気を付けたい、初歩的な失敗

 以下、私がよく聞く三つの失敗談をご紹介します。同じ失敗をしないように気を付けてください。

失敗談1 NISA口座を開く前に株を買って、後からNISA口座に移そうとしたが移せなかった

 課税口座(特定口座や一般口座)で買い付けた株や投資信託を、後からNISA口座に移すことはできません。まず、NISA口座を開き、NISA口座で買い付けた株や投資信託だけが、非課税の恩恵を受けることができます。

 最近日本株で、配当利回りが4%を超える銘柄が多くなっています。そこで、NISA口座を開いて、高配当利回り株に長期投資しようと考える方が増えています。それならば、まず、NISA口座を開いてください。先に株を買ってしまって、後からNISAに移そうとしても、移せません。

【失敗しないための対策】

 NISAで非課税投資を始めようと思っている方は、何はともあれ、まずNISA口座の開設から始めましょう。

 NISA口座を開いてから買い注文を出すとき、口座区分の欄で、NISA口座に以下の通りチェックを入れて注文を出すようにしてください。
 

 特定口座や一般口座にチェックをして注文を出すと、NISA口座に入りません。

失敗談2 昨年12月に駆け込みでNISA口座を開いたが、12月中に何も買わなかった

 現行の一般NISA口座では年間120万円まで、非課税の投資ができます。ただし、昨年(2022年)のNISA口座は、2022年中に投資する必要があります。使わずに残った非課税枠は、次の年に引き継げません。

 したがって、2022年12月にNISA口座を開いても、2022年中に何も買わなかったならば、2022年の非課税枠は全て消滅します。新たに付与される、次の年のNISA枠を使って投資する必要があります。

 今年(2023年)、一般NISAを選ぶか、つみたてNISAを選ぶか考える際、一番重要な決め手は、「2023年にいくら投資できるか」です。

 2023年に120万円の一般NISAの非課税枠を得ても、2023年末(受け渡しベース)までに40万円までしか投資しなかった場合、残りの80万円の非課税枠は消滅します。2024年に引き継ぐことはできません。

 1年間に40万円だけ投資する予定ならば、上限40万円のつみたてNISAを選んだ方が良いと思います。つみたてNISAは投資上限が年間40万円ですが、非課税になる期間が20年あるからです。一方、一般NISA口座は120万円まで投資できますが、非課税期間が5年間しかありません。

【失敗しないための対策】

 2023年のNISA枠は、余裕資金があるならば、年内になるべく上限まで投資するようにしましょう。既に、120万円の投資資金がある方は、非課税枠が大きい一般NISAを選んだ方が良いでしょう。年間の投資額が40万円以下ならば、つみたてNISAを選んだ方が良いと思います。

 2023年12月末までに受け渡しが済むように投資するためには、日本株の場合は12月27日(水)までに買わなければなりません。12月27日(水)に買えば、12月29日(金)に受け渡し(株主として株主名簿に記載)されるので、2023年のNISA枠に入れることができます。

 ところが、2023年12月28日(木)に買うと、受け渡しが年明けの2024年1月4日(木)となるので、2023年のNISA口座に入れることはできません。

失敗談3 2022年に課税口座(特定口座)で10万円の売却益を出し、NISAで10万円の売却損を出したが、損益通算できなかった

 NISAの欠点として知っておく必要があるのは「損益通算」ができないことです。課税口座(特定口座)で10万円の売却益と10万円の売却損を出せば、「損益通算」されます。売却益と売却損が相殺され、ネットで売買損益は出ていないので、税金はかかりません。

 ところが、課税口座で10万円の売却益を出し、NISAで10万円の売却損を出した時は、損益通算ができません。10万円の売却益に対し、分離課税を選択していると、2万315円(20.315%)の税金(所得税および住民税)がかかります。NISA口座で10万円の売却損を出しても、払った税金は戻ってきません。

【失敗しないための対策】

 NISAでは、短期的に損切りが必要になる可能性のある投資(小型材料株への短期投資)はしない方が良いと思います。

 NISAは長期的な資産形成に向いている制度です。低コストのインデックスファンドなどに、じっくり長期投資するのが適しています。個別株に投資するならば、じっくり長期で投資できる銘柄を選んだ方が望ましいです。例えば、長期的に安定成長を期待する株や、大型の好配当利回り株が妥当だと思います。