中国「偵察気球問題」の米国市況影響を要警戒

図3 米NYダウ(日足)の動き(2023年2月10日取引終了時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 先週末のNYダウ(ダウ工業株30種平均)の終値は3万3,869ドルでした。上の図3を見ても分かるように、日々の株価が上下するもみ合いの動きが続き、前週末終値(3万3,926ドル)比で57ドル安と、週足ベースでは小幅ながら下落となっています。

 トレンドの観点からは、昨年1月高値と10月安値を起点としたギャン・アングルの「4×1」ラインで上値が抑えられる格好が続いたほか、下段のMACDも線の傾きが横ばいとなる中で、シグナルとのクロスを繰り返しており、方向感が出ていません。

 もっとも、25日移動平均線が50日移動平均線を上抜ける「ゴールデン・クロス」が出ていて、上方向の意識は保っています。

 今週発表される経済指標の結果次第では、ギャン・アングルの4×1ラインの上抜けなど、株価の一段高が期待できる状況ではありますが、先ほどの相場環境の不安定さを考慮すると、株価の上振れが一時的となる可能性は高そうです。

図4 米NASDAQ(日足)の動き(2023年2月10日取引終了時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 先週のナスダック(ナスダック総合指数)も上値の重たい展開となりましたが、もみ合いの印象が強かったNYダウと比べ、上の図4を見てもわかるように、上値からの株価失速が感じられる印象です。

 ナスダックは、グロース株をはじめとする高PER(株価収益率)の銘柄が多く上場しているため、金融政策をめぐる思惑に振り回されやすい側面が表れたと思われます。

 また、ナスダックについては、昨年12月28日を底にした株価反発の強さが影響し、25日移動平均線が勢いよく回復しています。

 足元では50日移動平均線を上抜け、200日移動平均線もトライしそうな状況ではあるのですが、その一方で株価の上値が、ギャン・アングルの2×1ラインが抵抗となっているほか、下段のMACDがシグナルを下抜けしそうなど、上昇の一服感を示すサインも増えていて、今後の展開が読みにくくなっています。

 よって、今週のナスダックは、積極的な上値トライというよりも、昨年末からの株価上昇の一服感を確認しつつ、株価が下落した際に200日移動平均線がサポートとして機能できるかの方が注目されやすいかもしれません。

 さらに、[3]の米中関係ついても注意が必要です。いわゆる「偵察気球」の騒動は、ブリンケン米国務長官の中国訪問の延期から、中国の6団体を貿易ブラックリストに追加といった米国側の対応が拡大する一方、中国側からも核弾頭の増強を検討する方針が示されるなど、現在のところ状況が改善する兆しは見られていません。

 今後もエスカレートするような事態となれば、相場にも影響が出てくるかもしれません。

 このように、日米株価指数のチャートの形状は悪くはないのですが、相場環境は強気に傾きにくい状況のため、今週の日本株は、一時的な株価の上振れや下振れの場面がありそうなものの、中長期のトレンドに発展する可能性は低く、先週に続いて「統一感」のない展開がメインシナリオになりそうです。