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複数の口座の資産運用
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

複数の口座の資産運用

2013/4/5
読者は、ご自身の金融資産を幾つの口座で運用されているだろうか。
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現実には複数口座

読者は、ご自身の金融資産を幾つの口座で運用されているだろうか。

「私は、ほぼ全ての金融資産を楽天証券で運用しています」という、相当に合理的で、且つ筆者にとって有り難い方がいらっしゃる可能性もあるが、こうした方でも、日常の決済に使うかも知れないお金がある程度銀行にあるだろうし、公的年金や生命保険など、通常意識する運用とは異なる形でだが、実質的には資産運用の口座を複数持っておられる場合が殆どだろう。

また、お勤めの会社の企業年金や、ご自身で運用されている確定拠出年金があるという方も大いに違いない。加えて、2014年1月からは、通称「日本版ISA」の制度が始まる。これは、一定の条件の下で運用益に対する課税が非課税になる、資産運用に関する税制優遇制度なので、利用しないことはもったいない。多くの人が利用することになるだろうが、毎年、一人で一金融機関に一口座専用の口座を設定して運用することになるので、運用の複雑さが増す。

もちろん、否応なく使っている口座や、使わないと損なので使う口座以外にも、お金の運用に複数の金融機関の口座を使うことはあり得る。

日本版ISAの導入で多くの人の口座が一つ増える前のこの機会に、複数の口座を使う場合の、一般的な原則についてまとめておこう。

複数口座運用の大原則

複数の口座で運用する場合に最も重要な原則を一言で言うと、「合計が最適になるように使え」という事に尽きる。

しかし、行動経済学の研究対象となっている心理的なバイアスとして「メンタル・アカウンティング(心の会計)」があることからも分かるように、自分の損得に関係する複数の口座を全て合計して把握し、最適にコントロールすることは、通常の個人にとって、必ずしも簡単ではない。

しかし、「お金に色は着いていない」という認識が、合理的なお金の扱いにあたっての原則だ。常識的には、自分の合計の運用資産で、なるべく小さなリスクで、なるべく大きなリターンを得て、そのあとで、そのお金を合理的に使えばいい。お金は分割可能だし、多くの目的に使えるからだ。

以前に本連載で、年金基金のような機関投資家の「マネージャー・ストラクチャー」について書いたことがあったが(「年金基金の『マネージャー・ストラクチャー』の教訓」)、この場合のマネージャー・ストラクチャーは、複数の口座に分かれた個々の運用が、自分以外の人によって運用される状況をいかに管理するかというかなり複雑な問題だったが、個人の場合は、もう少し問題を単純化することができる。

一度原則が分かってしまうと、複数口座の正しい使い方は、割合簡単な計算で答えを決めることができる。

複数口座運用で考慮に入れるべき要因

個人が自分のお金を運用する複数の口座が、全て、同じ内容・条件の口座であるとすると、そもそも複数の口座を利用する必要が無いかも知れない。通常は、口座ごとになにがしか条件が異なり、その違いが、最適な利用方法を決定する。

複数口座の運用で考慮に入れるべき要因をリストアップしてみよう。

複数口座の運用で考慮するポイント

  1. 自分の意思で運用内容を変えられる口座か否か
  2. 口座の資産の流動性(換金と追加投資の可否、コスト)
  3. 口座ごとの税金面での有利不利
  4. 口座ごとの運用商品ラインナップ
  5. 口座ごとの手数料の高低
  6. 自分にとっての利便性目

先ず、公的年金や確定給付の企業年金のようなものは、自分で運用内容を変えることが出来ない。企業年金では、キャッシュバランス・プランのように、その時々の金融環境で運用利回りが変わるようなものもあるが、将来のインフレ率の変化による実質価値の変化も含めて、自分でコントロールすることはできない。ただし、自分の運用計画を考える上では、将来受け取ることが出来る年金などの価値も考慮に入れるべきだ。

口座毎の資産の流動性の問題も大きい。確定拠出年金は、原則として60歳まで資産を換金して受け取ることが出来ない。また、今後導入が予想される日本版ISAでは、株式や投信等をいったん売却してしまうと、非課税での運用の利用枠がその分縮小してしまう。

流動性には、「程度の問題」つまり「コスト」の問題が絡む。個人年金保険などを含めて、生命保険契約の場合、解約しようとすると契約からの期間によって数%レベルのペナルティが科されるので、運用商品として適切でないと後から気付いても、「解約しにくい」と感じる投資家が多いようだ。

しかし、この場合、解約させずに契約を維持させることから得られる手数料が大きいと生保側が考えているからこそ解約のペナルティを設定して契約者を囲い込んでいるのであり、解約後の資金運用のコスト(たとえば、インデックス・ファンドで運用した場合と比べて毎年の手数料差はどうか)を検討すれば、数年間以上の運用を想定するなら、早く解約してしまった方がいいケースが多いだろう。

運用計画全体を考える場合に、資金を動かしやすい口座であるのか否かの考慮は重要であり、資金を動かしにくい口座では、運用内容が長期的に固定できる資産を置くことが望ましい。

確定拠出年金、日本版ISAが典型的だが、各々の口座における税制上の有利不利も重要な考慮要素だ。確定拠出年金、日本版ISAでは、一定の条件の下に運用期間中の運用益が非課税になる。

この場合、運用計画全体の中で、課税対象となる運用利回りが高い資産の運用部分を「割り当てる」ことが適切な使い方となる。

あるサラリーマンの例因

たとえば、公的年金や確定給付の企業年金といった資産以外に自分で運用できる運用資金が1,000万円あり、そのうち確定拠出年金に200万円あって、日本版ISAに100万円(1年分)これから投資可能だ、というような会社員がいるとする。

仮に、この人が、500万円分内外の株式でリスクを取った運用をしたいと考えるなら、確定拠出年金と日本版ISAの部分には、全額株式の運用部分を充てるのが合理的だ。

両者に投資内容をどう振り分けるかが問題だが、確定拠出年金の方がスイッチングがしやすいので、日本版ISAの方により長期間固定的になるポジションを割り当てることが考えられる。

たとえば、「新興国株式」のようなリスクの大きなアセットクラスは、スイッチングが出来る確定拠出年金で運用する方が扱いやすいかも知れない。

但し、自分が利用可能な確定拠出年金の中に、新興国株式に投資するインデックス・ファンドのような、運用に使いやすい商品があるかどうかが問題になる。口座を開設する先も含めて広い範囲から商品を選ぶことが出来る日本版ISAの方が、商品選択の選択肢は広い。

商品のラインナップに加えて、商品の運用コスト(手数料)の差も重要な要因だ。例えば、外国株式に投資したいと考えた場合、市販の投資信託では手数料が高いと思われるケースがある。また、海外ETFを使う手もあるが、売買手数料や為替の手数料、更に配当に関わる税金の処理も含めて運用の手間が面倒だという問題がある。こうした場合、自分が利用可能な確定拠出年金に「先進国株式」、「新興国株式」を対象とする運用商品(インデックス・ファンドがいい場合が多い)がないか探してみるべきだ。

確定拠出年金の採用商品の中には、市販の投資信託よりも信託報酬を低めに設定した商品が含まれている場合があるので、こうした機会は有効に利用したい。

先の会社員のケースでいうと、日本版ISAではTOPIX連動のインデックス・ファンド(ノーロードで買えるものがいい)、あるいはETF(上場型投資信託)、確定拠出年金では「先進国株式」、「新興国株式」のインデックス・ファンド、これらの投資枠で足りないと思った場合には、自分で別途運用する、といった方法で運用の全体像を組上げていくといいだろう。

もちろん、上記に加えて、口座の選択にあたっては、利用する金融機関・口座ごとの商品の選択肢、手数料コストの差、自分にとっての利用の利便性といった要因が必要だ。

一般論として、なるべくシンプルな構成がいいと思うが、「運用全体の合計」を最適にすることを目的として、それぞれの口座をそのための「部品として使う」という意識で自分の資金運用を組み立てたい。

NISAについての詳しい情報はこちら

楽天証券 NISA(ニーサ):少額投資非課税制度

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