運用には「攻めと守り」が必要

 私はかつて25年間日本株のファンドマネージャーとして、年金などの運用に携わってきました。アセットアロケーション(資産配分)を考える際に悩むのは、「攻めと守りのバランス」です。

「攻め」だけ考えるならば、米国・日本を含む世界中の株に分散投資すれば、それでOKです。債券に投資しても、長期的に株を上回るリターンは期待できません。特に、長期金利がゼロ近辺に固定されている国内債券は、ほとんど投資する価値がありません。

 ただし、年金投資において、現実には株だけというわけにはいきません。株はボラティリティが極めて高いからです。リーマンショックやコロナショックのようなことがあった時、株だけで運用していたら、一時的に巨額の損失をこうむります。国民の老後資金を預かって運用する年金基金は、たとえ一時的でも大きな損失を出すわけにはいきません。

 日本最大の年金基金で193兆円の運用資産を保有するGPIFの基本ポートフォリオは、その意味で参考となります。現在、外国株式25%、日本株式25%、外国債券25%、国内債券25%を、運用の基本方針としています。株が半分、債券が半分で、まずまずバランスのとれた運用と言えます。

 ただし、明らかに違和感を覚えるのが、国内債券に25%も資金配分していることです。10年国債が0%近くに固定されている今、国内債券に投資するのは非効率です。国内債券で無理にリターンを狙いにいくと、ジャンクボンド(低信用債)や超長期債(30年国債など)を買うことになります。信用リスクや金利上昇リスクを負うのは適切とは思えません。

 それでは、国内債券の代わりに、円建ての利回り商品で何に投資したら良いでしょう? しばしば話題になるのが、J-REITです。株のポートフォリオに、J-REITを入れれば、長期的に運用の安定化に一定の寄与はあります。

 ただし、J-REITが有効なのはあくまでも長期的なリターンの安定化にとってです。短期的には、J-REITはまったく債券代替となりません。リーマンショックやコロナショックで株が暴落する時、J-REITも同じように暴落してきたからです。