新NISAと骨太向け、子育てや防衛など岸田政権の重点政策銘柄に期待かかる

 先に述べたように、当面は世界的なインフレピークアウト、金融引き締め策の緩和が意識されるため、バリュー(割安)株よりもグロース株が優位の状況となる可能性があります。

 ただ、岸田政権の主要政策でもある「貯蓄から投資」に沿った形で、2024年からNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が拡充されます。NISAの非課税投資枠の増加は、主要投資対象と位置付けられる高配当利回り銘柄にとって追い風になります。これまで以上に配当権利取りのタイミングでの株価上昇力は強まるものとなりそうです。

 なお、来年からのこの新NISAスタート時には話題性も高まり、NISA枠での株式購入も例年以上に増加するとみられます。先回り的に高配当利回りの大型株などを物色することも、2023年後半には妙味となってくるでしょう。

 1月23日には、岸田首相が施政方針演説で少子化対策などの重要性を訴えました。昨年末には防衛力強化策と原子力発電所を活用するエネルギー政策をまとめています。こうした政策への期待は、政府が経済財政政策の指針となる「骨太方針」を策定する6月に向けて、高まっていくと想定されます。

 今回は施政方針演説が行われた直後でもあり、岸田政権が注力する政策テーマに沿った高配当利回り銘柄を選定しています。具体的には、原子力活用の積極化、地政学リスクが高まる中での防衛力強化、子育て支援策の拡充、「ウィズコロナ」を意識した経済活動の本格化、一段の物価上昇につながる円安を抑制させる金融政策などをテーマにしています。

厳選・高配当5銘柄(あおぞら銀、新明和工業、ノエビアHD、東京エネシス、ベネッセHD)

(表)岸田政権の注力政策に関連する高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り(%) 1月23日終値(円) 時価総額 (億円) 関連テーマ
8304 あおぞら銀行 5.85 2,634.0 3,116 金融正常化
7224 新明和工業 4.07 1,033.0 723 防衛力強化
4928 ノエビアHD 3.84 5,600.0 1,913 経済正常化
1945 東京エネシス 3.73 939.0 350 原子力政策
9783 ベネッセHD 3.03 1,979.0 2,031 子育て支援
(注)株価騰落率は昨年末比
(注)配当利回りの高い順にランキング

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが3.0%以上(1月23日終値)
  2. 時価総額が300億円以上
  3. 岸田政権の政策メリットが期待できる銘柄

1 あおぞら銀行(8304・東証プライム)

 1998年に経営破綻して公的資金による救済を受けた日本債券信用銀行が前身です。中堅・中小企業との取引、不動産や事業再生案件といった専門性の高い融資を扱う「スペシャルティファイナンス業務」が特徴です。

 コンパクトな規模で全国・海外において事業展開を行っています。インターネット銀行ではGMOと提携しています。配当は四半期ごとに実施しており、個人投資家の保有比率が高いことも特徴になります。銀行株の中でも現状の配当利回りはトップクラスです。

 2023年3月期第2四半期累計純利益は153億円で前年同期比20.8%減となっています。顧客関連ビジネスは堅調に推移していますが、リスクをコントロールした運営を継続しているため、マーケット関連業務が減益となりました。通期計画は360億円で前期比2.8%増の計画ですが、進捗(しんちょく)率は約43%にとどまっています。

 また、有価証券評価損の処理次第では下振れ幅が大きくなる可能性もあります。年間配当金は前期比5円増の154円を計画していますが、配当性向50%からみて下振れリスクは残ります。ただ、市場でも減配リスクは織り込まれつつあり、現在の配当計画が維持されればポジティブなインパクトとなるでしょう。

 日銀では昨年12月、市場の意表を突く形で長期金利の許容限度幅を拡大させました。市場では事実上の利上げとも受け止められています。真偽は不明ですが、一段のインフレにつながる円安阻止を意図した、政府のプレッシャーだったともいわれています。

 今後も過度な物価上昇につながる円安の進行を抑制するため、政府には金融正常化の動きを強めたい意向があると考えられます。黒田日銀総裁の退任もあって、早い段階で日銀は追加修正を強いられるものとみられ、国内金利の上昇、金利上昇がメリットとなる銀行株高の流れは続くと判断されます。

2 新明和工業(7224・東証プライム)

 ダンプなどの特装車で国内トップ企業です。そのほか、立体駐車場、ポンプなどの水処理機器、主翼スパーや翼胴フェアリングなどの航空機部品、産業機器などを手掛けています。また、防衛省向けに水陸両用飛行艇「US-2」を提供しており、防衛関連の一角として位置づけられています。

 固定翼型無人航空機の実用化に向けた研究開発にも取り組んでいます。連結配当性向は40~50%を目標としています。

 2023年3月期第2四半期累計営業利益は32億円で前年同期比27.8%減となっています。産機・環境システムが拡大し、航空機の収益も改善しましたが、鋼材価格の上昇によって特装車セグメントが大幅減益になっています。

 通期計画は従来予想の90億円から70億円、前期比33.8%減益に下方修正しています。年間配当金は前期比横ばいの42円を計画しています。2024年3月期は、原材料価格上昇の影響一巡、航空機分野の拡大期待などで、順調な回復が望めるでしょう。

 新年度の政府予算では、防衛力の抜本的な強化のため、防衛費は6兆7,880億円と今年度を1兆4,192億円上回る規模となっています。また、防衛力強化資金として3兆3,806億円も別途計上しています。

 台湾有事が当面のリスク要因として位置づけられる中で、一度積み増し方向にかじを切られた防衛費は、今後も増加の方向をたどる可能性が高いと考えられます。救難飛行艇を8号機まで納入しており、防衛省の主要取引先企業に度々顔を出している同社にはインパクトが強まっていきそうです。