ペアトレードを実践する上での注意点

 もちろん、上昇しても下落してもOKなど、おいしい話ばかりではありません。ペアトレードを行う上で留意すべき点についてご説明します。

1)銘柄選択(買い銘柄が空売り銘柄に負ける場合)

 もし見込みが外れて買い銘柄が空売り銘柄に騰落率で負ければ、買い銘柄が上昇しても損失になりますし、下落してもその損失を空売り銘柄の利益でカバーしきれません。

2)業種内ねじれ(買い銘柄と空売り銘柄が似た値動きにならない場合)

 ここまでは同業種のため買い銘柄と空売り銘柄は似た値動きをするという前提で説明してきましたが、必ずしもそうとは限りません。買い銘柄と空売り銘柄で逆方向の値動きが続けば、買い銘柄の下落+空売り銘柄の上昇で、損失が相殺されるどころか、二重に損失を被る可能性もあります。

3)空売り特有のリスク

 これはペアトレードゆえのリスクではありませんが、信用取引を利用した空売りをする以上、常に留意すべきリスクです。思いのほか業種全体が上昇する中で空売り銘柄が急騰、それなのに代用有価証券として使っている買い銘柄が下落してしまった場合などは、追証が発生してポジションを手じまわなければならないこともありえます。また、空売りは市場で株式を調達できることが前提なので、コーポレートアクションなどで貸株が調達できなくなると空売りが継続できない場合があります。

 いかがでしたでしょうか。上に挙げたような注意点・リスクもある一方で、相場全体の動きを乗り越えて利益を上げる可能性を持つペアトレードは、使い方によっては景気後退期の強力な武器になります。下押し圧力に負けない投資術の参考として、お役立てください。

※ペアトレード戦略とほぼ同じ意味で、「ロング・ショート戦略」という用語が用いられる場合があります。確定した定義はないようですが、ペアで取引する点に着目するか、一方を買い(ロング)、一方を売り(ショート)することに着目するかの違いといえます。なお、ペアの片方を株価指数ETFとする手法もあります。