内需の出遅れ銘柄に注目したい局面

 高配当利回りの代表格である日本郵船(9101)ですが、下期は収益の大幅な鈍化を見込んでおり、期末配当金は145円に減少する(上期は333円)予想です。ただ、期末配当金を年換算すると配当金は290円になりますが、これでも配当利回りは優に10%を超える水準です。

 現在の株価は売られ過ぎと考えますので、高配当利回り銘柄のリード役として今後も注目したいところです。

 こうした中、今後はインフレ懸念から景気減速懸念に焦点が変化していくとみられます。欧米の景気悪化を考慮すると、輸出関連株よりも内需株を選好したい場面といえます。また、今後はインフレ懸念で売り込まれた銘柄の株価が反発に転じるなど、リターンリバーサルの流れが強まる可能性もあり、より出遅れ銘柄に買い安心感が生じやすいでしょう。

 下表は、配当利回りが4.0%以上ある銘柄の中で、内需セクターに属し、時価総額1,000億円以上、今期が営業増益予想のもののリストになっています。また、リターンリバーサルの流れも考慮して、2022年に入ってからの株価がマイナスパフォーマンスの銘柄としています。

(表)リバウンド余地が大きい内需系の高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り 10月21日終値 時価総額 株価騰落率 今期営業増益率
2427 アウトソーシング 4.02 1,119.0 1,409 ▲27.81 33.8
1861 熊谷組 5.16 2,520.0 1,144 ▲12.23 2.0
7337 ひろぎんHD 4.35 621.0 1,940 ▲9.87 9.1
8795 T&DHD 4.52 1,373.0 8,087 ▲6.73 19.9
1941 中電工 5.00 2,081.0 1,210 ▲2.12 0.7
1928 積水ハウス 4.29 2,423.0 16,590 ▲1.86 13.0
9434 ソフトバンク 5.93 1,450.0 69,414 ▲0.31 1.4
注:配当利回り、株価騰落率、今期営業増益率の単位は%。時価総額の単位は億円。
注:ひろぎんHD、T&DHDの増益率は純利益。
注:株価騰落率は昨年末比。株価騰落率の低い順にランキング

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが4.0%以上(10月21日終値)
  2. 年初来の株価騰落率がマイナス(10月21日終値)
  3. 時価総額が1,000億円以上
  4. 今期営業利益が増益予想(営業利益計画未公表銘柄は純利益が増益予想)
  5. 内需系業種(水産・農林、建設、食品、その他製品、電力・ガス、陸運、倉庫・運輸、情報・通信、小売り、銀行、証券、保険、その他金融、不動産、サービス)

1 アウトソーシング(2427・東証プライム)

 工場など製造ラインへの人材派遣を主力としています。形態は派遣のほかに請負や受託も行い、技術系やサービス系分野にも展開しています。海外事業も5割超のウエートを占めており、主に、豪州、欧州、南米が展開地域となっています。

 積極的な人材採用やM&Aで事業を拡大させており、2021年1月にはアイルランド最大の人材ビジネス企業 CPLグループ を買収し、その後も7社の連結子会社化を発表しています。2021年11月には不適切な会計処理が明らかになり、現在は再発防止策を進めています。

 2022年12月期上半期営業利益は109億円で前年同期比5.4%減益となっています。国内・海外の技術系が順調な成長を遂げたものの、雇用調整助成金の剥落、英国社ののれんなどの減損損失を計上したことで減益となりました。

 通期予想は320億円で前期比33.8%増を据え置いています。自動車関連でのリカバリー生産の本格化などで、下期にかけて増益幅は広がっていくとみられます。米軍施設向け事業の受注残も高水準にあります。年間配当金は前期比14円増の45円を計画しています。

 不適切会計の発覚、グロース株安の流れなどを背景にここ1年間の株価は停滞、昨年11月高値2,225円からはほぼ半値の水準となっています。PER(株価収益率)水準は10倍を大きく割り込み、割安感が意識される状況でもあります。

 自動車生産正常化の際には関心が高まりやすい銘柄であるほか、足元の円安進行で海外子会社の連結寄与も大きくなるとみられます。さらに、水際対策の緩和によって、停滞していた外国人関連ビジネスの本格化も今後は期待されるでしょう。

2 熊谷組(1861・東証プライム)

 準大手ゼネコンの一角です。民間建築の割合が約6割となっていますが、トンネルなどの土木工事でも高い実績があります。アジアを中心に海外でも事業展開。筆頭株主は住友林業となっており、中大規模木造建築ブランド「with TREE」を立ち上げるなど順調に協業を推進中です。

 自己資本比率は45%超、流動比率も170%超の水準で、比較的財務安全性は高い状況にもあります。

 2022年3月期第1四半期営業利益は5.1億円で前期比82.1%減益となりました。建設資材価格の上昇、土木工事事業における複数の工事の中断や進捗(しんちょく)鈍化、建築事業における採算悪化工事の複数発生などで利益率が低下しました。

 一方、通期予想は232億円で前期比2.0%増を据え置いています。中断工事や進捗鈍化工事の本格再稼働、好採算工事の新規稼働などによる収益力の向上を見込んでいます。また、年間配当金は前期比10円増配の130円を計画しています。

 5%を超える配当利回り水準は、高利回り銘柄が多い建設セクターの中でもトップクラスの水準にあります。一方、株価は年初来安値圏にあるなど、大手・準大手ゼネコンの中では極めて株価パフォーマンスが低い状況にあります。採算性の向上などで、第2四半期で業績進捗率の回復が確認されれば、株価の水準訂正余地は大きなものが見込めるでしょう。