日銀のYCCは既に壊れている!?

 財務省が10月27日に発表した対外・対内証券投資によると、海外投資家は10月16~22日の週に日本の中長期債を1兆3,912億円売り越した。売り越しは5週連続で、累計の売越額は6兆円を超えたという。

 日本経済新聞の記事「海外勢、日本国債売り再燃 5週連続売り越し、8年ぶり 日銀の緩和修正観測じわり」によると、海外勢による日本国債の売り越しの背景にあるのは、日本銀行が現在の政策を維持できなくなるとの観測がじわりと強まっていることだと指摘している。

 円相場が1ドル=150円を突破するなど急速な円安が進行した上、インフレ率も3%に到達している。日銀はYCC(イールドカーブコントロール)で長期金利をゼロ%程度、短期金利をマイナス0.1%に誘導するために、国債を買い入れるなどして金利上昇圧力を抑え込んできたが、海外勢はこの日銀の政策に軋みが出ていると考えているようだ。

 ゼロヘッジの記事「One Bank Makes A Stunning Discovery: The Bank Of Japan's YCC Is Broken And Soon The Entire JGB Market Will Cease To Exist(ある銀行が驚くべき発見をした:日銀のYCCは壊れ、日本国債市場全体がまもなく消滅する。)」では、日銀のYCCは既に壊れているとするドイツ銀行のFXストラテジスト、サラベロス氏の見方を紹介している。

 日銀が日本国債市場の半分以上を所有し、一度も取引が行われないまま数日が経過することもある中、日銀のYCC政策は、どう考えても既に破綻している。日銀の固定金利買い入れオペの対象となっている三つの10年国債利回りだけが、25ベーシス・ポイントの利回り以下で取引されており、それ以外の期日の国債は上限を大幅に上回る利回りで取引されている。

日本のイールドカーブ

出所:ゼロヘッジ

 つまり、もし日銀による無制限の固定金利入札と広範なQE(量的緩和)がなかったら、日本のイールドカーブ全体はおそらく大幅に上昇していたと考えられる。この「壊れた」曲線は、政策のゆがみだけでなく、その限界も示している。

 日本のMMTの実験自体が消滅へのカウントダウンをしている今、東京はせいぜい数カ月の時間稼ぎをしているにすぎない。MMT(現代貨幣理論)とヘリコプターマネーの終盤戦に入ったようだ。