2023年の目標は生き残ること(サバイバル)
ウォーレン・バフェットがバイデン政権の高官らと銀行危機について協議したことが、3月18日に分かった。米国ではこの週末に、FRB(米連邦準備制度理事会)と財務省の関係者(米大手金融機関)などが出席する「金融市場に関する大統領作業部会」が開かれた。バフェットへの接触もその一環である。PPT(下落防止チーム)が動いたのは2020年3月以来のことである。
バフェットは金融危機時に金融機関に投資を行い成功した。2008年の世界金融危機の際、ゴールドマン・サックス・グループ(GS)に50億ドルを出資した。また、バンク・オブ・アメリカ(BAC)は2011年にサブプライム住宅ローン絡みの損失での株価が急落した後、バフェットから資本注入を受けた。
バフェットは金融マフィアでもある。リーマンショックに続いて、規格外の安値で金融株をまたもや手に入れることになるのだろうか? ただ、本格的な金融危機というか、<金融システムの崩壊>はまだ先である。そのトリガーは利下げが引く。
クレディ・スイスは下降スパイラルに巻き込まれて破綻した。UBSがCSを二束三文の20億ドルで買収、SNBは1,000億ドルの流動性を提供、当局は株主投票を迂回させることを強行したという。
また、スイス政府はUBSグループに対し、クレディ・スイス・グループ買収に関連して発生し得る損失をカバーするため90億スイス・フラン(約1兆2,900億円)の保証を付与するという。
「スイス国立銀行はUBSに対して1,000億フランの流動性援助を行い、政府はUBSが引き継ぐ資産の潜在的損失に対して90億フランの保証を与える」という。これは、明らかに税金による救済措置で、もう資本主義経済とは呼べない状況である。
クレディ・スイスは下降スパイラルに巻き込まれた
ゼロに近い金利でお金を借りることができ、すぐに利益を得られる「機会」が増殖するとき、過剰な借り入れと投機が「賢いこと」となる。このような「アニマルスピリッツ」が旺盛なマインドセットでは、大金を借りて、皆のポケットを満たす簡単な利益を追いかけることをためらうのは愚か者である。
これらの限界的な資産や企業に資本や生計を賭けていた人は皆、損害を受けることになる。金利が4%に上昇したときに利回り1%の債券を買った人は皆、痛い目に遭う。ほぼ無料の資本が永遠に流れ続けることを期待していた人は皆、傷つくだろう。
出所:『景気循環型不況が必須であることを忘れていた』 3月21日 ゼロヘッジ
クレディ・スイス銀行は、散々バブルに踊ってもうけて、破綻すると損失は税金で国民が救済する。こんなおいしい商売はないだろう。米国の銀行もそうだ。FRBは実質的にその6,000億ドル以上の預金を全て保証したことになる。
商業銀行は一銭も損しない。彼らは今、金融リスクを連邦準備制度に転嫁することができる。今回の銀行救済措置は大きな批判を呼び、昨日イエレンは破綻銀行の投資家保護を否定した。
SVBの下落(およびその後の銀行部門の混乱)は、このFRBの引き締めサイクルを逆転させる触媒になるのだろうか? 今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)では辛うじて25bpsの利上げが行われたが、市場はその後利上げ停止や大幅な利下げサイクルが続くとみている。
現在の米政策金利の進路に関する市場の予想
歴史的に見ると、利下げは過去の弱気相場における最悪の下落の前に行われたものである。
FRBが利下げに追い込まれたとき、市場は今より疑心暗鬼となるだろう。債券王のジェフリー・ガンドラックは、「株式市場は現在弱気相場であり、上昇する場合は売りで臨む」という。
ガンドラック氏は、S&P500種指数が3,200まで取引されると予測し、「2023年の目標は生き残ること(サバイバル)、そしてできるだけお金を失わないこと」と投資家に注意を促している。
ナスダックと米2年国債金利の推移
過去の弱気相場では、歴史的に利下げが最悪のドローダウンに先行している
FRBによるCOVID時代の住宅ローン市場への介入は、21世紀に入ってから2度目の不動産バブルをあおった。バブルは、FRBがMBSの購入を中止し、インフレに対抗するために金利を引き上げたことで終焉(しゅうえん)を迎えた。バブルの終焉により、FRBはすでにMBS投資で4,000億ドル以上の損失を出している。シリコンバレー銀行と同じではないか?
いずれにせよ、エブリシングバブルの崩壊はまだ終わりの始まりにすぎない。景気後退を引き起こさずにインフレの発生を封じ込めるのは至難の業である。
2000年から2002年にかけてのNASDAQ弱気相場の上昇を「強気相場」だと思っていた方へ
連銀と金融危機
長期的なスタグフレーションかデフレ不況のどちらかになるだろう
イエレンは2017年6月に、「私の目の黒いうちは、金融危機は起こらない」と豪語した。筆者のメルマガでは、Jim Quinn(ジム・クイン)の『IS THE U.S. BANKING SYSTEM SAFE? – 15 YEARS LATER』というコラムを取り上げたが、彼は、「銀行のCEOや政府のトップが「大丈夫だ」と言うのを見たら、丘の上に逃げて欲しい。彼らは嘘をついている。彼らはこの事態を予見していなかったし、どのような結末を迎えるのか見当もついていない」と、述べている。
ジム・クインの言うように、私たちは、次の世界金融危機の始まりにいるのであって、終わりではない。フォース・ターニング(第四の節目・危機の時代)は消え去ることはない。混乱と戦争のクレッシェンドへと発展していくのだ。この金融危機は、昨年から手招きされている軍事衝突の到来を告げるものだ。今こそ、腰を据えて、来るべき嵐に備える時である。
レイ・ダリオは、シリコンバレー銀行の破綻は「炭鉱のカナリアだ」と述べ、「初期的な兆候を示しているこの動きはベンチャー界のみならず、より広い世界に波及効果を及ぼすだろう。この銀行の破綻に続いて、もっと多くの問題が顕在化する可能性が高い。縮小はサイクルが一巡するまで続く。今はターニングポイントに近づいている」と警鐘を鳴らしている。
ロバート・スタークは、『経済的死のスパイラル』というコラムの中で次のように述べている。
これは、インフレ、スタグフレーション、景気後退、潜在的な債務危機、さらにエネルギーやサプライチェーンの問題など、完璧な嵐である。
すべてのバブルを終わらせるバブル、あるいは大きすぎて潰せないステロイドのようなバブルで、FRBには2つの選択肢がある。資金供給量を減らして流動性危機を引き起こすか、インフレを引き起こすかだ。
利上げはこの2つの選択肢の中で最も悪いように見えるが、QEが復活すれば、これ以上の利上げは無駄である。QEと金利のコンボは、ピーター・シフが警告した、インフレによる金融崩壊のシナリオにつながるものだ。
しかし、ほとんどの場合、長期的なスタグフレーションかデフレ不況のどちらかになるだろう。これは誇張でもクリックベイト(虚偽・誇大広告)でもなく、恐慌は非常に現実的な可能性である。
出所:『経済的死のスパイラル』 3月21日 ゼロヘッジ
1971年、ニクソンの金ドル兌換(だかん)停止のとき、世界の債務は4兆ドルだった。ゴールドの裏付けがないため、無制限にお金を刷ることができるようになったのである。大金融危機が始まった2006年には、世界の債務は120兆ドルに達していた。2021年には、1971年の75倍の300兆ドルにまで膨れ上がっている。
2025年から2030年の間に世界の債務が3,000兆ドルに達する!?
年金制度は、銀行と同じ長期国債を大量に購入し、巨額の損失を抱えている。年金制度も問題を抱え、債務を履行できなくなったという話を聞くのも時間の問題かもしれない。
上のチャートでは、2025年から2030年の間に世界の債務がなんと3,000兆ドルに達するという予測となっている。これは、シャドウバンキング(影の銀行)システムと、現在おそらく約2,000兆ドルの未払いのデリバティブを、中央銀行が大量の紙幣印刷で対処する必要があることを前提としているという。
FRBがコントロールを失うことで、アメリカ帝国は金利を支払う余裕すらなく、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性がある。いずれにせよ、全ての帝国は財政破綻して終わりを迎える。
帝国のビッグサイクル
3月22日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
3月22日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、今中能夫さん(楽天証券経済研究所チーフアナリスト)をゲストにお招きして、「対話型AIブームの本命銘柄は?」・「半導体市況の行方」・「ハイテクの高PERをどう見るか?」・「自動運転とテスラ」・「金融危機は国家管理相場の終わりの始まり」・「利下げと株式市場」・「今中さんの注目銘柄」というテーマで、今中さんと話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
3月22日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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