先週の日本株は米国株に振り回される激しい展開でした。米国金利高を嫌気した週初の大幅下落から、9月の米国CPI(消費者物価指数)発表の翌14日(金)は、日経平均株価が853円高とV字回復。

 しかし、14日(金)の米国株が再び急落したため、今週17日(月)から21日(金)は大幅安で始まりそうです。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

先週:米国株はCPIショックを払拭し大幅上昇も翌日は急落! 

 右往左往。先週の株式市場はそんな言葉がぴったりの展開でした。

 連休明け11日(火)の日本株は、前週7日(金)の好調すぎる9月雇用統計で米国株が急落したことを受け、大幅に下落しました。

※米国雇用統計に関して、詳しくはこちら:1分でわかる!雇用統計と株価の関係

 12日(水)発表の米国PPI(卸売物価指数)は前月比0.4%上昇と、予想を上回る伸びになりました。

※PPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 同日には、0.75%の利上げを決めた9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録も公表。政策金利見通しの中央値は2022年末に4.4%、2023年末に4.6%となり、株価の大敵である高金利の長期化が明確になりました。

 そして、13日(木)、世界中の投資家が固唾(かたず)をのんで見守る中、米国の9月CPIが発表。

 変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年同月比6.6%上昇と予想を上回り、まだまだ物価高が加速していることが判明しました。

 最悪といえる結果を受け、米国株は当初、大きく下落。しかし、さしたる好材料はなかったものの、悪材料出尽くし感から、その後、ダウ工業株30種平均の終値は、安値から実に1,300ドル以上もV字回復しました。

 しかし、翌14日(金)は逆の展開が待っていました。

 英国リズ・トラス政権の減税案撤回や財務相解任、米国の9月小売売上高が物価上昇で前月比横ばいに低迷、といった好ニュースで、取引開始直後は上昇しました。

 しかし、米国のミシガン大学消費者信頼感指数の10月速報値が予想を超える強気に傾き、インフレ期待値が上昇したことで、雰囲気は一変。

 米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りが4%台に到達し、株価は急落に転じました。

 多くの機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は、前日の2.6%高の大部分を吐き出す2.4%近い大幅安で取引を終えました。

 まるでジェットコースターのような先週の世界株市場でしたが、日本株はカラオケチェーンのコシダカホールディングス(2157)が前週比約27%高、ぐるなび(2440)が9%高。

 11日(火)に訪日外国人の入国者数制限が解除されたこともあり、好決算の飲食小売店やインバウンド(訪日客)関連株が上昇しました。

今週:中国経済低迷、米住宅市場過熱、テスラなど米企業決算で乱高下続く!? 

 今週の日本株は14日(金)の米国株下落を受けた乱高下が続きそうです。

 14日(金)のニューヨーク外国為替市場で、1ドル148円後半まで円売りドル買いが進み、32年ぶりの円安水準となった。

 今週早々にも再び政府・日本銀行による為替介入が行われそうな点も不安要素です。

 18日(火)には、中国の7-9月期GDP(国内総生産)や9月小売売上高、鉱工業生産が発表されます。

 折しも16日(日)からは5年に1度の中国共産党大会が開幕しました。

 異例の3期目に入る習近平体制は、米国との政治的緊張に加え、国内の不動産バブルが崩壊目前ということもあり、前途多難と言えるでしょう。

 米国では19日(水)に9月住宅着工件数、20日(木)に9月中古住宅販売件数が発表されます。住宅市場が堅調すぎると、インフレ高止まり懸念で逆に株安が進む可能性も高いでしょう。

 21日(金)には、日本の全国消費者物価指数も発表。3%前後の物価上昇で、高齢者などが消費を手控える動きも広がっています。インバウンドの恩恵が少ないスーパー、日用品関連企業の株価低迷につながる恐れもあります。

 また、米国企業の2022年7-9月期決算も注目です。

 18日(火)には医療機器世界一のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)やネット映画配信のネットフリックス(NFLX)、19日(水)には電気自動車のテスラ(TSLA)、21日(金)にはアメリカン・エキスプレス(AXP)などが発表。

 予想を下回る悪い決算だと、全体市場も打撃を受けるかもしれません。

 14日(金)夜に米国株を暗転させたミシガン大学消費者信頼感指数は、月中旬にその月の速報値が発表される速報性の高い指標です。

 今回はその中でも、消費者の1年先、5年先のインフレ期待値の上昇が株価急落の引き金でした。

 インフレが進むと、人々は物価がもっと上がる前にモノを買おうと消費活動を活発化させるので、ますます物価高が加速。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が非常に警戒しているのが、このインフレ・スパイラル。

「株式の死」と言われた1970年代の米国株低迷も、インフレ率の高止まりが元凶でした。

 日本ではここ数年、米国株ブームが続きました。しかし、米国株一辺倒の投資方針から、先進国債券やコモディティ、全世界株式、日本の個別株などにもリスク分散を考える時期なのかもしれません。