先週の日本株は相変わらず米国の金融引き締めの見通しに一喜一憂する展開でしたが、日経平均株価は前週末比94円高とプラスで踏みとどまりました。

 今週11月7日(月)~11日(金)は、8日(火)に米国の中間選挙が行われ、10日(木)に米国の10月CPI(消費者物価指数)が発表されることから波乱の展開になりそうです。

先週:パウエル発言で金利5%台視野も!株式の死は回避できるか?

 先週の株式市場は、米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)が1日(火)~2日(水)に開いたFOMC(米連邦公開市場委員会)を境に暗転しました。会合では主要政策金利を4会合連続で0.75%引き上げることを決めましたが、これは市場ではすでに織り込まれていました。

 むしろ、FRBのパウエル議長が2日のFOMC後の記者会見で「利上げ停止の検討は非常に時期尚早」と発言したことが株式市場の動揺を誘いました。

 パウエル発言を受けて、強硬な利上げペースが鈍化されるとの期待で上昇していた米国株は急落。利上げが長期化する見通しが強まり、ダウ工業株30種平均は2日当日の高値から900ドル以上も下落しました。

 米国の政策金利で短期金利の指標になるFF(フェデラル・ファンド)レートの上限は今回の利上げで4%になりました。

 さらに、市場では「ターミナルレート」と呼ばれる最終的な金利の到達点が、5%台前半まで引き上げられるとの見通しが台頭。インフレを抑え込むための高金利政策で「株式の死」が続いた1970年代の再来に対する不安感が広がりました。

 ナスダック総合指数が週間で5.6%も下落するなど、金利上昇に弱い割高なハイテク株や成長株ほど大きく値下がりしました。

 4日(金)発表の米国の10月雇用統計は景気動向を敏感に反映する非農業部門雇用者数が前月から26万人増と予想を大幅に上回りました。

 しかし、失業率が3.7%に上昇したこともあってか、パウエル発言で下げ過ぎた米国株は自律反発しました。

※雇用統計に関して、詳しくはこちら:1分でわかる!雇用統計と株価の関係

 4日には、中国が新型コロナウイルスの徹底的な封じ込めを図る「ゼロコロナ政策」について、緩和される兆候が報じられ、中国株が急騰。これまで低迷してきた工作機械など日本の中国関連株や、中国経済の本格的な再開で資源高が見込める商社、石油、鉄鋼、非鉄金属株にとっては朗報です。

 日本市場では、先週に引き続き、2022年度中間期決算で好業績を発表した銘柄が急騰。

 大阪チタニウムテクノロジーズ(5726)は、航空機向けチタンの販売復活から、2023年3月期通期の純損益は前期の赤字から黒字転換を見込み、業績・配当をさらに上方修正。株価は前週末比32%高でした。

 三菱自動車(7211)は2022年度通期で最高益を更新する見通しで、27%高。

 急激な円安効果で外需株のサプライズ好決算が相次ぎました。

今週:トランプ氏返り咲き期待で米国株上昇!?日本株は円安増益に期待!

 今週、世界の注目を集めそうなのは、8日(火)に投開票が行われる米国の連邦議会の上下院議員らが選ばれる中間選挙です。

 優勢が伝えられる共和党が両院で過半数の議席を獲得すると、債務上限問題などで米国政府が立ち往生するリスクもあります。

 ただ、40年ぶりのインフレの一因だったバイデン政権の大規模財政支出にブレーキがかかる思惑が生まれれば、株価も好感しそうです。

 また、2024年の大統領選挙でトランプ前大統領が再び返り咲くシナリオも現実味を帯びます。

 評価が分かれるトランプ氏ですが、低迷した米国株には追い風になるかもしれません。

「中間選挙後は株高」になるというアノマリー(根拠はないが、よく当たる相場の経験則)もあるため、乱高下が続いた米国株の雰囲気ががらりと変わる可能性もあります。

 2020年の大統領選も、当初は企業増税政策を掲げるバイデン氏が大統領になると株安につながると危惧されていました。

 しかし、バイデン勝利の選挙通過後は、株高が急加速しています。

 むろん、政策金利が5%台に到達するかもしれない現状では、なかなか選挙だけで相場の雰囲気は変わらないかもしれません。

 選挙2日後の10日(木)には米国の10月CPIも発表されます。予想は前年同期比8%、前月比0.7%という高い伸びです。

 それを上回る物価上昇になると、さすがに選挙後の米国株でも上昇は難しいでしょう。

 逆に明らかな物価鈍化の兆しが出れば、年末高に向かって一直線で上昇モード入りする可能性もあります。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 日本では今週、決算発表がピークを迎えます。

 先週1日(火)に2022年9月中間決算を発表したトヨタ自動車(7203)は、前年同期比で円安による5,650億円の増益効果があったものの、原材料高や半導体不足による生産停滞で営業減益に。

 一方、三菱自動車の営業利益は前年同期の約3.3倍に大幅に増えましたが、その6割近くは前期同期と比べて496億円も増えた為替要因によるもの。

 今週も9日(水)には、海外売上比率の高いホンダ(7267)日産自動車(7201)が決算発表を予定。円安による大幅増益の期待が膨らみます。

 暗雲漂う米国株に比べると、円安や資源高で潤う外需株、インバウンド(訪日客)期待で活況の旅行、百貨店株など、日本株の一部は非常に好調に推移しています。

 全体相場が悪い中でも、業績が絶好調もしくは業績回復が鮮明な企業の株は上がるもの。

 2022年の下げ相場を乗り切る意味でも、日本の個別株投資に目覚める時期かもしれません。