2.コア・サテライト運用などの「無駄な仕事」の押し売り

 例えば、国内株式や外国株式のようなアセットクラスの運用で、大きな部分(60〜80%くらい)をパッシブ運用に割り当てて、残りの部分を複数のアクティブ運用に割り振るような運用構造を、「コア・サテライト運用」と呼ぶ。大きなパッシブ部分を惑星に、相対的に少額のアクティブ運用を言わばその周りに配される衛星にたとえたネーミングなのだろう。

 個人向けに運用商品を売るセールスマンやマネーアドバイザーの中には、「コア・サテライト運用は年金基金もやっている王道の運用です」といった紹介をする向きもある。ここまで来ると、年金基金もずいぶん買い被られたものだと言わざるを得ない。

 はっきり言おう。「コア・サテライト運用」は、年金基金にとっても、個人投資家にとっても無用の長物であり、余計な手間とコストのもとだ。

 成り立ちから考えてみよう。そもそも、コア・サテライト運用の「コア」たるパッシブ・ファンド(商品として多くはインデックス・ファンド)がなぜ大きな運用部分として選ばれたかというと、それは「パッシブ・ファンドを上回るアクティブ・ファンドを選ぶことが困難だから」という理由以外にあり得ない。そうでなければ、いいと思うアクティブ・ファンドを堂々と選ぶはずだ。

 パッシブ・ファンドを上回るアクティブ・ファンドを「事前に」選ぶことの難しさは、内外の基金業界が積み重ねた過去のデータや実績及びロジックで否定しがたい。

 しかし、それでも、金額を縮小しながらアクティブ・ファンドを組み合わせて選ぶサテライト部分を設ける理由は、組織としての年金基金及び年金基金の担当者が(年金基金についている年金コンサルティング会社も含まれるかも知れない)「自分の仕事を作るため」なのだ。

 基金は運用会社に対して顧客サイド(運用業界用語では「バイサイド」)なのだが、年金加入者や年金の母体(企業や公的資金)に対して、自分が報酬を貰って仕事を提供する「セルサイド」の立場にも立っている。実は、彼らがこうした立場に立つことによって、彼らが年金加入者に対して無駄に売りつけているサービスは、コア・サテライト運用だけでないかも知れない。

「使う会社が多い方が運用会社から情報が入る」とか、「新しい運用手法を勉強するため」とか、いくつかの何れも取るに足らない(大人がマジメの主張できるようなものではない)理由はあるのだが、これらの理由は、本来、年金積立金という「他人のお金」と「他人が払うコスト」を使って実地に「お試し」してみることを許すほどの理由ではない(基金の担当者には、「本当にプロなら、情報も、運用手法も、自分の頭で消化しろ!」と言いたいところだ)。

 基金の担当者でも、個人投資家でも、いろいろな商品を手に入れてみる「ショッピングの楽しみ」のような心理がある事は否定しない。加えて「商品を買うかも知れないお客様」はセールスマンから気持ちが良くなるような扱いを受けるので、その楽しみも分からなくはない。だが、ほどほどにしておく方がいい。

「コア・サテライト運用は、本当は愚かなのだ」と認識しておくと、「ほどほど」を実現する助けになるのではないか。