損失の繰り越しは確定申告が必須
2022年分の所得税確定申告の期日である3月15日が迫ってきました。読者の皆さんの中には、すでに確定申告を済ませた方も、今必死に申告書を作っているさなかという方もいらっしゃることでしょう。
本コラムでも過去何度か株式投資に関する税金の取り扱いにつきお伝えしていると思いますが、何といっても忘れてはならないのが、前回のコラムでも書きました、株式投資などで生じた売却損(譲渡損)を翌年以降繰り越す場合です。
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もし確定申告書を提出する際、株式投資の売却損につき繰り越すことを失念していた場合、一般口座もしくは源泉徴収なしの特定口座で生じたものであれば、後日更正の請求の手続きにより繰り越すことができます。
※更正の請求:すでに提出した申告書の内容に誤りがあり、税額が納めすぎになっているなどの場合、申告書の申告期限から5年以内であれば修正を求めることができる制度
しかし、源泉徴収ありの特定口座で生じたものについては、確定申告書提出時に繰り越しを失念すると、更正の請求ができず、救済措置が受けられなくなり損失が切り捨てとなってしまいます。
2022年分の損失を2023年に繰り越すケースだけでなく、2020年分、2021年分からの損失を2023年に繰り越すケースも同様に、繰り越す都度毎年確定申告が必要となりますので注意しましょう。
配当金を確定申告したい場合は期日内に
配当金については、以下の三つの課税方法から選択できます。
(1)確定申告しない(源泉徴収のみで済ませる)
(2)総合課税で確定申告する
(3)申告分離課税で確定申告する
(2)や(3)の課税方法を選択したいのであれば、確定申告書に配当所得についての必要事項を記載し、適用を受ける意思表示をする必要があります。
もし確定申告書を提出する際に、配当所得について何も記載せず、後日「配当所得を申告書に記載するのを忘れたから」といって更正の請求をすることはできません。
なぜなら、確定申告書を提出するときに、配当所得については確定申告しないという方法を選択されたとみなされてしまうからです。
更正の請求というのは、「申告内容に誤りがあった場合」に認められるものです。配当金の3つの課税方法のうち、「確定申告しない」を選んだこと自体は、申告内容に誤りがあったことに該当しません。
ですから後になって、「確定申告した方が有利だったからやっぱり変えます!」ということはできないのです。
同様に、確定申告の際に配当金を総合課税や申告分離課税で申告し、後日「やっぱり配当金は確定申告しない方が有利なので取り消してください」ということもできません。
申告期限内であれば確定申告のやり直しが可能
では、すでに確定申告書を提出してしまっているが、譲渡損の繰り越しの申告を忘れたり、配当金を確定申告するのを忘れていた、ということを現時点で気づいた場合はどうでしょうか?
実は法定申告期限(2022年分は2023年3月15日)までであれば、いったん提出した確定申告書の出し直しが可能となっています。これを「訂正申告」と呼びます。
法定申告期限までの間に同じ人が複数の確定申告書を提出した場合は、最も遅く提出したものが採用されることになっています。
ですから、確定申告書に本来は記載すべきものを記載せずに出してしまったという場合は、申告期限内であれば正しく記載したものを出しなおすことができます。
そもそも確定申告をしていない場合は?
上記は、確定申告書を提出している人の話でしたが、では、会社員の方など、普段は確定申告をしていない人の場合はどのようになるのでしょうか?
例えば、そもそも確定申告書を出していないが株の譲渡損の繰り越しの申告をしていないとか、そもそも確定申告書を出していないが配当金につき総合課税で確定申告した方が得だと後日気付いた、というケースです。
もし、申告期日までに確定申告書を提出せず、後日提出するというときは、「期限後申告」という扱いになります。
この場合、まだ申告書を提出していないので、源泉徴収ありの特定口座で生じた株の売却損を繰り越さないという選択をした(=後日更正の請求で修正できない)ということにはなりません。
期限後申告の際に、株の売却損の繰り越しについても申告すればよいのです。
同様に、配当金についても、確定申告書を提出するまでは、まだ確定申告をしないと選択したことにはなっていません。
配当金につき確定申告をしたいのであれば、期限後申告書に配当所得につき必要事項を記載すればよいことになります。
「知らなかった…」で損をすることのないよう、必要な税金知識はしっかりと押さえておきましょう。