まとめ

 新NISAは、(1)できるだけ早くNISA口座に資産を集めて、(2)全世界株式のインデックスファンド1本で運用すればいい。なすべきことは、それだけだ。

 投資できる資金の額と、その中でリスク資産に振り向けられる金額は個人差があるかも知れないが、「リスク資産に投資する部分」の扱いについては、本稿の前提条件の下に、この方法のみが正解だ。

 大きな前提条件は、(A)株式市場に投資する適切なタイミングを選ぶことはできないが期待値としては株式投資が有利だと考えていることと、(B)良い銘柄やファンドなどをライバルよりも上手く選べない時にはライバルの平均を持つのが有利だと分かっていることの2つだが、タイミングを選ばずに有利な場所で、平均値にフルインベストしてじっとしている以上に合理的な投資方法はない。

 この方法からの逸脱を唯一正当化できる理由は、「遊び」である。筆者もその種の遊びは好きだ。だが、遊びには手間とコストが掛かることの自覚が必要だ。運用が趣味でも仕事でもない人にとっては、「唯一の正しい方法」以外に注意を向けることは時間とコストの大きな無駄だ。

 ところで、あるインデックス投資家から、「世間では、インデックス投資に対して、アクティブ運用よりも一段レベルの低いものだというイメージがあることが不満だ」と聞いたことがある。運用というゲームの仕組み及び世間の仕組みを理解せずに無駄を重ねる不細工な姿に比べると、理屈を理解した上でインデックス投資を実行することの方が遙かに知的でスマートだと思うのだが、いかがだろうか。インデックス投資家は大いに自信を持って、新NISAを合理的に活用するといい。

【訂正】記事本文では、全てのリスク資産をできるだけ早くNISA口座に移すことが「常に」最適であるように書かれていますが、「例外」があることが分かりました。例えば、特定口座内に含み益率が非常に大きな(投資額の数百%の)銘柄を持っている場合に、利益を実現せずにそのまま特定口座内で運用し続ける方が得だと計算できる場合があります。記して、訂正すると共に、ご指摘頂いた方に感謝します。(2023年4月17日 山崎元)