米株の「まさか」と投資の構え方

 最近のインフレ鈍化、景気底浅、米利上げ控えめという楽観に対して、2022年のサマーラリー時のように能天気というつもりはありません。それなりにサイクルが進展しているからです。しかし、上述の通り、インフレ、景気、金利の動向にはまだまだリスク分岐の不確実性があります。株式については、逆業績相場入りへの警戒がくすぶる中、これらマクロ経済指標ではなく、個別企業のミクロニュースである決算のショックが市場心理全体に響く恐れも続くでしょう。

 来るサイクルステージは、米国の株価はまだ下方、債券価格は上方(金利低下)、ドル/円は下方(円高)を基調としつつ、インフレと金利の高止まり具合次第のシナリオの紆余曲折、分岐多発に身構えています。2022年の株価も債券価格も下り坂という局面と異なり、債券はイールドハンティング投資、株式も中間反騰狙いの短期投資や逆業績相場後まで見据えた時間分散の長期投資、そこにドル/円の失地回復具合を踏まえた円転とドル転を絡める投資と、工夫を楽しめる要素が多そうです。短期投資と長期投資のはざまで、中期投資が吉(あるいは凶)となる目もあり、そうした目配せも工夫のうちです。

 2020~2021年の上り坂では安易にもうかることで投資の勉強はおろそかになり、2022年の下り坂では損失に気が気でなく勉強など手が付かなかった、そんな人も少なくないでしょう。2023年は、経済と各市場の間のパズルが錯綜(さくそう)するステージです。こんな面倒な時期は見過ごして、その後にゆったり好機を捉えるというのも一法です。ただし、ここでしかできないパズルの実地体験は、将来につながるノウハウの習得になると考えます。

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