増収増益が続けば通常は株価も大きく上がる

 株式投資をするなら避けて通れないのが「銘柄選び」。個人投資家が銘柄選びをする際によく使われるのが会社四季報です。

 会社四季報の各銘柄紹介ページには、直近3年半ほどの月足の株価チャートが載っています。

 業績欄をみて、増収増益(売上高も利益も増えていること)が毎年続いているような銘柄のチャートを確認すると、多くのケースで株価も右肩上がりに上昇していることが分かります。

 ですから、当たり前の話ですが業績が伸びれば株価も伸びるというのが事実です。増収増益が続いている銘柄や、直近で利益が大きく伸びている銘柄、業績の好調な銘柄を探すことが、株式投資で成功するための第一歩となります。

会社四季報を読んでいた筆者が気になった銘柄とは?

 実は、業績とは別にぜひ確認しておきたい点があります。それが「キャッシュ・フロー計算書」の内容です。

 筆者も会社四季報を見て、増収増益の銘柄や直近で利益が大きく伸びている銘柄を探し、投資候補としてピックアップする作業を行っています。

 そんな中、確かに増収増益が続いているものの、安全性の面で気になった銘柄がありました。銘柄の名前は伏せますが、営業キャッシュ・フローが2期連続でマイナスとなっていたのです。

 さらに、借入金が多く自己資本比率が低いことも気になりました。安全性の観点からは、借入金が多過ぎたり、自己資本比率が低いのはマイナス要素となります。

通常は損益計算書が黒字なら営業キャッシュ・フローもプラス

 キャッシュ・フロー計算書の詳細な説明は割愛しますが、簡単に言えば「本業でどれだけキャッシュ(現金)を獲得して、そのキャッシュを何に使い、期末時点でどれだけ残っているか」を表したものです。

 そして最も重要なのが「営業活動によるキャッシュ・フロー」(以下営業キャッシュ・フロー)です。これは、損益計算書でいえば「営業利益」に相当するものです。

 キャッシュ・フロー計算書の主要項目の数値については会社四季報に載っていますから、それを見て確かめることができます。

 多くの場合、増収増益が続いている銘柄は、営業キャッシュ・フローもプラスになっています。つまり、損益計算書上も利益を上げているし、本業でキャッシュも獲得できているという状況で、これは極めて健全な形です。

 また、損益計算書が赤字であれば、営業キャッシュ・フローもマイナスのことが多く、これも理解できます。

営業キャッシュ・フローが2期連続マイナスなら詳細を確認

 しかし、時に増収増益であっても営業キャッシュ・フローがマイナスのことがあります。この要因はいくつかありますが、例えば売上高の伸びが急で、売上代金の入金より先に仕入れ代金の支払いが生じてしまうなど、高成長企業特有の原因であれば特段問題ではありません。

 しかし、例えば売掛金の回収が遅延しているとか、在庫が売れ残って滞留している、といった理由であれば注意が必要です。

 なぜなら、売掛金が回収できなかったり、売れ残った在庫を処分せざるを得ない場合は、その時点で多額の損失が生じてしまうからです。

 また、過去の事例でいえば、売掛金や在庫、あるいはソフトウエアなどの科目を使って粉飾決算をし、利益を過大に見せていたケースもあります。粉飾決算では利益は粉飾できますが、それはキャッシュが伴わないものなので、損益計算書では黒字だけれども営業キャッシュ・フローは大幅マイナス、という形になりやすいのです。

 成長企業の営業キャッシュ・フローが1期だけであればよくある話なのですが、2期連続で続いているのであれば、決算短信や有価証券報告書に載っているキャッシュ・フロー計算書の内容を確認し、上で述べたような売掛金や在庫(棚卸資産)の急激な増加がないかどうか確認するようにしましょう。

筆者が気になった銘柄のキャッシュ・フローの状況は

 さて、筆者が気になった銘柄、増収増益が続いている一方で営業キャッシュ・フローが2期連続マイナスである銘柄について、実際に有価証券報告書でキャッシュ・フロー計算書の内容を確認してみました。

 会社四季報では、キャッシュ・フロー計算書の内容は2期間しか載っていなかったので、2期連続マイナスかどうかまでしか分かりませんでしたが、有価証券報告書を確認すると、実は4期連続で営業キャッシュ・フローがマイナスとなっていました。

 リース会社など恒常的に営業キャッシュ・フローがマイナスとなる業態でない限り、4期連続での営業キャッシュ・フローのマイナスというのは非常に気になります。

 キャッシュ・フロー計算書を見ると、営業キャッシュ・フローにおいては売掛金や棚卸資産が大きく増加していることが気になりました。仕入れ債務も大きく増加していましたが、これはキャッシュ・フローの改善には役立つものの、将来出ていくお金ですので、これはこれで注意が必要です。

 また、財務活動によるキャッシュ・フロー(財務キャッシュ・フロー)では、短期借入金がかなり増加している点が気がかりです。そして現金同等物の期末残高も、借入金残高に比してかなり少なくなっています。

 短期借入金は1年以内に返済しなければならないので、継続的に金融機関から借り入れができるという関係が崩れてしまうと、たちまち資金ショートに陥る可能性もあります。

 株式投資の世界では、多少リスクの高い経営をしている会社も、業績が伸びていれば高く評価される傾向にあります。でも、経営が失敗して倒産してしまえば、株式はほぼ無価値になってしまうのは間違いありませんから、成長株であっても安全性の面からの確認を合わせてしておくことをお勧めします。

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