NISA拡充・恒久化で高配当利回り銘柄にも注目!

 新年度の与党税制改正大綱がまとめられ、個人投資家の優遇制度NISA(ニーサ:小額投資非課税制度)の抜本的な拡充・恒久化などが盛り込まれました。金融庁が8月に財務省に求めた改正要望に対しての「満額回答」となる形で、とりわけ、年間投資水準を現行の計120万円から3倍となる360万円に拡大することはサプライズともなりました。

 NISA枠では配当などのインカムゲインも無課税になるため、今回のNISA枠拡充は高配当利回り銘柄への期待感を高めさせるものともいえます。

 今回取り上げた高配当利回り銘柄は、前章の最後で挙げた、為替やインフレ動向の変化によってメリットが期待できるとみられる銘柄となります。ただ、ここの部分でメリットが大きくなりそうな食品株や小売株などには、高配当利回り銘柄が少なくなっていることには留意したいところです。

(表)外部環境の改善が期待される高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り(%) 12月19日終値(円) 時価総額 (億円) 株価騰落率(%) 今期営業 増益率(%)
7337 ひろぎんHD 4.33 623.0 1,946 ▲9.6 9.1
7575 日本ライフライン 4.04 940.0 779 ▲14.2 0.4
1934 ユアテック 3.89 720.0 520 7.1 5.3
5232 住友大阪セメント 3.86 3,105.0 1,066 ▲12.2 赤字
7483 ドウシシャ 3.82 1,569.0 586 0.2 16.7
(注)株価騰落率は昨年末比
(注)ひろぎんHDは当期純利益の増益率
(注)配当利回りの高い順にランキング

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが3.5%以上(12月19日終値)
  2. 時価総額が500億円以上
  3. 2022年の株価上昇率が10%未満
  4. 今後の事業環境の改善が期待される銘柄

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 ひろぎんホールディングス(7337・東証プライム)

 2020年10月に地方銀行上位の広島銀行を中核とする持株会社として発足。ひろぎん証券やひろぎんリースなどもグループに抱えています。広島銀行は広島県を中心に、岡山県、山口県、愛媛県で主に事業展開、預金等残高は4県で約98%、貸出金残高は約76%を占めています(数値は2022年9月時点)。

 預金等残高、貸出金残高は中四国地方に本店を置く地域金融機関の中でトップ、全国の地域金融機関の中でも7~8位を占めています。広島銀行単体の自己資本比率は、2022年9月時点で10.01%となっています。

 2023年3月期第2四半期純利益は101億円で前年同期比9.5%減となっています。一部の保有株式の下落などによって、減損損失を計上したことが減益要因となりました。

 一方、注力中の法人ソリューション収益が大幅に増加するなど、本業の業績は順調に推移しています。年度末にかけては保有株式の回復も想定されるとして、通期の純利益予想は250億円、前期比9.1%増を据え置いています。年間配当金は前期比3円増配の27円を計画しており、仮に減損を主因とする業績下振れの場合では、同水準を確保する方針のようです。

 2023年は、欧米においては先行きの金利低下を探る局面にもなってくるため、金融関連株にとってはマイナスの状況も想定されます。ただ、日本では、日銀の黒田東彦総裁の任期が切れる2023年4月が近づいていることもあって、次期総裁の下で大規模緩和政策の修正に向けた議論が一段と活発になっていくと考えられ、長期金利の上昇が予想されます。

 とりわけ、地銀株にとってはプラス材料となってきそうです。地銀株の中でも同社は、インバウンド需要拡大に伴う地域経済の活性化が見込める点で注目されます。広島県は厳島神社や平和記念公園など海外からの関心も高い観光資源が豊富で、水際対策の段階的な緩和によるインパクトは強まっていくと考えられます。

2 日本ライフライン(7575・東証プライム)

 心臓・血管疾患、消化器疾患領域に特化した独立系の医療機器メーカーです。不整脈を治療する「リズムデバイス」、不整脈の検査や治療を行う医療機器「EP/アブレーション」、血管治療の医療機器などを扱う「外科関連」、内視鏡治療や肝癌に対する医療機器・治療機器を扱う「消化器/PI」のセグメントで展開しています。

 取扱分野における市場シェアは約20%程度とみられています。海外製品の輸入販売と自社製品の開発・製造を行うハイブリッド型のビジネスモデルで、自社製品比率は過半超にまでウエートが高まっている状況です。

 2022年3月期上半期営業利益は51億円で前年同期比9.4%増となりました。従来予想の44億円を上回り、増益での着地となっています。新型コロナ感染の沈静化で増収となったほか、自社製品比率の上昇で利益率が上昇し、前年同期に発生した治験関連費用の一巡も寄与しました。

 通期計画は100億円、前期比0.4%増を据え置いています。5期ぶりの営業増益転換となる見通しです。また、年間配当金も前期比横ばいの38円計画を変えていません。

 2022年3月期上半期の自社製品比率は53.2%で、それ以外は医療機器の輸入販売が中心になるとみられます。一方、海外販売のウエートは低いとみられることで、基本的には、円高は仕入れ価格の低下につながってポジティブ要因と考えられます。

 円安一服による今後の利益率上昇を期待したいところです。また、脳血管領域への新規参入、胆膵内視鏡分野への本格参入なども業容の拡大へとつながることになるでしょう。