手数料との向き合い方

 先の学生の「手数料の全てが悪でなく、程度の問題だ」という認識は全く正しい。手数料、すなわち利益がなければ、商品やサービスは、開発されることも、提供されることもないだろう。何らかの形での手数料は必要なのだ。

 ただし、(1)自分たちが手数料を得ることには顧客のマイナスになる側面が確かにあること、(2)同じサービスを提供するなら手数料が安い方が「いいサービス」であること、(3)受け取っている実質的な手数料は顧客が納得したものであること、は必要なことだし、証券マンとして絶えず自覚し、反省が必要だ。

 相談者が、対面営業の証券会社に入社した場合、不本意な商品を売らなければならないケースも出てくるだろう。

 その場合に、「それでも、客が求めているのだから、自分はいいことをしているのだ」などといった偽りの自己正当化にとどまらずに、他にもっとマシな売る物はないかを模索してみたり、時には顧客に「これは手数料が損ですが、それでもよろしいですか」と訊いてみたり、そもそもダメな商品を売ることが会社の長期的・総合的利益にとってマイナスではないかと社内で声を上げてみたり、といった別解の探索を時に試みて欲しい。

 顧客がなぜ間違えた選択をするのか、会社はなぜ変われないか、など将来のビジネスを改善したり、新しいビジネスを立ち上げたりする場合に役立つヒントが豊富にあるだろう。

 なお、せっかく良い人材なのだから、必ずしも対面営業の証券会社に就職する必要はない。ネット証券に就職してもいいではないか。ネット証券のコールセンターなどは、将来の参考になる情報に満ちているはずだ。

 一方、金額でパフォーマンスを測ることができる金融の世界では、「同じサービスをより安価に」提供できるなら、それは「より優れたサービス」の提供を意味することがはっきりしている。

 手数料はビジネスが存続するための言わば必要悪だが、この点を認識した上で、より優れたサービスを提供することを競争力の源にして、ライバルに対して勝ち残ることを目指して欲しい。標語として、「最後の一人の証券マンとして勝ち残れ」と申し上げておこう。