シリコンバレーバンクの経営破綻

 9日までは非常に強い値動きだった日本株ですが、米シリコンバレーバンクの経営破綻を受け米国株が大きく下落し、日本株も冷や水を浴びせられた形となりました。

 もともと9日の時点で、昨年来高値更新銘柄が300超えという、バブル的な上昇相場でなければ年に1回あるかないかという水準まで上昇していましたので、ここからの下落はやむなし、という感じではありました。

 ただ、単なる調整局面にすぎないのか、それとも本格的な下落につながるかでは株価への影響は大きく異なりますし、筆者個人的にはこの影響が他の金融機関に波及しないかどうかを注意深く観察する必要があると感じています。

今回の一件だけではリーマン・ショックのようにはならない

 報道によれば、シリコンバレーバンクの破綻は、2008年9月のリーマン・ショック時に起きた貯蓄金融機関ワシントン・ミューチュアルの破綻に次ぐ、史上2番目の規模となったようです。

 ただ、現時点で他の金融機関に破綻の兆候があるかといえばそれは感じられませんので、株価の動きとしてはいったん下げ止まって落ち着くものと考えられます。

 もし、株価の下落が止まらないとすれば、他の金融機関へ悪影響が波及して、破綻の連鎖が広がり、金融危機まで発展する可能性があるとマーケット参加者が予測しているという、かなり悲観的な結末を織り込み始めている、とみた方がよいでしょう。

 ただ、リーマン・ショックのときもそうでしたが、最初はいわゆる「サブプライムローン問題」が発端となり、その後悪材料が出ては下がり、そこから反発して、というのを繰り返し、波打つように下落をしていきました。

 ですから、私たち個人投資家としては、この後の株価の動きを十分注視する必要があります。

指数の直近安値割れには要注意!

 では具体的にどのような視点から見ていけばよいのでしょうか。筆者であれば、指数(日経平均株価やダウ工業株30種平均(NYダウ)などの主要な指数)が直近安値を割り込んで下落をしたならば、さらなる下落に要警戒、と考えます。

 例えば、NYダウが今回の件に反応して3万ドルまで下げたとします。その後反発して3万2,000ドルまで戻したものの、そこから再び下げに転じ、3万ドルを割り込んだとき、「直近安値を割り込んだ」という判定となります。

 通常、上昇相場であれば直近安値を割り込むことなく直近高値を超えて上昇していきます。しかし天井をつけて下落相場に転じると、今度は直近高値を超えることができず、逆に直近安値を割り込んで下落をすることになります。

 この動きはリーマン・ショックのときも、暴落する1年ほど前から起きていたものですので、大いに参考にすべきと思います。

 そうなれば、利益を上げることよりも、大きな損をしないことを最優先に行動し、買いのポジションを減らしてキャッシュ比率を高めていきます。

 また、もし金融危機が迫っているのだとすれば、銀行株を中心とした金融機関の株価が大きく下がると思われます。

 日本株であれば、おそらく利上げによる金融正常化期待で銀行株が今まで買われてきたわけですが、金融危機にまで発展するとなれば、今までの上昇など簡単に帳消しになってしまうでしょう。

個人投資家がやってはいけない行動とは?

 さて、ここからもしかしたら本格的な下落相場になるかもしれない、という状況で個人投資家が控えなければいけない行動は何でしょうか? それは、プロの見解を信じてしまうことです。

 リーマン・ショック前年の2007年、サブプライムローン問題から株価が一時的に下落したことがありました。しかしその後株価はいったん下げ止まりました。

 この動きをみて、多くの専門家・評論家の人たちは「サブプライムローン問題は解決した。ここからは株価は上昇に転じる」という見解を述べていました。

 しかし、実際はリーマン・ショックの悲惨な下落につながっていったのです。

 リーマン・ショックの株価暴落の前は、景気も悪くなかったため、専門家・評論家は「足元の経済に比べて株価が下がりすぎている」との判断から買い推奨したのだと思います。

 しかしリーマン・ショックのときは、株価下落により実際の景気もつられて悪化してしまったという意味で、非常に興味深い動きでした。

 つまり、足元の経済環境が良くても、株価が下がったのであれば、株価下落を尊重して守りに徹しないと、やがてとてつもないダメージをくらいかねないということが現実に起きたのです。

 逆に言えば、株価は先んじて「この先は危ない」というサインを出してくれていたわけです。

 株価が下降トレンドになったら保有株は売却するとか、キャッシュ比率を高めて無理な勝負をしないとか、損切りのルールをしっかり設けてそれを守るといったことを徹底して行うことができているならば、たとえ今後リーマン・ショック級の暴落が生じたとしても生き残っていけます。

 今のうちに、ご自身の行っている株式投資が、株価暴落が起きても小さなダメージで耐え抜くことができるかどうか、今一度確かめておくことをお勧めします。

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