今日の為替ウォーキング

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膨大な負けを無駄にしない人が人より少し勝つことができる。– 武豊(競馬騎手)

Separate Ways

FRBは「どれだけ早く」から「どれだけ長く」へ

 米国のインフレ指標であるCPI(米消費者物価指数)の10月は前年比+7.7%で、予想よりも低い伸びとなった。今年3月からずっと円安街道を北上していたドル/円は、この結果を受けて1日の値動きとしては今年最大となる7円も急落。いわゆる「CPIショック パート2」が起きた。さらにその後に発表されたPPI(卸売物価指数)も低下して、ドル/円は10月21日につけた151.95円のピークから約1カ月で14円も円高に「戻った」。

 インフレ率の低下は、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げがついに効き始めたということだ。これ以上の利上げは、リセッションという副作用の大きさを考えると、そろそろペースを落とす頃合いだという見方が広がった。

 FOMCは、これまで4会合連続で0.75%の利上げを実施してきたが、今年最後の12月会合では、利上げ幅を0.50%に緩め、さらに来年のいずれかの時点では「利下げ」もありえると考え始めている。しかし、FRBはマーケットのこのような「過剰な楽観論」を快く思っていない。

 ウォラーFRB理事は10月CPIについて「ある時点のデータに過ぎず、あまり深読みしてはいけない」と警告する。現在の8%近いインフレ率は、FRBの目標値2%と比較して「とんでもなく高い」と指摘し、利上げ休止期待を完全否定した。

 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁によると、そもそも12月FOMCの0.50%利上げを「ハト派的」と見なすのが間違いということだ。なぜなら「FOMCは1983年から合計88回利上げをしてきたが、そのうち75回はは0.5%より低かった。」

 FOMC(米連邦公開市場委員会)の11月会合の議事録には、「参加者の大部分は、引き上げペースの減速が近く適切となる可能性が高いと判断した」と記されている。FOMCは、12月0.50%、来年2月0.25%、3月0.25%と利上げした後、休止モードに入る。現在4.00%のFF金利は、5.00%前後が打ち止めになるというのがマーケットの予想だ。

 もっとも、投票権を持つ最右派のブラード・セントルイス連銀総裁は、「十分に引締め的な金利水準とは5%から7%である」として、マーケット予想を上回る水準になるまで利上げする考えを持っている。

 重要なことは、パウエルFRB議長をはじめFRBの多くのメンバーが、「政策金利の終着レートはまだ高くなるべきだ」という考えを共有していることだ。「利上げ減速」は累積効果を測定するためであって「利上げ停止」ではない。インフレの状況次第によっては加速することも十分ありえるのだ。

 パウエルFRB議長は、インフレ制御のためには、過熱している雇用市場を冷まさなくてはいけないと考える。就業者数が伸びないまま平均賃金上昇率の高止まりが続くなら、インフレ警戒を強め大幅利上げということもありえる。利上げ終了のハードルはかなり高い。FRBがハト派に転向したと考えるのは早いのだ。

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成