動きはベンチャー界のみならず、より広い世界に波及効果を及ぼすだろう。この銀行の破綻に続いて、もっと多くの問題が顕在化する可能性が高い。縮小はサイクルが一巡するまで続く。今はターニングポイントに近づいている」と警鐘を鳴らしている。

 ロバート・スタークは、『経済的死のスパイラル』というコラムの中で次のように述べている。

 これは、インフレ、スタグフレーション、景気後退、潜在的な債務危機、さらにエネルギーやサプライチェーンの問題など、完璧な嵐である。

 すべてのバブルを終わらせるバブル、あるいは大きすぎて潰せないステロイドのようなバブルで、FRBには2つの選択肢がある。資金供給量を減らして流動性危機を引き起こすか、インフレを引き起こすかだ。

 利上げはこの2つの選択肢の中で最も悪いように見えるが、QEが復活すれば、これ以上の利上げは無駄である。QEと金利のコンボは、ピーター・シフが警告した、インフレによる金融崩壊のシナリオにつながるものだ。

 しかし、ほとんどの場合、長期的なスタグフレーションかデフレ不況のどちらかになるだろう。これは誇張でもクリックベイト(虚偽・誇大広告)でもなく、恐慌は非常に現実的な可能性である。

出所:『経済的死のスパイラル』 3月21日 ゼロヘッジ

 1971年、ニクソンの金ドル兌換(だかん)停止のとき、世界の債務は4兆ドルだった。ゴールドの裏付けがないため、無制限にお金を刷ることができるようになったのである。大金融危機が始まった2006年には、世界の債務は120兆ドルに達していた。2021年には、1971年の75倍の300兆ドルにまで膨れ上がっている。

2025年から2030年の間に世界の債務が3,000兆ドルに達する!?

出所:GoldSwitzerland

 年金制度は、銀行と同じ長期国債を大量に購入し、巨額の損失を抱えている。年金制度も問題を抱え、債務を履行できなくなったという話を聞くのも時間の問題かもしれない。

 上のチャートでは、2025年から2030年の間に世界の債務がなんと3,000兆ドルに達するという予測となっている。これは、シャドウバンキング(影の銀行)システムと、現在おそらく約2,000兆ドルの未払いのデリバティブを、中央銀行が大量の紙幣印刷で対処する必要があることを前提としているという。

 FRBがコントロールを失うことで、アメリカ帝国は金利を支払う余裕すらなく、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性がある。いずれにせよ、全ての帝国は財政破綻して終わりを迎える。

帝国のビッグサイクル

出所:レイ・ダリオ(リンクトイン)